第二部「廃兵と異邦人」4
印刷の目処もたち、九〇一中隊は本格的に忙しくなってきていた。
「出版社からの推薦作品、委員会の絞り込みが終わりました。リストです」
ダリミルから書類を受け取り、イアンはざっと眺める。
「よし、このまま中佐に上げる。海軍からのリクエストはどうなった?」
「それが、艦隊と海軍歩兵で枠の取り合いになってるとかで…」
「あいつら、いつもそれだな!早くしないと印刷に間に合わないと言っといてくれ」
「中隊長殿、印刷用のレイアウトが上がりました」
ダリミルと入れ替わりに、ヤーヒムがファイルから数枚の書類を取り出した。
「紙一枚に二作品を同時に印刷して、その後に裁断するやり方です。これで相当量の紙が節約できます。さすがはヒネクの技術者ですな」
図書館連隊には現在、ヒネク印刷から出向してきた技術者が詰めている。指揮官としての任務に追われるイアンに変わり、ヤーヒムがその応対にあたっていた。
「…なるほど、いいですね。しかし、作品ごとにページ数は違うでしょう。空きページはどうします?」
「そこです。著者紹介やら、クロスワードやらのおまけを付けようかという話になってますが」
「なるほど…出版社にもなにか頼んでみます。これで進めてください」
「了解」
「イアンさん!」
ミルシュカが受話器を押さえながら声をかけた。
「『ラジオ解放区』から出演の依頼ですが、どうします?」
「またか…多忙で日程が調整できないと断ってください。あくまで丁重に」
「わかりました」
物腰柔らかに電話口で話すミルシュカを見ながら、イアンはため息をつく。
「先週は『野ばらラジオ』。週ごとに大手になっていってますな」
感心したように言うヤーヒムに、疲れた声で愚痴をこぼす。
「陸軍の広報部が人をよこしてくれるって話なんですが、どうなってることやら…」
「イアンさん」
呼ばれて目をやると、デスクの前に鞄を持ったラティーカが立っていた。
「そろそろ時間です」
「時間って…ああ」
腕時計を一瞥して、イアンが声を上げた。
「そうだったな」
「早く支度してください。遅刻でもしたら台無しですよ」
「わかってるって」
椅子にかけていた上着を羽織る。ヤーヒムが脇に置かれた鞄を取った。
「いよいよ今日でしたか」
「気は進みませんがね。まあ、ダメでもともとで」
ラティーカにじろりと睨まれ、イアンは咳払いした。
「ご武運をお祈りしますよ」
差し出された鞄を受け取り、帽子を頭に乗せた。
「それじゃ、あとはよろしく」
ヤーヒムの敬礼に答えて、イアンたちは部屋を出る。
「車は?」
「もう玄関に」
「助手が板についてきたな」
「不本意ながら」
軽口をたたきながら正面玄関を出た。初夏のような日差しに目を細めながら、待ち構えていた車に乗る。
二十分ほど走って、目的地に到着した。オフィス街にあるビルの一つだ。二人が車から降りると、エントランス前にいたスーツの男が駆け寄って来た。
「どうも、ご足労いただいてすみません!」
黒い髪を後ろになでつけた四十代ほどの男だ。襟元に駱駝をかたどった社章を留めている。
「キャラバン・ブックスのマルツェル・ピツェクです。どうぞよろしく」
「こちらこそお世話になります、イアン・プロヴァズニーク大尉です。こちらは助手のスプルナ軍曹」
三人は代わる代わる握手する。イアンの名を聞いたピツェク氏は一瞬だけ不思議そうな顔をしたが、それだけだった。
ラティーカが助手席に移り、ピツェク氏を乗せて車は再び走り出す。
「ご無理を言って申しわけありません」
隣に座るピツェク氏に向かって、イアンが切り出す。
「アポを取っていただくだけでも大変だと聞いていましたが」
「いえいえそんな!」
ピツェク氏は大げさに首を振った。
