■ 165 ■ 結論と致しましては
「それで、どうだった?」
戻ってきた教会でラジィにそう尋ねられたリッカルドは、力なく首を横に振った。
『どれも一長一短だった』
「でしょうね」
「何なら私が
そう言えばまだ
『
「
『
「雑に言ってしまえば
なるほど、確かに
ラジィは
『あれ、ジィはじゃあなんでソフィの指導ができるんだ? 宗派が違うんだろ?』
「
ソフィアの【
ということを伝えるとやっぱりこいつが一番異常だ、とリッカルドはドン引きしてしまう。リッカルドに表情はないので幸いそれは誰にもバレることはなかったが。
「話を戻しますが、私が信奉する
「え? ちょっと意外です」
そうソフィアが目を見張ると、対するフィンは少しだけ恥ずかしそうに目を細める。
「私も昔はやんちゃだったもので。自分が本当に求めているのは知識だと気付くまでに遠回りをしたものですよ」
ただフィンがそう理解した時にはもうフィンの信仰は固まっていたので、今更変える必要もないか、とそのままであるのだそうだ。
「
『十はないんだね』
「十も宗派がある
他人を思いやることが起点で我欲の為に使えない、という制約があればこその、
「ただ
『へー、自信過剰な方が向いてるんだ』
なるほどなぁ、と納得したようにリッカルドはフィンを見やった。フィンが所在なさげにしていたり自信喪失しているところは確かに見たことがない。
いつだってラジィのそばで、それが当然みたいな顔をしているのがフィンである。それは確かにその通りだ。
『フィンはどんな事ができるんだ?』
「私自身は主に神殿作成を得意としておりますが、一般的な
フィンの目がキランと光った瞬間、教会内の石壁が円形に赤熱、2つの赤丸が湯気を上げる。
『凄え! かっけぇなフィン!』
【
その威力は全力で放てば神になりかけたラジィの翼を焼き切り、光輪を破壊するほどの威力を持つ。
「お粗末さまでございます。ただこちらも基本的には熱的攻撃、つまり燃やす攻撃になることと、また範囲攻撃は苦手としております。利用法としては狙撃に近い運用になるでしょうな」
故にソフィアの前衛を張るリッカルドと相性が良いか、と言われるとそこは少し首を傾げることになってしまうらしい。やはり一長一短である。
なお
「人の歩む道を照らし、その命を見守るのが
天に輝き人の営みを見届けるのが
「他にも光を操り幻影を見せたりもできますが、
『うーん、持ち味を活かせないか……』
リッカルドが腕を組んで唸っていると、
「ただいま、ラジィ。あ、まだリッカルドとソフィアもいるか」
「たっだいまー。リッカってば何で私には聞きに来ないかなぁ? ティナ様は先生だよ? 賢いんだよ?」
クィスとティナが業務を終えて礼拝堂へと入って来る。
「まだ帰ってなくてよかった。一つ疑問に思っていたことがあったからね」
そう言ってクィスがリッカルドたちの前の長椅子に逆向きに腰、というか膝を下ろした。
『疑問ってなんだい? クィス
「いや、リッカルドにとってはその身体は身体だけどさ、神様は本当にそれを身体だと思って身体強化させてくれるのかな、って」
「『あ』」
その場に集った一同は盲点を突かれたような声を上げて、互いに顔を見合わせ始めた。
確かに、言われてみればリッカルドは見た目はフルプレートを着込んだ成人男性よろしき人型に見える。
だがその中身はほぼアミュレットと機工で構成された、あくまで道具に過ぎないのだ。
これを神が人体と見做して身体強化の恩恵を与えてくれるかは――ちょっと怪しいと言わざるを得ない。
「そういうことを考えると、射撃戦が得意な
確かにリッカルドは頑丈だが、身体強化ができないとなると白兵戦ではただの的にしかならないだろう。
であれば見た目の頑丈さはさておき、射撃魔術が主体で火力がある
だが、リッカルドとしては物陰に隠れてちまちま魔術を投擲するのではなく、ソフィアの盾として動ける魔術師になりたいのだ。
そうでなければ一体何のための鋼の身体だ。持ち味を生かせないじゃないか、と。
そこまで考えたところで、
「……もう一つ選択肢がなくはないのよね」
ラジィがものすごく悩ましい顔で話を差し挟んできた。
「他にも魔術師がいるのですか?」
「ええ。私が【
個人情報だから明かすつもりはない、とラジィが言えば、流石にこの面々は「誰です?」とは聞いては来ない。
ただ、
「はいはーいジィ、選択肢になるっていうのは?」
そこはやはり聞いてくるモノで、手を挙げて問うティナではなく、ラジィはリッカルドを見据えたまま軽く首を振った。
「その宗教が何よりも武器を強化する神を讃えているからよ。
一同は納得したように頷いた。確かに
ソフィアの中にいるときは身体強化で、
「それ、どんな宗教なんでしょうか?」
ソフィアの問いに、ラジィは短く答えた。
「
このリュカバースにはもう一人魔術師がいる。
誓いを捧げた得物がないが為に自分は魔術師としては働けない元
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