第3話 娘の名付け

【絶死の魔森】


ゲームでは最終エリアをクリアした後のエンドコンテンツとして解放されるステージだった。


 ゲームと言ったがタイトル名は【冒険者の世界〜自由な世界で増えよ〜】と言うオンラインゲームで数多くのステージにキャラメイクがリアルに作り込め、スキルと呼ばれる能力を最初に三個まで選び熟練度や師弟になることで追加でスキルを得られる事でキャラの底上げなどが出来たり、NPCと呼ばれるキャラ達と仲良くなる事で子供が出来たり、子供に親の能力継承が出来、ドラゴンすら単独で倒せると言われる、そんな物凄く作り込まれたオンラインゲームがあったのだが、平成末期から年号が変わった事により、規制が厳しくなり、その追い討ちをモロに喰らい40年続いたオンラインユーザーが愛したゲームが【冒険者の世界】である。 そして、隠し要素として魔獣達とも子供を作れ、魔王軍を作り、数多くのユーザーを殺したユーザーが居た。


 そしてその魔獣達と子供を作れる最大のマップが【絶死の魔森】である、絶対死ぬまで逃がさない魔境の森とブログで書かれる程、人間を殺害せしめる最強の森であり数多くのユーザーを誘引したダンジョンもある絶対人間殺す森。


 そう、この私、ポーターと呼ばれる職業の父の娘「名無し」五歳がいる現在地になる。

 そして、私は転生者である。


 そんな私の名前を付ける為に森に住む住人達が【聖樹】に集まってひしめいている。


 私に集まる視線は好奇、嫌悪、憎悪、侮蔑、憐憫、愛情と様々だ、此方が元気に怖くないと伝える為に笑顔で手を振れば、住人達はニコニコと手を振り替えしてくれる、とても優しい性格で律儀とも言える。


そして私の横にはエメラルドの宝石を粉末にした様な、サマーグリーンの髪に黒い帯の目隠しをした卵型の整った小顔に、反則だろ!と叫びたくなる様な西瓜の様な胸部にくびれた腰のラインから安産型のお尻にムチムチですねと言いたくなる脚、そんな全体を包む修道服を身に付けた卑猥物な【聖樹】様が私の横に居た。

 【聖樹】様は私を見て穏やかに微笑むだけで落ち着くオーラみたいなのを発している、そしてとても甘く優しい香りがする。


 ここで見た光景が故郷であり、父、母、姉より早く死んだ私の前に居るこの森の住人達が私の家族であると認識した。


 左の後ろに居る義父を見ると四年前のあの怒りに歪んだ笑みから私を見る瞳と笑みに優しさが籠って居るのが途轍もなく嬉しく思う。


 そして私が前を向くと義父が皆んなに向かって話す


「先ず、森の皆んなに、集まってくれた事に感謝します。」


 義父が頭下げ、私も頭を下げる


 頭の上から拍手や口笛、硬いモノを打ち付けた音が響く


「今日、僕の娘は五歳を無事に迎えました、ありがとう」


 義父の「僕の娘」で思わず反応してしまいそうになる、「私は貴方の娘ではないの」と泣きそうになる。


 必死に抑え呑み込むそして、目一杯笑う


「娘が熱を出した時には小鬼さん達が獣人達の薬草を分けてくれたり、ハーピィさん達が三日に一回は構ってくれたり、アラクネさん達には服を作ってくれたりと皆さんへの感情が絶えません」


 そうだ、庭で座ってたらゴブリンさん達が果物をくれたり、アラクネさん達は衣服や寝具などを用意してくれた、皆んな口々に「人間は嫌い」と言っていたがそれでも優しくしてくれた。


「僕とミリムにこの子を受け入れてくれてありがとう」


 義父はそう言って言葉を締めた。


 義父はミリムになら色々と、ポツポツと喋る。 【絶死の魔森】の仲介役としての村が王国の貴族が森の資源をもっと採取しろとせっつき、村が拒否したら私設軍で持って村を燃やしたとか、その村人達が森に逃げ込み違う領地でこの森との仲介役をしているとかを噛んで飲み込む様にゆっくりミリムに話しているのを眠りそうになりながら聞いてたのを覚えている。


 そんな私達を住まわせてくれている森の住人達にただただ感謝しか無い。


 「はいはい、それで〜はこの子【森の巫女】の名付けに移りたいと思いま〜す」


 【聖樹】様がそんな空気をぶった斬り私の手に林檎を木の蔓で握らせた。


「で〜は、この子をティティと名付けたいと思いま〜す! はい! 拍手〜」

 

 【聖樹】様がそう宣言しただけで全員が沸き立ち種族語で祝福してくれる。


 種族語と言えば人間語と種族語がある、人間語は共通語とも呼ばれる様だが、彼らとも話したいなら種族語と言う多少訛った言語を喋ると大体は武器を下げて話しかけたくれる。


 そんな、皆んなの言葉を翻訳すると


『これでこの森の一員だ!』

『おめでとう!ティティ!』

『手を振ってくれ〜!』

『よろしく〜!』

『家族が増えた〜!』


とても喜んでくれている、それが嬉しくて両手一杯で手を振り、応えた。

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