「わが社も今回の、兵隊文庫ですか、この事業には全面的に協力しようということで。先日の初会合、うちの社長も出席してたんですから」
「それはありがとうございます」
「ただねえ…」
ピツェク氏は眉間に皺を寄せると、いかにも心苦しそうに言った。
「会社の方針と、作家さんの信条はまた別ですから…もちろん、ほとんどの作家さんは快く承諾してくれましたよ?」
「それは我々が一番良く知っていますよ。感謝しています」
「恐縮です。ただ、ユラーセク先生だけはやっぱり別でして…出版社がどうだろうと、自分は絶対に協力しないと、そう言っておるんです」
イアンはうなずきながら聞いている。予想通りの反応だった。
「そんな塩梅ですから…仲介をしておいてなんですが、あまり期待はなさらないほうがよろしいんじゃないかと…」
消極的な物言いだったが、無理もないだろう、とイアンは思う。
キャラバン・ブックスは、ユラーセクの作品のほとんどを出版している会社だ。彼の存在は経営の支柱と言っていいだろう。機嫌を損ねたくない相手のはずだ。
「わかりました。無理をお願いしたようで申しわけありません」
「とんでもない。実のところ、私どもとしても、先生とはもう少し互いの理解を深めたいと考えておりまして…」
俯いたピツェク氏の表情を、イアンは訝しげに眺めた。助手席でラティーカが聞き耳を立てている。
「私も、かれこれ五年ほど先生の担当をしておりますが、あの頑なな態度に、いったいどんな理由があるのか…いや、こんなところでお話するような事でもございませんね。ああ、運転手さん、つぎの交差点を左に」
車がなめらかに左折する。会話はそこで一度途切れ、あとは事務的なものに変わっていった。
三十分ほど走った後、住宅地の一角で車は停まった。
五階建てのアパルトマンで、小綺麗だが大きくはない。そこそこ稼ぎのいい独り者が住むような所だ。
「話には聞いてたが…なるほど、大作家の豪邸ってイメージじゃないな」
クリーム色の壁を見上げて、イアンがつぶやいた。ピツェク氏が横に並んで答える。
「贅沢の嫌いな方なんです。週に三日だけ家政婦が来る以外は、家事や料理もすべてご自分で」
「へえ」
「あ、あの」
ラティーカがためらいがちに聞いてきた。憧れの作家に会うというので、さすがに緊張しているらしい。
「ユラーセク…先生が、報酬のほとんどをいろんな所に寄付してるって、本当なんですか?」
「ええ、事実ですよ」
聞かれ慣れた質問なのだろう、ピツェク氏はさらりと答えた。
「ご自身の生活費と少々の蓄え…『葬式代』などとおっしゃってますが…それら以外はほぼ、寄付金として外に流れています。病院や孤児院、若い芸術家の支援団体など、多岐に渡るようです」
話しながらエントランスをくぐり、三人はエレベーターに向かう。
「ご友人の税理士さんに処理を任せていらっしゃるので、細かいところまでは私も存じませんが」
「税金対策ですか?」
イアンのもっともな疑問に、ピツェク氏は苦笑いで答えた。
「税理士さんとも話しましたが、税金対策としては常軌を逸しているそうです。なにかお考えがあるんでしょうが…」
「なんというか、聞きしに勝る人物のようですね」
イアンがしみじみと言った。
エレベーターで五階まで上がり、廊下に出る。ちらりと隣を見ると、ラティーカの表情が目に見えて固い。
ピツェク氏が足を止め、ドアをノックする。
「先生、ピツェクです。先日ご連絡した件で、独立図書館連隊の方をお連れしました」
ドアの向こうで人の気配が動いた。
鍵を開ける音がして、チェーンをつないだままのドアの隙間から、見るからに不機嫌そうな顔が覗く。
本の著者近影で何度も見た顔だ。伸びた髪は灰色で、顔の下半分を覆う髭も同じ。高く尖った鼻の上に、黒いセルロイドフレームの眼鏡が乗っていた。痩せた細長い顔の中で、レンズの奥の瞳が力強く輝いている。
