■ 101 ■ 登場人物紹介と走り書き



 この度は本作をここまでお読み頂きまして誠にありがとうございます。

 いきなり自分語りですみませんが、私は延々と頭抱えて苦労してる女性主人公が好きなので、何やらカクヨム様が「賢いヒロイン」中編コンテストなるものをやっていると三月末ごろに知って、「女性主人公を推せるのは今このタイミングしかない! ならば読み専脱却して一つ書いてみるか!」とほぼ勢いで書き始めた話が本作になります。


 ひたすら勢いで自分の好きなものだけをお出ししたせいで、書く側としては無茶苦茶楽しかった、とはいえそれで出てきたものは武装神官、詠唱ありの魔術、噛ませの代名詞であるデータ系、主人公は負けるし再起までが長い、相棒の獣は戦っても甘やかしてもくれない、救済が使命の使い捨て天使、とほぼ流行の真逆を向いており……それが好きなんだから仕方ない、と後半はほぼ開き直り。主人公はやはり無双なんかしてないで、歯ぁ食いしばりつつ立ち上がってなんぼ、な話が好きなんだなと自分でも再確認した次第です。


 また本作ですが、ありがたくも「賢いヒロイン」中編コンテストにおいて中間選考は抜けたようであり、少なくとも編集部員様の目に留る程度には期待を持って読める冒頭である、と判断されたのは正直嬉しく思います。


 コンテストの規約的に続きを書いてはいけないわけではない、と分かったので、だいたい切りのいいところまで書こう、と書き進めていよいよ百話。

 タイトルを回収し主人公を無事書庫に戻せたことで、作者的にようやく肩の荷が下りた――いや伏線とか色々残したままであるのは承知ですが、ものすごーくやり切った感が極まって真っ白の放心状態になってしまったので、一端ここでちょっと休筆期間を挟もうと思います。


 ネタが尽きたわけではないのですが、正直毎日連載というものを舐めていた部分もあり、また私的にあまりにここで綺麗に纏まってしまい(なにせ百話ぴったりですし)、ここから先を書くのはいっそ蛇足ではないか? とすら思えて続きを書く意義に悩み始め、趣味で書いてる小説を書く意味で悩む時点でこれはイカン、このまま続けてもアウトプットが劣化する可能性もあるし、ここは充電期間を挟んでおこうと判断しました。


 また筆が走らない時はインプットが足りてない時とも聞いているので、中途半端に続きを書いて止まるより、タイトル回収して切りの良いこの時点で一旦停止し、しばし他者様の作品読んだり溜まってる録画番組でも見て充電しようかと思う次第です。


 別に他に書きたい話があるわけでもないので、一ヶ月ほどしたら再開するんじゃないかな、と思います。


 そんなこんなで備忘録代わりの、主要登場人物紹介をおいておきます。()は100話終了時点での自称年齢です。





◆ラジィ・エルダート(14)


 髪色:白

 瞳色:蒼

 信仰:地母神マーター


 本作の主人公。地母神教マーター・マグナの最上位魔術師群、【至高の十人デカサンクティ】の知育支援担当、【書庫ビブリオシカ】。現在、五年間民のために働く巡礼という聖務の二年目に突入中。

 地母神教マーター・マグナの十ある魔術宗派において道場アリーナ以外全てに高い適性を持つ才女だが、孤児出身故に地母神教マーター・マグナ内では己の宗派たる書庫ビブリオシカ内からも疎まれている。



◆フィン(56)


 髪色:茶

 瞳色:黒

 信仰:太陽神アムン・ルー


 ラジィの騎獣であるスフィンクス山羊頭獅子体。聖獣というのは人語を解し、信仰というものを理解し、神の信徒となった魔獣のことを指す。フィンは知識欲に惹かれ太陽神アムン・ルーに降り、太陽神教アムン・マグナの本を読み尽くした後、地母神教マーター・マグナの門戸を叩いた知識の僕である。

