RECITATIO

 ■ 214 ■ ラジィを取り巻く魔術についての解説






 よ、ようやく第二章が書き終わりました。第一章では殆どネームドは無事でしたが、第二章後半ではわりとどんどん脱落していくので書いていて悲しかったです。

 やっぱり自分の作ったキャラを志半ばで(ここ大事)殺すとMPの消費が激しいですね……大往生だと逆に「書き切ったぜウェーイ」ってMP回復するんですが。

 また、第二章を書き終えたおかげでこの小説の纏め方がようやく見えてきました。どうやらこの小説は第四章で完結するようです。次の三章は恐らく一、二章の半分程度、四章は――どれくらいになるかちょっと不明です。


 さてさてちょっと閑話休題、第二章の敵であった第一分隊ファーストスクワッドとクィスたちの結末ですが、


 1.最後までお互いのことを知らずに殺し合い、祭の最後に再会を約束していたコルナールが待ち合わせ場所に現れないクィスのフラれ(たように見える)エンド

 2.お互い正体を知りながら全身全霊でLP削っていく殺し愛エンド

 3.お互いの正体を知りつつ決戦を約束しながらも、互いに自分の手が全く届かないところで決着が付いちゃう無縁エンド


 のどれにするかは最後まで揺れていました。結果として作者はああ書きましたが、読者の好みがどれかは正直気になります。


 さておき、ここまで書いておきながらこの世界観の魔術が結構特徴的なのにちょっと説明が足りないかな、と思ったのでここいらで少し補足をしておこうと思います。

 いわゆる設定資料集なので、興味がない方は無視して下さって結構です。読み飛ばしたところでキャラの理解が深まるとかじゃないですからね。

 それでは作者の自己満足と備忘録(←これがほぼメイン)の魔術解説、始めます。




●魔術


 魔力を用いて疑似物質デミマテリアを生成し、一時的に物理法則を押しつける行為の総称。

 人間には単独でこれを発動することは出来ず、神に祈るとその祈りを通じて神が魔力を受け取り、神気に変換して魔術を編む、というプロセスを踏む。

 逆に魔獣は神に祈らないため、秘蹟紋フォーミュラに魔力を流して魔術を編むことで発動する。

 ただ人の言語と神への祈りを理解する知能の高い魔獣も存在し、人を傷つけず人との共存を選んだそれらの魔獣を聖獣と呼んでいる。よって厳密には聖獣も魔獣である。

 なお作中でフィンが語ったように(※92話)、どれだけ優れた魔力を持っていても、魔術で完全な物質を作成することは出来ない。治癒魔術も殆どが肉体再生能力の強化である。


 魔術を発動可能な魔力持ち人類は人口比6%程(百人に六人)で、実戦投入可能なのは人口比0.1%(千人に一人)程度。

 そこそこ魔力持ちは遺伝するようで、魔力持ちが生まれやすいよう囲い込んだ連中の末裔が現在貴族を語っている。



●神


 【創造神デウス】が送り出した人類救済端末である天使が人の苦しみを理解した上で、その苦しみから人を救う魔術を編むシステムとして臨界した存在。

 求められた入力に対して規定の出力を自動的に行なう独立処理系であり、神には既に天使だった頃の感情のようなものは一切残っていない。


 基本的に人も魔獣も一つの神を信奉するとその神との結びつき(神学者は通神と呼ぶ)が優先されるようになり、他の神の魔術はほぼ使えなくなる。

 ただし同時に二つの神の魔術を使えないだけで、改宗による信仰の乗り換え自体は可能。


 作中現在は闘神教アルス・マグナ冒険神教アーレア・マグナ太陽神教アムン・マグナ地母神教マーター・マグナがもっとも多くの信者を抱えており、四大神教と呼ばれている。



●【創造神デウス


 この世に物質が存在するのだから、その物質を作り出した神がいるはずだ、という推論により存在を仮定されている神。物質神と言い換えてもいい。

 この世界に天使と獣を生み出しているのでそれっぽいものが存在はしているはずなのだが、人とは決定的に存在階位が合わないのか決して人類側からは観測することが不可能。

 そういうこともあり唯一神なのか、天使と獣を担当する複数の神がいるのかも人類には知ることができない、神すらをも超越する超上位存在。



●天使


 【創造神デウス】によって作られる人類救済端末。五歳前後の少女の姿で地上に降り立ち、前任の天使が死ぬか神として臨界すると、自動的(なのかどうかは不明だが人類にはそう見える)に新たな天使が産み落とされる。

