第11話 山岳の向こうの者達

ある帝国の皇帝が来る前に情報を入手していた天然の要塞に囲まれた国があった。


 一つは魔王領と呼ばれた異種族達の領域、そして皇帝が向かっているのは【ドラゴニア】と呼ばれる国である。


 強靭な肉体と優れた魔力素養を持った人ならざる民族、人間の見なりに似ているが口からは『ドラゴ吐息ブレス』を吐き背中の翼で羽ばたき翼竜や魔獣を主食とする国民全員戦闘種族である。


 魔王領とも親交があり、特産品は鉱石による鍛治と彫金による装飾品であり、それの全てが『マジックアイテム』である。


 ティティが名前を聞けば遠い目をして言うだろう、『最強の戦闘種族』と、ガチガチの装備をして挑んでも勝てない最強の矛、ゲームではその国に入るには王を倒さなくては入れない決まりだったのだ。


 Lv300カンストでスキルLv300まで高め、装備品まで課金制で固めた魔王すら完全敗北し、入らなかった国 世界最強の一角すら勝てない国


 神代からの伝説、神すら「頭おかしい」と言われた公式チートの山岳の支配者


 因み、ティティも好奇心で挑み十秒持たないのが【ドラゴニア】の王、龍王である。


 彼だけが他の『龍王』達から龍王を名乗って良いと言われている完全なる『理の外の怪物』である。 これを使った運営はこう述べた。


 『だって君達、倒し方乗せるんだもん、なら君達の倒せない怪物あこがれを使った方が面白いじゃん』


 正にそうだったのだ、アンチはかなりいたのだが、頭のおかしい世界最強さん達はこぞって挑み、HPの何割削ったとスクショを載せ合い合戦でマウントしあい、運営に「イカれてやがる」と言われた変態達だ、そして、逆に運営にもっと強くしろと催促し、運営が叶えた結果。


 世界戦争の時には【ドラゴニア】から出て来た『怪物あこがれ』が人間種族を殆ど滅ぼし、『異種族の守護者』とプレイヤー達のチャットの喝采を浴びたAIなのだが、この世界でも、その猛威を振るったようで、神々の戦いで、神々をマウントポジションにて泣くまで殴りタコ殴りにして「オレのシマに近づくな」と言って他の神代の龍王達も絶対に近づきたく無い魔境になったのだ。


そんな場所に一匹の幼い龍王が近づき、龍王の国の近くに許可得てダンジョンを使ったのだ、それが【ドラゴニアの鉱床】と呼ばれる庇護した龍王の寝床である。


それ故に、【ドラゴニア】は豊かなのだ、ダンジョンから食料と鉱石が取れ、崇める龍王が治める国が弱い訳が無く、龍王の娘から国民の子供すら戦う戦闘種族国家なのである。


そんな【ドラゴニア】に一匹の鳥が飛び山を城とした建物へ吸い込まれる様に入る。

 そしてとある女性が鳥を腕に止まらせ、その足に括り付けられてた紙を取り、鳥を腕から放ち、紙を読む女性。


 「ふむ、あの阿呆、居場所を突き止めたと、そして妾を仲介人にしたいのが透けて見えるわ、今頃発狂しながら妾達の国へ向かってるのだろう? 良い良い、楽しくなってきたぞ、父上に言って妾が行くとするかな」

 

 口から小さな吐息が迸り小さく笑う女性


 「これで邪魔者もいなくなったのだ争奪戦といこうではないか! ハッハッハッ! 父上も喜ぶぞ!」


 女性には珍しくランランスキップと言った、側から見ればスキップに見えないスキップをする女性を見て場内の者達は微笑ましく見る。


そして、執務室に辿り着くと、勢い良く扉を開きバキンッ!と音立てて扉が壊れる。


それを見た部屋の主が悲しそうに扉を見てから時空魔法を掛け扉単体の時間を巻き戻し元に戻す、そしてため息を吐く。


 だが女性は気にしない


 「父上! 弟は出来たか! 妾は出掛けたい! 婿を捕まえに行きたい!」


 女性は何も考える事をやめて思った事を言う


 「母上と毎日マッスルからのバトルをしてるのだろう? なら弟出来ただろう? 妾は前に唾つけた雄を捕まえて来るが良いか?」


 部屋の主はそんな娘を見て深いため息を吐き言う。


 「最愛の娘よ、まだ妻は身籠って無いぞ、それに、雄を捕まえに、なんだって?」


 言葉を理解したのかやっと部屋の主たる男性が執務机から顔を上げ吃驚し顔を見せる。


 「えっ、雄? 儂より強いのか? 儂許さんよ?」


ちょっと面倒臭い父親になる父親を見ても女性は変わらない


 「なに、ある森の『守護者』になった者だ! 父上が好きな果物の特産地だぞ! そうなれば、毎月果実を食べ放題果実酒作りたい放題だぞ! 娘一匹が身籠って孫を産めばじいじだぞ!」


女性が身振り手振りをする度に豊満な山脈は揺れるが女性も気にしないが普段嗜める男性もそれどころでは無い


 「儂がじいじになろうがなかろうが! 儂は娘が離れて暮らす位ならこの国に攫って来るぞ!」


 口から文字通りの気炎を吐き、荒ぶる


 「父上の阿呆! 生き物全滅するわ! それに妾の元パーティーじゃ! 妾が認めた雄なのだ! 道具も色々な技術に発想もする、我々の技術の向上も出来るかも知らないのだ!」


 娘の紅潮した表情を見て男性は悟る


 (あぁ、娘は恋していたのか、ならば仕方ない)


 部屋の主たる男性はため息を吐いて、悟りを開いた顔で言う。


 「儂の元を離れて生活出来るのなら行くと良い、孫は最低でも、三人欲しいな」


 最後にジョークを飛ばすが自分にも刺さるブラックジョークだったのだが、娘の方はそうではなく、祝福を受けた表情をした。


 「必ず空間魔法を伝授されてきます! そして子供は十三人産みますね!」


 そう言って女性はまた扉を破壊してから振り返る


 「あぁ、父上、人間の皇帝が来るけど事情を聞いたら森まで護衛つけて上げてね、友達だから」


 そう言って今度こそ、女性は自分の部屋へと帰って行った。

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その運び屋《ポーター》万能だった。 Sinomori @Sinomore

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