 基本的にはラジィと一緒に本を読んでればそれだけで幸せという同好の士。そんなこともありラジィとは契約云々を除いても仲がよく、関係としては主従というより親友の間柄に近い。性格はおおらかかつドライで、ラジィ以外には結構毒を吐く模様。



◆シン・レーシュ(63)


 髪色:白(白髪)

 瞳色:鳶色

 信仰:地母神マーター


 本作の最初の登場人物。ラジィの前に巡礼の旅(二回目)に出ていた食育支援【御厨コクイナ】担当の老婆。柔和で穏やかだが、地母神流剣衝術を極めたこの人も【至高の十人デカサンクティ】なのでやたらめったら強い。

 素は優しいお婆ちゃんだが、その高齢から酸いも甘いも噛み分けており、【至高の十人デカサンクティ】に政治的な一票を投じられる、カイからすれば母親のように信頼できる人でもある。



◆カイ・エルメレク(25)


 髪色:青

 瞳色:金色

 信仰:地母神マーター


 ラジィとツァディの師にして、【至高の十人デカサンクティ】の信仰支援【神殿テンプル】。一大組織である地母神教マーター・マグナの全てを統括する最上位指導者だが、政治的にはあまり有能ではない。

 というか、人格者は基本的に政治家には向いてないですしね。ただそれが良くも悪くも地母神教マーター・マグナ全体が腐敗し切らずにやってこられている理由でもあるので……まあ、尋常じゃなく苦労している人。弟子も弟子だし。



 他の【至高の十人デカサンクティ】はまだキャラが殆ど出てないので簡易版でお送りします。



◆テッド・ヨドカフ(38)


 【至高の十人デカサンクティ】の農地改良支援【菜園サジェス】。温和な笑みで流れるように毒を吐く、物言いは辛辣だが善人をこよなく愛する人格者。



◆アレフベート・ギーメル(32)


 【至高の十人デカサンクティ】の武器製造担当【武器庫アーマメンタリウム】。照れ屋な男で、口が悪いのはいつでもそっぽを向けるように、という只の予防線。



◆ラム・メドム(25)


 【至高の十人デカサンクティ】の防具ローブ製造担当【納戸ホレオルム】。人の命を護る為に防具の改良に心血を注ぐ真面目な女性だが、一見して裁縫狂いにしか見えないのが悩みの種。



◆ダレット・ヘイバブ(45)


 【至高の十人デカサンクティ】の調剤担当【温室ハーバ】。苦難の生を送るラジィを慈しんでおり、それは貴重な霊薬エリクサーを七本もラジィに譲っている辺りからも窺える、顔は厳ついが情に篤い男性。



◆サヌアン・メフィン(68)


 【至高の十人デカサンクティ】の護符作成担当【宝物庫セサウロス】。典型的な学者気質の老爺で、良い物を作ればそれが人の世を自然と豊かにすると信じている学徒。人生死ぬまで勉強がモットー。



◆ザイン・ヘレット(29)


 【至高の十人デカサンクティ】の家畜調教担当【スタブルム】。人付き合いは嫌いだが人を含む生命全般は愛しているという面倒な性格の女性。でも結局は人より獣の方が好きで、ラジィの次くらいに自分の神殿に籠もって出てこない人。




◆ラオ(??)


 髪色:ない

 瞳色:ない

 信仰:ない


 ラジィに討伐された古死長竜アンデッドエルダードラゴン。通常古長エルダーというのは群れを支配する種の頂点を指すのだが、竜のアンデッドというのが中々生まれないため、個体で活動していたところをラジィに討伐された。

 当人はアンデッドになったことをあまり好んでおらず、ラジィに倒され浄化されたことは純粋に感謝している。現状は大いに弱体化したお酒大好きなお爺ちゃんみたいな立ち位置に納まっており、しかしその現状に不満もない模様。

 なおラオのアストラル体は現在その殆どをラジィに同化吸収されてしまっている。ただ物理的な心臓がラオにはもう残っていなかったため、その力をラジィは振るえず半ば宙ぶらりんになっているようだ。