 人で言うところの生存本能が神化本能に置き換えられていること、子宮の替わりに神臓を備えていることの二点を除けばその性能は人間と同じ程度でしかない。

 人に寄り添うことで人の苦しみをその身を以て知り、神の視点ではなく人の視点での救いをもたらすための存在なのだが、元より人ではない【創造神デウス】に作られているため、その救済は割と穴だらけだったりする。

 それでもフィンが語ったように、一方的ではなく現地調査をしている分だけかなり【創造神デウス】はマシな絶対神である(自分本位で特定の人間だけを贔屓する愛し子とかを作ったり、神罰で人類を苦しめたりとかをやらないので)。



秘蹟紋フォーミュラ&魔獣


 秘蹟紋フォーミュラは一般ファンタジーにおけるいわゆるスクロールや魔法陣に相当する。紋章に魔力を流すことで魔術が発動する。

 魔獣の肉体にはこれが刻まれており、その魔獣種固有の魔術を発動する。魔獣とは即ち秘蹟紋フォーミュラを持つ動物のことを指す。

 どこからどう見ても生態系からかけ離れたような魔獣種も存在するが、これは全ての魔獣がビーストと呼ばれる存在が変生した存在だからである。


 一般的には魔獣は人類の敵とされるが、人間を憎んでいるとかはなく、ただ生存権を巡って争っているだけ。魔獣だって生きたいのである。

 なお、魔獣と他の動物ないし他の魔獣が交配して別の魔獣が発生することも結構ある。魔獣は全て祖がビーストなので、ある程度交配ができるようだ。

(というか単為生殖型でない限りは絶対に交配相手がいないと増えられないですからね)



ビースト


 天使と対を成す、【創造神デウス】によって作られる魔獣生成端末。

 一般には現時点でもっとも死ににくい動物の姿を模してこの世に生み出され、その姿のまま世界を検分。その結果としてこの世界でもっとも勢力範囲を広げるに足る形の魔獣に変生する。

 魔獣は秘蹟紋フォーミュラを有するのが前提である為、そこそこの肉体の大きさが必要であり、勢力範囲を広げるといっても一定以下の大きさの魔獣になることはない。

 (コケ魔獣とかミジンコ魔獣、ウンカ魔獣みたいなのは殆ど生まれないということです。キノコ魔獣はいるかも……)


 天使と対を成すといっても天使は神になるのが目的で、ビーストは新たな魔獣種を生み出すのが目的であり、両者は別段対立関係にあるわけではない。どっちも【創造神デウス】によって与えられた使命をただ全うしようとしているだけで、もっと言ってしまうと別に天使もビーストもお互いのことなど眼中になかったりする。

 なお基本的に人類を利する天使とは違い、ビーストは今の魔獣の生活範囲を奪う魔獣に変生することもある為、一概に現存する魔獣の味方とは言いにくかったりする。世知辛いですね。



●身体強化


 魔術の基本。魔力持ちなら誰でも出来るが、訓練で更にその性能を向上させることが出来る。魔獣も使える。

 どんな神を選んでもこれは絶対に実施できるので、魔力持ちが只人よりザコ、というのは基本的にはあり得ない。

 それでも戦闘に向いている神と向いていない神があるので、どの神派を信仰するのかでこれの出力にも結構差が出てくる。


 同じ魔力をつぎ込んだ場合、現在の作中登場神派でもっともこれが強く働くのが身献神サクリコラ(生贄あり)。

 その次に守護神ゲニウス(ゼル)、ここから越えられない壁を経て鍛冶神ヘーパエスティア闘神教アルス・マグナと続く。

 基本的に殴ることがメインの神ほど身体強化が強力、という形ですね。ただこれはあくまで効率の話なので、魔力をしこたまぶち込むとかで拮抗は可能。


 機能としては魔力を神気に編んで構築した強化外骨格のように働くもので、神経伝達速度などは向上しない。

 要するに肉体の外側に衝撃吸収機能がある鎧兼疑似筋肉を纏っている、とお考え下さい。



●神殿作成


 一般的なファンタジーで言うところの結界術。下っ端には使うことができないので、これが使えるのは上位の神官ということになる。

 とまれ魔術にはセンスによる得意不得意があるので、神殿作成が出来ないから下っ端というわけではない。


 ごく基本的な効果として境界の出入り制限や範囲内での神への通神強度向上があり、神殿内だと魔術を使いやすくなるので一般的にはこの中では魔術師が強くなる。

 とはいえ、神殿作成と攻撃を一人が兼ねるのは魔力消費が凄まじいことになるので、できれば分担した方が効率的。


 なお、この神殿作成をほぼ専門でやるのが陣神カストラで、その分陣神カストラの神殿は多機能かつ消費魔力が少なめで効果範囲が広いという特徴がある。

 (逆に言うと神殿作成しか出来ないという制約があるのが陣神カストラという神で、身体強化もかなり弱め)



