■ 282 ■ 分裂する地母神教 Ⅱ
「シンがカイを殺害!? そんなことするわけないでしょうが! あんた、なに言ってんのよ!」
【
「カイ・エルメレク最高指導者の亡骸から毒物が検出されました。【
残る六人の【
「内赦局が今朝方やってきてそう言うので確認した。劇物の小瓶が一つ無くなっていたのは事実だ」
「だからって、どうしてそれがシンの仕業って事になるのだね?」
そう追求する【
「近々に【
「馬鹿も休み休み言ったらどうです? シンがカイに毒を盛るはずがないでしょうに」
【
「走査と聴取は平等に行なうもの。筈がない、などという理由でもっとも状況として疑わしい者を放置するなどあり得ない話です」
内赦局員ヤマツの言葉は確かに正しくもあり、だから咄嗟に誰もが反論を成し得ない。
【
「あくまで容疑、という形での取り調べです。私も【
そう強引さもない正論を並べ立てられれば、正しきを旨とする【
「それと、このような状況で申し上げにくいのですが――」
所在なさげに肩をすぼめてみせる内赦局員ヤマツがそう言葉を搾りつつも、
「現在、【
「……何でだ?」
【
「【
申し訳なさげに告げる内赦局員ヤマツの言は、やはりこれも責めようがないほどの正論だった。
ツァディはあの日確かに【
【
そんな頑なな態度は、【
『【
と。
これまでなら事情を知る【
だが今の
「ふーん、まぁ皆が辞めろって言うなら辞めるよ。別段しがみ付きたい椅子じゃないし」
そして当の【
誰かが止める暇すらなく平然とそう口にしてしまえば、内赦局員ヤマツはツァディがそう発言したと政治部内に展開するだろう。
「重ねて、【
内赦局員ヤマツがそう畳みかけてきて、一瞬【
以前ラジィに届けた支援も、無から生み出されたわけではない。あくまで【
最高品質のローブ一着分、並びに
そこの尻尾を政治部は掴んでおきながらすっとぼけ、今この段階でその切り札を切ってきたのだ。
「後日、正式に事情聴取を行なう事になるかと思われます。それでは私はこれで」
恭しげに頭を垂れた内赦局員ヤマツが去った後の
「どうやら、これを機に政治部は現状の【
【
同じラジィに支援を行なった【
ローブや
だがツァディが女性用ローブと
「参ったわね……政治部の狙いはどこまで? 【
【
【
実際、ラジィに支援を届けに行ったツァディは幾人もの間諜を屠っているのだ。
ラジィ一人を辞めさせるためにそれだけやった政治部が、今更何をやっても何らおかしくはないと。それぐらいまで【
あるいは逆にわざとそう思わせることが政治部の狙いという可能性もある。些細な咎を何倍にも意識させ、もう逃げ道が封じられたと思わせて辞退を迫る、というやり方も十分に考えられるのだ。
「とりあえずラムとダレットは正直にジィへの支援だって言いなよ。そうすれば二人の正当性は維持できる」
ツァディがそう二人に促してくるが、それは確かにラムとダレットの潔白を示すことにはなる一方で、
「でも、そうしたら連中はジィの能力を論ってくるわよ」
ラムの言う通り、【
だが、もう正直に言えばツァディはそんなことはどうでもいいのだ。
「正直俺はもう限界だ。カイに奴らが毒を盛ったのか、それとも死体を都合のいいように利用したのか。どっちにせよカイの死を玩具にした連中と同じ空気は吸いたくない」
あ、と一同は今更ながらに気が付いたのだ。ツァディがその怒りを必死に無表情の中に抑え込んでいて、今にも激発しそうだ、ということを。
カイ・エルメレクは死んだ。
それが瀕死の状態を毒殺されたのか、それともツァディの言う通りカイが死んだという機を最大限利用して、死体に毒を塗ったのか。どちらかは分からない。
だが政治部が、
「クソだよ、今のここは。まともなヤツから民を守ろうとして死んでいって、今やゴミが最大派閥になっているクソの掃き溜めだ」
「否定のしようがありませんねぇ。【
ツァディが吐き捨てた言葉に【
【
ということは、
死に至ったのは、カイ一人だけではないのだ。何人もの優秀な魔術師が衰弱から神の御許へ旅立ち――しかし【
『
それを真摯に願ったものから順に倒れていって、だから政治部が最大派閥として幅をきかせているのが今の【
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