◆ウルガータ(37)


 髪色:黒

 瞳色:黄色

 信仰:麻薬絶対許さない


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアの中堅ファミリーを統括するボスの一人。育ての親だった姉が麻薬売買を苦に自殺しているため麻薬を目の敵にしているが、それ以外の非道はある程度許容する、お世辞にも真人間とは言いがたい男。

 運良くか運悪くかラジィに目を付けられ手を組むことになり、ラジィのお人好しに振り回されながら新たなるリュカバースのドンとして君臨した。現状は良くも悪くもラジィの父のような役割に収まりつつ、マフィアの統括に四苦八苦している。



◆フォンティナリア・パダエイ・ノクティルカ(――)


 髪色:茶色

 瞳色:藤色

 信仰:心呑神デーヴォロ・ディブラーモール


 ノクティルカ国を統べるノクティルカ一族として生を受けた、しかしハズレを引いてしまった役立たずの少女。元々ノクティルカ一族は奇形存在である「礎」と呼ばれる弱小種を継承する為、取り込む魔獣は弱いものばかりになっている。

 エテルナリアという妹が無事礎を継承したためそれ以降の妹は生まれることはなく、よってフォンティナリアは何不自由なく生きて何不自由なく死ぬ未来が約束されていたのだが……仕事がない人は病むのでね。逃げちゃうのも仕方ないね。



◆アウリス・ヒッター(17)


 髪色:桃色

 瞳色:水色

 信仰:心呑神デーヴォロ・ブリザードフォックス


 ノクティルカ一族に一族郎党仕えるヒッター家に生を受けた、容姿端麗な少女。何をやらせてもそつなくこなし、その優秀さからハズレを引いた哀れなフォンティナリアが何不自由ない生活を送れるよう、侍従として付けられることとなった。

 ノクティルカ時代はわりと何でも出来るものの戦略的には無意味な自分の人生に飽き飽きしており、自分には想像も付かないことをガンガンやっていく今のティナには心底感謝して忠誠を誓っている。優秀だけど娯楽を自分で作り出せないタイプなんですね。



◆ステネルス・ヒュペレノール・リュキア(17)


 髪色:金色

 瞳色:赤色

 信仰:芽蒔神スパルトイ


 リュキア王国第二王子でヒュペレノールを氏神とするヒュペレノール一族の代表格。芽蒔神スパルトイ序列第五位と最上位に近い実力を持つものの、箱入り息子でかなり世間知らず。故に魔術師として実力を出し切れているとは言いがたい。

 国全体が選民思考なので弟スティクスを毛嫌いしていたが、それを除けばワリと真面目でまとも、思いやりもあり女性に非礼を働くことを恥じるなど普通に紳士な一面も備えている。ただ序列第五位ながらそこいらの小娘に負けたことで、現在は若干立場を失っている模様。



◆ランベール・ジュオー(38)


 信仰:心呑神デーヴォロ


 ノクティルカ騎士団特殊第四部隊、通称【改編部隊】隊長。礎と呼ばれる存在がノクティルカにとって不利な予言を行なった際に、それを改編するために暗躍する部隊を率いる、愛国心の強い男。ただ狂信はしておらずあくまで任務としてこなしている。

 汚れ仕事をやっていることもあり、自分たちが殺されることもやむ無しと受け入れているのは流石に覚悟がガンギマリ過ぎでは? 獣為変態なしの身体強化だけでも戦えるよう鍛えているので、魔術無しでもそれなりに強い。



◆ブルーノ・レンティーニ(32)


 髪色:青

 瞳色:黒

 信仰:不明


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアの中堅ファミリーを統括するボスの一人。リュカバースに流れ着いて右も左も分からなかった頃にウルガータに面倒を見て貰っており、ウルガータとは親友の間柄にある、根は真人間な苦労人。