その眼光が、明らかに険しくなった。
「…私と話をしたい兵隊というのは、それか」
不機嫌を隠そうともしない。イアンが一歩前に出る。
「お会いできて光栄です。陸軍独立図書館連隊のイアン…」
「名乗らんでいい」
イアンの挨拶を遮って、ユラーセクは続ける。
「時間の無駄だ。このピツェク君がどうしてもと言うから、五分だけ時間を取ったんだ。要件だけ言ってさっさと帰れ」
あまりな物言いにイアンも一瞬言葉を失ったが、なんとか気を取り直す。
「…我々は『兵隊文庫』という、前線に赴く兵士のための本を作っています。これに是非ユラーセク先生の著作を掲載したいと思いまして」
「あの本の事なら新聞で読んだ」
冷たい口調でユラーセクが答える。
「くだらんことが書いてあったな。『思想戦』だの、帝国のプロパガンダから兵士を守る、だの。なんと言い繕ったところで、あんなものは若者を死地に送り出すためのペテンにすぎん。シュトルバもアイゼーネフもバレクも、そんな事のために筆を執ったわけではなかろうに」
吐き捨てるように言って、ユラーセクはイアンを睨みつける。
「あんなものに私の作品を載せるつもりはない」
イアンはつばを飲み、慎重に口を開く。
「兵隊文庫には、国内外の価値ある作品を掲載します。ユラーセク先生の作品がなくては、その意義を果たしたとは言えません。どうかお願いできませんか」
「価値ある作品だと?」
ユラーセクの言葉は辛辣さを増していく。
「いいか。本の価値というものはな、あくまで個人的なものだ。作品と読者が一対一で向き合って、初めてそこに生まれるものだ。それを貴様らは何だ?『このような本が存在できる我々の社会を守りましょう』か?馬鹿らしい!貴様らは本にタダ乗りしているだけだ」
背中を冷や汗で濡らしながら、三人はユラーセクの批判を聞いていた。イアンがどうにか反撃を試みる。
「たしかに、そういった面があることも否定できません。我々は軍隊ですから、まず何よりも勝利のために必要な手段を取らねばならないのです。兵士たちを慰め、勇気づけるのは、勝利のために必要な手段なんです。そのための兵隊文庫です」
「慈悲深いことだな」
髭に覆われた口元が、皮肉っぽく歪む。
「勝利へ向かう列車の釜に、我々の本を投げ込めというわけか」
イアンが流石に渋い顔をする。見かねたようにピツェク氏が口を挟んだ。
「先生、どうかご一考いただけませんか。焚書のニュースをご覧になった時、あれほど怒っておられたじゃないですか」
苛烈な視線がピツェク氏の方に向いた。編集者は一瞬怯んだが、続ける。
「今度のお話は、あの焚書に対する抗議で、挑戦なんです。だからこそ、業界全体で共同戦線を組んでいるわけで」
「共同戦線?だったら君たちで志願して、小銃を持って前線に行きたまえ」
身も蓋もない事を言いやがる、とイアンは思った。
「あの焚書というのはな、単なる見世物だ。自分たちの意に沿わぬ本に火をかけることで、それを征服したように見せかける…いいか、見せかけるだけだ。愚者共は、それで自分たちが本とその著者たちに勝利したと錯覚する。信じがたい愚かさだ。その愚かさにこそ私は怒りを感じる…君たちがやっていることも同じだ。無数の作品を一つの目的のために、それも戦争などのために利用する。帝国の連中と何が違う?焼くか刷るかの違いだけだ」
唖然として言葉もない三人に構わず、ユラーセクは腕時計を覗き込んだ。
「喋りすぎたな…ともかく、兵隊文庫とやらに私の作品を載せる気はない。もう来ないでくれ」
音を立ててドアが閉じた。鍵が閉まり、足音が遠ざかる。
ドアの前で、三人はしばらく呆然としていた。やがてお互いの顔を見合わせてため息をつき、元きた廊下を歩き出す。
「申しわけございません、わざわざお越しいただいたのに」
