■ 281 ■ 分裂する地母神教 Ⅰ
「誠に残念な話ですが、先ほど最高指導者【
緊急を要する、ということで
「カイが――死んだ?」
呆然とした声を上げたのはカイと同い年であり同期でもある【
元々化粧っ気の薄い顔は既に蒼白に血の気が引いており、握りしめた手が小さく震えている。
「なんで、なんでカイをむざむざ死なせたのよ! 貴方たちは一体なにをしていたの!」
仮にもカイ・エルメレクは
治療にも深い
で、あるのだが、
「ですが、【
総務局長カラシス・ニアンティエルが円卓の上に提示したのは、疑いなくカイ自身の筆跡による念書である。
犠牲者多数の場合、自分の身を優先するより他の信者たちを一人でも多く救って欲しい旨が記されたそれは――偽装という線はまずないだろう。
「でも、投薬と
そうラムが【
「ですが、私が赴いたときにはポーションなどを嚥下させようとしても吐き出してしまうほどにカイは衰弱していました」
シン曰く、下手に食事をさせると吐瀉物が気道を塞ぎ窒息死しかねない、ということで大した治療はできなかったそうだ。
即ち食事ができない相手への治療は限定的とならざるを得ず、
「だが、【
【
カイは外傷を負ったわけではない。単に意識を維持できなくなるほどに魔力が枯渇して昏倒しただけだ。そして魔力は、時間が経過すれば相応に回復する。
故にシンもカイの治療をあくまで薄めた魔力ポーションの服用に留め、自然回復を待つ方針としたのだ。
「ただ、衰弱時の体調はどう転ぶかは分かりません。これは経験則からそうとしか言えないのも事実ですね」
【
人の肉体とは相応に大雑把であるが相応に複雑でもある。脳が欠けても平然と生き延びたりすることもあれば、血管一つ切れるだけで死に至ることもある。
故に治療方針を決めたシン・レーシュを責めるのは筋違いだ、というテッドの言葉に、誰もが反論を持たなかった。
沈黙が場を支配する中で、
「ひとまずカイを弔いに行こう。正式な葬儀だと別れを告げている余裕もないからな」
【
訪れた先、棺桶の中に無数の花と共に安置されている遺体は――今更【
今にも目を開いて起き上がりそうな顔をしているのは死化粧を施されているからで、その胸は上下せず、その身に血液はめぐってはいない。
「……あんた、激務だったから絶対私より先に死ぬと思ってたけど……早すぎでしょ…………」
同期である【
早々に泣かれてしまった残る【
「
【
どうかカイの魂が御身のお膝元にて永久の安らぎが得られます様に、と。
そうして一人、また一人と
この世界はまだ続いていくのだ。いや、むしろこれからこそが難き道行きに満ち満ちた世界の始まりである以上、
「新たな【
そう【
新たな【
政治部総務局長カラシスが困ったように首を横に振った。
「それが、【
「むぅ……【
【
【
それを専門とする
『
それを本懐とするのが
「とすると、最高指導者の代理を立てないとですよね。こういうときは年功序列でしたよね? 確か」
【
現時点における【
「すまないが辞退させて貰おう。私に最高指導者が務まると思うかね?」
そうサヌアンが辞退を申し出てくれて、【
こう言ってはなんだが、【
まあ政治に向いていないのは獣狂いの【
「じゃあ、時点でシンばーちゃんか」
「そうだな。シンなら文句は出ねぇだろうよ」
ツァディ、アレフベートの言葉で皆の視線がシンに集まり、これは逃れがたいと判断したのだろう。
「分かりました。新たな【
シンが渋々ながら頷いたことで、ここに一応の
§ § §
「先ほど我々内赦局が【
翌日の、最高指導者就任のために開かれた
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