 妻に他界されているものの娘が一人おり、しかしマフィアなんぞをやっているため娘には自分が親であることを明かさず距離を取っている。ウルガータの参謀的な存在で、ラジィをレディとして扱うためラジィからの信用もかなり篤い。



◆スティクス・リュキア(――)


 髪色:黒色

 瞳色:黄色

 信仰:芽蒔神スパルトイ


 リュキア王国第三王子でどこぞの馬の骨にリュキア国王シェンダナ・ウダイオス・リュキアが産ませた子供。混じり物として王城に生きる全ての存在から疎まれてはいるものの、衣食住は保証されそこそこの教育は施されている。

 魔術師としての教育は一切施されていないのに、半分だけとは言え高貴な血を引くため芽蒔神スパルトイ序列第六十六位を占めてしまっていたため、その無駄を是正すべくステネルスによって暗殺された。



◆ティーノ(18)


 ウルガータファミリーにおけるソルジャーを統括する指揮官コマンダーでウルガータの右腕。飄々とした青年であっちこっちに恋人がいる。そこそこ使い勝手はいいようでウルガータに重宝されている。

 ラジィが孤児をメッセンジャーとして組み込んだ際にもいち早く順応するなど、状況の変化に柔軟に対応できる即応性もあり、年下ながら左腕バルドより一歩抜きん出ているようだ。



◆バルド(19)


 ウルガータファミリーにおける、側近としてシマ全体の財政を管理するウルガータの左腕。一応コマンダーだが、どちらかというと文官に近い。シマの住人たちからも信頼されているが、そこに土足で踏み込んできたラジィのことは大いに嫌っている。

 アミュレットの性能を認めて一目は置いたものの、シマを凄まじい勢いで変化させていくラジィにどこかしら居場所を奪われたようなやるせなさを抱いている。良い変化だと分かっていても不満を覚えるの、わかるよすごくわかる。



◆パオロ(62)


 ウルガータのシマで宝飾品職人をやっている老人。腕はいいのだが、装飾を嫌うラジィとはあまり仲が良くない。職人の腕前には敬意を表する男で、トゥデルに対しては控えめになるがそのトゥデルがラジィに控えめなのは気に入らないようだ。

 まあ、装飾を否定されちゃパオロは自分の仕事を全否定されることになってしまうのでねぇ。バルドと並んでよくよくラジィとは噛み合わない登場人物の一人。



◆チャン・ロンジェン(32)


 髪色:黒

 瞳色:茶

 信仰:不明


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアの中堅ファミリーを統括するボスの一人。ウルガータとは能力も性格も拮抗していて、長年張り合っている間柄。配下に対しては鷹揚であり、魔術師シンルーとも上手く付き合っている。

 シェファに対しては愛情とも尊敬とも付かぬ複雑な感情を抱いていて、新色町でシェファが楽しくやっていることを好意的に受け止めている。なおラジィをレディと呼んだのでラジィからの評価はかなり高くなっている。



◆ルキーノ・コルレアーニ(52)


 髪色:茶色

 瞳色:藤色

 信仰:不明


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアを統括するドン。リュカバースの麻薬王であり、麻薬を売って得た財産でリュカバースを恣にし、敵対する相手はグラナを使い容赦なく殺して今の地位を築き上げた。

 誇りより生存を優先するタイプで、ウルガータの姉の仇でなければウルガータの下について再起も計れたのだろうが――まあ自業自得ってヤツですね。人前では俺だが素の一人称は私、と実は結構いいとこの出だったのかもしれません。



◆アンニーバレ・リッツォーリ(39)


 髪色:橙色

 瞳色:灰色

 信仰:不明


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアの中堅ファミリーを統括するボスの一人。中堅ボスでは唯一ドンの公開処刑を目にしてグラナの実力を知っており、その時点で牙をもがれてしまい、生存を第一に考えるように小さく纏まってしまった。