心底からすまなそうに、ピツェク氏が口を開いた。
「先生があそこまでお怒りだとは…」
「確かに、ああまで言われるとは思いませんでしたね」
冗談めかして笑って見せたが、ピツェク氏の表情は沈んだままだった。気まずさを誤魔化すように、イアンはラティーカのほうに声をかける。
「お前さんずっと静かだったな。憧れの作家にあれだけ言われて、さすがにショックだったか?」
「え?」
ラティーカが間の抜けた声を上げ、放心状態から戻ったようにイアンの顔を見た。
「いえ、その…あんまりイメージ通りだったので、ちょっと感動しちゃって…」
「…ああそう」
「…そんなわけで、ヴィクトル・ユラーセク先生との交渉は不首尾に終わりまして」
夕方。連隊長室での報告をイアンはそう締めた。静かに聞き入っていたランダ中佐がふむ、と息を吐く。
「なかなか難しい御仁のようだな」
「覚悟はしてたつもりでしたが…取り付く島もない。文字通りの門前払いですよ」
お手上げ、という顔のイアンに、中佐は尋ねる。
「誰か他の人物…たとえばクルハンコヴァ女史に仲介を頼むというのはどうかね?」
「どうでしょうね…」
中佐の提案に、イアンは顎を撫でて考える。
「せ…クルハンコヴァ女史なら、こちらが頼めば仲介は取ってくれるでしょう。ただ、ユラーセク先生のほうが彼女の話を聞いてくれるかは未知数です。顔ぶれが変わったくらいで持論を翻すような人物じゃないでしょうし…最悪、あの二人で論戦になってしまうかもしれない」
「それはまずいな」
共和国を代表する二人の言論人が議論を戦わすようなことになれば、せっかく築いた兵隊文庫への支持にブレーキをかけかねない。
「ひとまず、ピツェク氏が折を見て説得してみると言ってます。あまり期待はできませんが、あちらの気が変わってくれないことには…しばらくは先方からの連絡待ちですね」
「しばらくは、と言うが」
中佐は手元の書類をちらりと見る。
「君、来週からアヴォネクだろう」
「そうなんですよねぇ…」
困り果てたように言って、頭を掻く。
アヴォネクに新設されるヒネク印刷の印刷所。その開設式に陸軍側の責任者として、イアンは出席することになっていた。
「うちに詰めてるヒネクの技術者も連れて行かなきゃいけないし、どうしたって外せません…まあ、この際ユラーセク先生の件は、当分保留でも仕方ないかな、と」
あきらめ混じりのイアンの前で、ランダ中佐はしばらく考えると、出し抜けに口を開いた。
「わかった。ユラーセク氏の件は私が預かろう」
「へ?」
おもわず間の抜けた声が出た。
「大尉で現場責任者の君が行って断られたんだ。次は上司の私が出るべきだろう」
「いや、しかし」
意外な展開に台詞が出てこないイアンを眺めて、中佐が小さく笑う。
「門外漢に掻き回されるのは面白くないだろうが、悪いようにはせんよ」
「いや、そんな心配はしてませんが…中佐もお忙しいでしょう」
「この件が長引くことを考えれば、いま私が出て片付けてしまうほうが効率的だ。それに、共和国きっての大作家という人物には、私も少々興味がある」
イアンは再び頭を掻いた。そう言われては、引き止めるわけにもいかない。
「…了解しました。よろしくお願いいたします」
「ああ。戻ってよろしい」
「失礼いたします」
敬礼し、連隊長室を出る。首をかしげながら下の部屋に戻った。
「…そんなわけで、ユラーセク先生の件は中佐の預かりになった」
中隊本部でのミーティングで、イアンはそう言って話を締めた。一日一度行われる、全員参加のルーチンだ。
「連隊長には、何か考えがあるんでしょうか」
ラティーカが口を開く。残念なようなホッとしたような表情だ。なにやら複雑なファン心理の葛藤があるらしい。
「面識があるとか?」