●人工聖霊


 人の手によって作り上げられた、霊精アストラル界に身を置いてある程度の命令をこなす霊体端末。凄く雑に言えば実体を持たないプログラム。

 それ単体で魔術行使の補佐(いわゆるファ○ネル)みたいな使い方をしたり、傀儡神レゴプーパはこれでゴーレムを作って操ったりする。

 地母神教マーター・マグナの書庫一派はこれを観測に用いているなど応用範囲は広いが、ぶっちゃけそこまで高性能なものは組み上げるのが難しいので、複雑な人工聖霊というのはどの神派にもあまり存在しない。

 (逆に言うと複数のゴーレムを精密に操れる傀儡神レゴプーパなどの人工聖霊は群を抜いた性能があるが、それ以外出来ないのが傀儡神レゴプーパという神で、身体強化もやはり弱め)



●アミュレット


 神の魔術と魔力を道具に込めた魔術発動具。この世界の魔術は絶対に物質にはならないため、アミュレットには無限に動作するようなものは存在しない。

 ただし外部から魔力を供給するタイプも存在して、こっちは破損しない限りは魔力を注げば半永久的に使い続けることが出来る。

 ラジィの作る防御用アミュレットやピジョンブラッドが前者で、サヌアンがラジィに与えたアミュレットや地母神機兵マーター・マキナが後者になる。

 前者のタイプは基本的な寿命は最長1~2年程度で、後者はどれだけ頑丈に作ったかによる。



霊精アストラル


 物質界と対を成す、精神の活動する世界。物質界と表裏一体であり、切っても切れないコインの表と裏の関係にある。

 人と神の通神もここを通じて行なわれており、人工聖霊もこの中で活動している。物質界で見えるのはその影のようなもの。

 いわゆるアンデッドはほぼこちらの世界の住人であり、ラオは比較的自由にこちらで活動することが出来るようだ。


 ただし物質界と表裏一体であるため、完全な霊精界住人というものはいないし、完全な物質界住人というのもいない。

 要するに一個体として活動するには両方(肉体と精神)が揃っている必要があり、どちらかを滅ぼされると対となる方も活動を停止してしまう。

 つまりいわゆる幽霊なども、何らかの物質的肉体に相当する何かがないと存在できないということである。ただ地縛霊などのように、土地を依代とするなどの応用は可能。


 身献神サクリコラなどは生け贄の肉体を分解して霊精アストラル界に無理矢理保存しておくという荒技をやっており、物質を生み出せない魔術でグラナのみ例外的に肉体を再生できたのはこの特性のためである。

 ただこれはかなり無茶苦茶な行為なので、霊精アストラル界で人の肉体が肉体としての情報を維持できる時間はかなり短かく、いずれは雲散霧消してしまう。なので身献神サクリコラ魔術師はなるべく行動の直前に生け贄にその命を捧げて貰う必要があるんですね。



聖霊銀ミスリル


 魔力伝導効率に優れる金属。その一方で強度は然程なく、基本的に魔術の発射台として使用するのが一般的である。なので聖霊銀剣ミスリルブレードは一般ファンタジーにおけるワンドに相当。なので斬撃武器としての使用はあまり主流ではない。

 ただし優れた魔術師だと身体強化の要領でこの聖霊銀も強化できるため、武器としても使用可能。いずれにせよ魔力を用いて操ることが大前提の金属である。

 術力増強係数が1.4以下のものを霊銀と呼び、1.4以上のものを聖霊銀と呼ぶ。


 なお術力増強係数は鍛造の過程で個人に合わせて調整可能で、ラジィの相槌聖霊銀剣の術力増強係数は3.2であり、アウリスやクリエルフィ、マルクが使う汎用聖霊銀剣は概ね2.0といったところ。