 ガレスの造反で吹っ切れて以降は持ち味が復活してきたようで、その後は最善手を打ちながらラジィの治療が終わるまで前線を支えきるなど、縁の下で活躍している。なおウルガータが指摘したように、ガレスとコルンにはちょっと甘いらしい。



◆シェンダナ・ウダイオス・リュキア(38)


 リュキア王国の国王でストラトス、ステネルス、スティクスの実父。三男スティクスには上二人と差を付けた、王位を継がせぬことが明白な教育を施し社交界にも出さなかったが、それ以外ではそこそこ真っ当に育てていた模様。

 その一方で周囲に辛く当たられるスティクスの立場を改善しなかったのは――まあ妻二人からの妨害とかもあったのでしょうが、父親としては失格ですね。何を思って非嫡出子の三男スティクスを作ったのかは未だ不明。



◆マクロー・バルブス(22)


 元リュキア王家近衛騎士団員でスティクスの護衛兼側近。娘が血結病を煩い余命幾ばくもなくなってしまったため、治療薬を買う金を求めて主を裏切った男。誰か一人のためにそれ以外の全てを切り捨てた、といえばヒーローなのですがね。

 その後は後ろめたさを抱えながら街道警備の任をこなし、快癒してすくすく成長している娘のために真面目に働いている模様。ラジィに自殺は自己満足だよ、と止められているからね。娘が成人するまでは頑張って家長を務めるでしょう。



◆ストラトス・クトニオス・リュキア(18)


 髪色:青色

 瞳色:小豆色

 信仰:芽蒔神スパルトイ


 リュキア王国第二王子でクトニオスを氏神とするクトニオス一族の代表格。芽蒔神スパルトイ序列第七位と最上位に近い実力を持つものの、下の弟ステネルスより下、ステネルスの母は序列第三位と肩身が狭い思いをしていた。

 ステネルスとは違いどちらかというと文系に近く当人もステネルスよりは弱いのだが、ステネルスが小娘如きに無様な敗北を喫したため、第一王子として若干城での存在感を増しつつある。



◆トゥデル(85)


 髪色:焦茶色

 瞳色:赤茶色

 信仰:鍛冶神ヘーパエスティア


 リュキア王国で恐らく一二を争うほどに優秀なドワーフ武器職人。貴金属鍛造、魔獣素材加工のどちらにも明るく、冒険者の顧客を大量に抱え引く手数多だったが、ラジィの竜麟の剣に一目惚れして人生を狂わされてしまった。

 ラジィから竜麟の刃の修理を正式に請け負い、槍に仕立て直しラジィから賞賛の言葉を得たことで人生の正道に復帰。仕切り直しとして新たにリュカバースで武器工房を開くことになった。え? リュケイオンに帰ってないの?



◆ベクター・グリーズ(31)


 リュキア王国首都リュケイオンにてクラン【尽務オペラ】所属のエースアタッカーの大剣使い。冒険者ランクは特Aで、詠唱抜きならラジィと互角に戦える心技体共に優れた、使い出のある冒険者。

 ただ生まれつき体格と膂力に恵まれていたせいか、自分の居場所を探され突き止められた幼気な少女の気持ち、というのはいまいち理解できずにいた模様。冒険者一筋で女っ気がなかったから、デリカシーってもんが欠けてるんですね。



◆ヒューゴ(12)


 船乗りと娼婦の間に生まれたリュカバース民。とは言えどちらもリュキア王国民でないため市民権はなく、両親を失ったあとは孤児として盗みを働いて生きてきた。

 ラジィからの支援もあり、現在はウルガータファミリー見習い兼新色街警邏隊として真面目に働いており、孤児たちにとって憧れの存在になっている。



◆コニー(15)


 ヒューゴと同じ元ストリートチルドレンで、レンティーニファミリーの見習い兼新色街警邏隊。生活環境を一変してくれたウルガータとブルーノ、ラジィに忠誠を尽くしている。

 元舎弟たちが工房などで働くようになったせいで自分も馬鹿ではいられないぞと最近少し焦っており、ヒューゴと共にティナの下で勉学に勤しんでいるらしい。頑張れ少年たち。



◆トマス(19)