「そんな風でもなかったが…まあ、底の知れない人だからな。ヒネクへの支払いの時みたいに、まだまだ魔法のタネはあるのかもしれんよ」
「ほんと、何者なんでしょうね」
ダリミルがしみじみと言い、全員がうなずいた時だった。
「…初めてお会いした時から感じていたんですが」
ヤーヒムが唐突に口を開いた。全員の視線が彼に集まる。
「私が二十一師団の経理にいた頃、二、三度顔を見た人物がいましてね。私服で、当たり前のような顔で師団司令部に上がりこんできて、何事かと思ったんですが」
怪談でも聞くような顔で、全員がじっと聞き入っている。
「ところが、出迎えた師団参謀が、その男を下へも置かぬ扱いをするんです。すぐ奥に通されて、小一時間で帰っていきましたが…私も気になりましてね、先任に、あれは何者ですかと聞いたんですよ」
ヤーヒムがわずかに身を乗り出し、声のトーンを落とした。
「そしたら、こう答えるんです。詮索するな、ありゃ諜報部だ、と」
イアンが苦い顔になり、若者たちが目を輝かせた。
「どうも連隊長殿は、その男に似てるような気がするんです。顔がじゃなく、雰囲気みたいなものが」
「諜報部って、じゃあ」
息を詰めて聞いていたハヴェルが、我慢できずに声を上げた。
「連隊長はスパイって事ですか?」
「諜報部イコールスパイってわけじゃないぞ」
イアンが横から口を挟む。
「やってることはともかく、基本的には事務職だよ、あれは。私服で拳銃を隠し持つようなのはごく一部だ」
「やっぱりスパイじゃないですか」
「どうせ王国や西方のエスピオナージュのイメージで話してるだろう」
図星を突かれたらしいハヴェルが黙り込む。隣のミロウシュが笑いながら肩を小突いた。
「え、つまり連隊長は、諜報部から図書館連隊に異動してきたって事ですか?」
ダリミルが疑問を口にする。
「なんのために?」
「あの腕の事じゃないかね。何かしらの事情で失って、一線から退いたとか」
そう言ってイアンは腕を組む。
「しかしまあ、諜報部の出だとすりゃ、魔法のタネも見えてくるな。いろんな所の弱みを握ってるんだろう」
「おお、こわい」
黙って聞いていたミルシュカが、大げさに身を震わせてみせた。
「ユラーセク先生の件、連隊長さんの預かりになったって言いましたけど、手荒なことをされたりしないでしょうね」
「さすがにそれは無いでしょう」
心配そうに言うミルシュカに、イアンは笑いかける。
「尋問だの拷問だのが出てくるような話じゃないですよ。それにまあ、格好をつけるわけじゃないですが、そういう事をする連中と戦うのが今回の戦争でもあるわけです。少なくとも、建前上はね」
「帝国じゃ、焚書絡みで何百人も逮捕されてるらしいですね」
ダリミルが暗然とした表情で言った。
「戦争しながら、ご苦労なことさ。帝国国家保安本部ってのは、暇人の集まりかね」
口調に皮肉を増しながら、イアンは続ける。
「ま、連中が非道な事をやるほど、共和国での反感も強まる。俺達の仕事もやりやすくなるってもんさ」
「皮肉の癖は、すこし改められたほうがよろしいですね、大尉さん?」
ミルシュカがじろりと睨む。イアンは咳払いをして、椅子に座り直した。
「えー、まあ、ともかくだ。俺とラティーカは来週からアヴォネクだから、そのつもりで。臨時の指揮はヤーヒムさん、よろしくおねがいします」
「了解しました」
ヤーヒムが背筋を伸ばして答える。
「印刷所が動き始めれば、俺たちの仕事もいよいよモノになる。楽しみにしててくれ」
隊員たちを見回して、イアンはにやりと片頬を釣り上げた。
「少なくとも、帝国の爆撃機がアヴォネクに飛んでくる前には刷り上がるだろ…今日はこのあたりで切り上げよう。じゃ、解散!」
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