 要するに同じ1の魔力を用いて【裂空剣フィンド エンシス】を放った場合、ラジィの専用剣はマルクたちの汎用剣よりおおよそ1.6倍の破壊力を出せるということですね。

 (なおラジィの聖霊銀剣をラジィ以外が使用した場合の術力増強係数は0.3まで低下します)



緋紅金ヒヒイロカネ


 魔力伝導を一切行なえない金属。恐ろしいほど固く、そして魔力を拒み、放たれた魔術をその形状のまま跳ね返すという、武器よりも防具に向いた金属。

 ただ鉛より重い金属でもあるため、これで鎧を作るのは馬鹿のやること、盾ですら身体強化して持ち歩くのはしんどいというレベル。

 古の闘神教アルス・マグナにはこれの鎧に誓いを立て、その防御力であらゆる魔術を防ぎながら敵を殴り殺して回る英雄もいたとか何とか。

 使い方によっては便利だが重たく邪魔なので、竜鱗武器が手元にある時のラジィからするとサブウェポンの扱いになってしまうのは宜なるかな。



●魔獣素材


 あまりお金がない冒険者がよく武器や防具の材料として用いる。

 生体素材なので魔力伝導率も良好だが、その一方で強度は素材によってまちまち。

 ラジィの剣と槍に用いられている竜麟は魔獣素材としては最高峰であり、硬度、粘り、術力増強係数のバランスが極めて良いためラジィもメインウェポンとして活用している。

 正し素材としての均一性が低く、適切に加工して武器防具に用いるには職人による匠の技が必要となる。



鍛紋器フォーミュリス


 魔獣の肉体には当然秘蹟紋フォーミュラが刻まれていることを踏まえ、これを破損することなく利用して武器に仕立て上げたもの。

 弱い魔獣の素材では強度に問題がある為鍛紋器フォーミュリスへ加工するのに適しておらず、結果としてBランク以上の魔獣素材によるものが大半である。

 なのでこの鍛紋器フォーミュリスを持っているのは一部の上位冒険者に限られる。量産にも向かないので、他の神教ではあまり使用されない。

 当然これの作成難度は普通の魔獣素材武具の比ではないため、鍛紋器フォーミュリスを作成できる武器職人は引く手数多となる。



●地母神流剣衝術


 遠距離攻撃魔術がない地母神教マーター・マグナが何とか射撃魔術を作れないか、と知恵を捻って考案した攻撃魔術。

 闘神教アルス・マグナの魔術を参考に身体強化を発展させた魔術、というか技術であり、厳密には地母神マーター魔術ではない。なので地母神教マーター・マグナでなくとも練習すれば使えるようになる。

 基本的に身体強化の延長なので、聖霊銀ミスリルや魔獣生体素材を用いない武器で放つ場合には出力が大幅に低下し、鋼の剣ではラジィですら非実用レベル、緋紅金ヒヒイロカネではツァディですら一切放てない。


 薄く鋭い刃の表面を身体強化の要領で強化し、刃表面に形成された外殻を射出するのが【裂空剣フィンド エンシス】。

 身体強化の一点集中を駆使し、ピンポイントで肉体の要所要所を強化して剣を神速で振るうのが【残音剣ソノラス エンシス】。

 刀身に纏わせた身体強化魔術を瞬時に膨張、爆散させることで内側からの破壊を狙うのが【破砕剣エルプティオ エンシス】。

 身体強化を腕から刀身のみに全集束することにより、長大な魔力の刃を形成して捨て身の一撃を放つのが【不動剣フェレウム エンシス】。

 自分の周囲の大気すら自分の肉体の延長と捉えて強化、それを刀身に纏わせ放出し、敵を嵐で挽肉ミンチにするのが地母神流剣衝術究極奥義M.B.Tマーター・ブレス・テンペストである。


 射撃魔術がない地母神教マーター・マグナが何とかして遠距離攻撃を、と考案した術なので、あまり魔力対効果は高くない。(ゲーム風に言うとMP消費効率が悪い)

 あくまで地母神教マーター・マグナが攻撃手段を求めた結果なので、魔獣の殺害を望むなら別の神教を崇めるべきなのは間違いない。


 身体強化の延長なので手刀からも放てるが、切れ味は発射台に依存しているため手刀だとただの打撃になってしまうのは利点でも欠点でもある。

 なお【裂空剣フィンド エンシス】は強化したガワだけをぶん投げているので、当然強化した武器で普通に切った方が威力は高い。






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