 製パンギルド員キンバリーのパン工房『クラストクラム』で働いていた製パン職人。クロップ通りに己の店を構えギルド員入りし、幼馴染のルチアとも結婚して順風満帆の生活中。

 最近は妻が具材、トマスが生地と手分けしての新規調理パン作りに嵌っており、というか没頭し過ぎてルチアから「こいつ私よりパンの方が好きだな」と呆れられている。まぁルチアもパン焼いているトマスの横顔に惚れたわけで……ラブラブですね、はい。



◆ラウラ(16)


 ラジィに最初に拾われた街角娼婦、とは名ばかりのほぼストリートチルドレン。シェファやラジィ、ティナの尽力で学習を重ね、今や新色街で生計を立てられるまでに成長した。

 既に並の市民より学があり、もう娼婦以外の道でも生きていけるのだが、石鹸、保湿化粧品あり、料理洗濯は他人任せで昼は勉強し放題という娼館の環境が良すぎて出ていく理由がなくなっている。



◆レイ・シェファ(27)


 髪色:黒色

 瞳色:琥珀色

 信仰:自らの美貌


 かつて高級娼館の奥の座に居を構えていた元高級娼婦クルチザンヌ。僑族であるが故にリュキア国民ミザリー他の娼婦たちに疎まれ、銀梅呪スフィリスを患い高給娼館を追いやられた。

 根っからの実力主義で人と物を見る目に優れ、その場にあるもので最善を尽くし、無い物ねだりなど(美貌を除いて)一切しない。なお、人の不安と孤独を慰める娼婦という職を高等技術職としてみており、強い誇りを持って働いている模様。



◆シン・フェイ(15)


 髪色:黒色

 瞳色:茶色

 信仰:シェファ


 かつてシェファが高級娼婦クルチザンヌをやっていた時代に禿として身の回りの世話をしていた少女。親の手で娼館へ売られた子なのだが、凛として玲瓏、マフィアやリュキア騎士すら手玉に取るシェファの姿に己の理想を見出した。

 その有様は既に信仰になっており、シェファの言うことなら何でも聞く。シェファとしてはそういうフェイの在り方はあまり好ましくないのだが、銀梅呪スフィリス時代に世話になっていたのも事実。あまり強く否定もできず少し悩んでいるようだ。



◆ルイゾン・ケクラン(31)


 高級娼館御用達だった仕立屋ギルド員で、珍しい男性のドレス職人。女性の美しさを引き立てることが生き甲斐という、服飾の魅力に取り憑かれた根っからの仕事人間。

 新色街は需要が一気に拡大したため仕立屋ギルド員も複数店を構え始めたが、未だルイゾンのドレスは新色街で一番の人気を誇っている。ルイゾンの魂が息を吹き返した証だろう。



◆フルール・フラーラ(28)


 ルイゾンと同じく新色街に工房を開いた仕立屋職人。こちらはラジィの容姿に一発で惚れ込み、魔改造ローブを作ってプロデュースを計ってははダメ出しされたりとちょっと道を外れかけていた。

 ただ決戦用ローブを着たラジィの姿が偶然娼婦たちの目に留まったことで注文が殺到、最近はかなり仕事に忙殺される休み無い生活を送っているとかなんとか。



◆ハリー・ミッチェル(29)


 髪色:山吹色

 瞳色:薄紫

 信仰:不明


 リュカバース裏社会を支配していたマフィアの中堅ファミリーを統括するボスの一人。麻薬に手を出しておらず、中堅ながら財力が弱い為ドンからは放置されていた、利より信に重きを置く漢。

 情というよりは道理に篤く、しかし根は短気と厄介な精神構造をしているため劣勢に弱いが、決して信は曲げない為、シマの住人やナガルには好意を持たれているナイスガイ。



◆ナガル(27)


 髪色:黒

 瞳色:焦茶

 信仰:火神プロメテス


 ハリー・ミッチェルに雇われている火術師。穏やかで理知的、激昂することがない性格であり、ウルガータ陣営魔術師の誰からも敬意を持たれるリーダーになっている。

 その反面酒も煙草も女も博打も嗜まず、休みの日も瞑想と鍛錬しかしない、とハリーやガレスからは何が楽しくて生きてんだ? と疑われるほど禁欲的。うん、もっと楽しいことしたほうがいいよ君。



◆ガレス・ノイマン(19)


 髪色:ねずみ色

 瞳色:水色

 信仰:獣魔神フェラウンブラ・ケルベロス


 元は正規神殿騎士として獣魔神フェラウンブラ狩猟騎士団に所属していたエースだったが、妹コルンが授かった獣魔がピジョンだった為に退団。リュカバースでマフィアに身を落としていた。

 かなり身内愛が強い性格でロクシーとコルンがいれば他に欲しいものは特にない。妹の為ならダブスタ上等なので、頭が複数あるケルベロスを獣魔として授かった分かりやすい男。



◆ロクシー(――)


 毛並:ねずみ色

 瞳色:水色


 ガレスが獣魔神フェラウンブラより授かった獣魔ケルベロス。ガレスよりも冷静かつ知性的、ガレスの穴を埋めるよきパートナーで、ラジィからもガレス以上に信用されている。

 頭が三つあるので実は三体に分かれての行動も可能。ただ一体あたりの性能が三分の一まで下がり、ガレスによる肉体構築、解体制御難度も三倍に跳ね上がるため、基本的には一体構成で運用されている。



◆コルン・ノイマン(13)


 髪色:ねずみ色

 瞳色:水色

 信仰:獣魔神フェラウンブラ・ピジョン


 ガレスの妹でわりと重度のブラコン。授かった獣魔の特性からしてどういう性格かは想像もつきましょう。ガレス以上に身内に献身的だがガレスとは異なり運動もダメ、頭の回転も早い訳では無い普通の子。

 そんな自分がガレスの役に立つにはこれしかない、と思い込んだ行動がある意味更にガレスを追い詰めるというね……お互い相手に普通の生活をさせてあげたいだけなのに、噛み合っていない兄妹だなぁ。



◆グラナ(31)


 髪色:濃紺

 瞳色:桃色

 信仰:身献神サクリコラ


 孤児ながら師に拾われその魔術を受け継いだ、観測される中では唯一の身献神サクリコラ魔術師。思考の根っこはかなり真っ当で、生贄がなければ魔術を使えないことに深い罪悪感を抱いている。麻薬を常用しているのはその為。

 弱きものを救いたいと願う、弱者を虐げる強者を殺すアベンジャー。師から聞いたのか天使の概要を知っており、ラジィや身献神サクリコラを孤独から救いたいと本心から慈しめる男なのだが、目的と手段が逆転していることに気がつけないほどに、麻薬と救済と自らが奪った命の前に擦り切れてしまっている。ここで倒れられたのがグラナにとっての救いだろう。



◆ヤン・シンルー(21)


 髪色:緑色

 瞳色:黄色

 信仰:海神オセアノス


 チャン・ロンジェンに雇われている海神オセアノス魔術師。とある商船団の顧問魔術師だったのだが、船上という閉鎖空間でひたすらヘイトを撒き散らされた船員がある日突然ブチ切れ、海へ放り出され死亡扱いとなる。

 その後は海神オセアノスの加護を駆使して何とかリュカバースへ辿り着き、追いはぎをやっていたところをチャンに拾われた。悪癖が災いしてぼっち生活を送っているため、仲間や友人関係にものすごく憧れている(が、自分からは動けない)。



◆ティナ・エルダート(17)


 髪色:茶色

 瞳色:藤色

 信仰:心呑神デーヴォロ・ディブラーモール


 エルダートファミリーの長女にして家長。普段は新色街で孤児相手に教鞭を執りつつ、最近は元貴族としてウルガータの立ち居振る舞いを矯正したりもしている。

 接近戦は全くできなかったが、グラナにいいようにやられた反省とディーの強制訓練のお陰で、そこそこ爪を用いた格闘戦もできるようになったようだ。

 若干他罰思考的な面があるもののファミリーの牽引役兼ムードメーカーであり、その不真面目さに若干は呆れられつつも、ラジィからそこそこ信頼されている。



◆クィス・エルダート(16)


 髪色:赤色

 瞳色:緑色

 信仰:心呑神デーヴォロ・ワイバーン


 ティナの義弟にしてラジィの義兄となった少年。普段はティナとほぼ同様の生活をしている他、ウルガータファミリーの雇用魔術師としても働き始めた。

 ディーと共に鍛錬したことで自らの弱さを実感し、一月全力で組手に取り組んだことで劇的な成長を遂げている。まあ、その力を振るう機会はない方が良いのだけどね。

 その真面目さはそこそこラジィに信頼されているが、ラジィから見るといまいち頼りない、どちらかというとジィとディーの弟分みたいな位置に納まっている。



◆ラジィ・エルダート ※追記


 髪色:白

 瞳色:蒼

 信仰:地母神マーター運命神フォルトゥナ


 本作の主人公。【創造神デウス】に作られた当代の天使で、運命神フォルトゥナとして覚醒する存在。子宮の代わりに神臓を備えていることを除けばほぼ人間と同じ作りをしており、未神化状態では思考、精神、肉体の全てが同年代の人間の少女と大差はない。

 自分が降臨すれば数多の人類が不幸になることが分かっていてなお、神になることを願っていたが、グラナと相対したことで自分自身一方的な救済の醜悪さを目の当たりにし、神になるという渇望から少し開放された模様。

 しかしその道を選ぶ限りラジィ当人は絶対に救われないわけで……なお、実際には五歳相当の肉体でいきなりこの世に生まれ落ちているので、実際に生きている年数はまだ11年程だったりします。



◆天使ラジィ(0)


 髪色:黄金

 瞳色:真紅

 信仰:運命神フォルトゥナ


 ラジィが運命神フォルトゥナ魔術を濫用すると発動する神の卵。運命を制御し事象確率を自在に操る、必中とひらめきなしには勝負にならないまさにチート。

 運命神フォルトゥナ地母神マーター、二つの魔術を操れる為に強化倍率が跳ね上がっているが、現時点では神臓がないためその総魔力量自体はラジィのものから変化していない。とはいえ翼があり空中戦にも対応と死角はなく、撲殺ゴリラとしては完成形に近い。

 しかしこの状態でも神臓がない以上は神の足元にも及ばず、その性能はあくまで人の域に留まっている。然るに神になることを諦めておらず、代替物としてラオの霊精アストラル体を取り込んだが、神臓に当たる器官がないため神には至れずにいる。

 なお天使というのは種族名であり、この状態を指して天使というわけではない。厳密には、どんな状態でも神になる前のラジィは天使である。



◆ツァディ・タブコフ(17)


 髪色:黄金

 瞳色:真紅

 信仰:地母神マーター


 ラジィの幼なじみで戦闘、鍛錬支援の【道場アリーナ】担当。現時点における作中最強の少年。「自分が強くなりたい」という感情では決して強くなれない地母神マーター魔術で神をも殺す、利他愛が天元突破している摩訶不思議生命体。

 ジィもディーも作中でさっくり人を殺したりしてもいて、それでどこが「他人を思いやれる」なの? と思う方もいるかもしれませんが、これは地母神マーターという、女子供を食い物にする連中には一切容赦しない神の基準なので……

 なお庶民の出なのでツァディの魔力量はさほど多くありません。なのに無茶苦茶強いのは、魔力を神気に編む効率が馬鹿みたいに良いからです。なおポーション作成とかは地母神教マーター・マグナ正規神官中最低レベル……極端な男だよ。




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