第6話

「えーっと…合宿メンバーは準備出来てるわよね?そしたらさっさと下に停めてある車に乗って。ほら?!ボサっとしない!あれ?音羽は?!音羽はどこ?!」

三山が矢継ぎ早に出発を急かしているが音羽が見当たらない

「…チッ…どこ行ったんだ…」

「三山さんごめんなさい!支度に手間取っちゃって…」

申し訳無さそうに乙葉が奥の部屋から出てきた

「あんたどこにいたの!まさか…合宿行かないとか言わないでしょうね?!」

「まさか、そんな事ないです、少しお腹が痛くて…薬を飲んできました」

「あんた?そのネックレスは何?着けていくの?」

「これですか?せっかく合宿に行くんだからお気に入りの物を着けようと思って」

そういい脇に松田からもらったバックも持っていた

「……あっそ…じゃあさっさと下の車に乗ってなさい!私も後から行くから」

「わかりました、車に乗って待ってます」

そう言い広瀬は1階に向かった

誰も居なくなったことを確認して三山がスマホを操作し電話した


「もしもし、三山です。準備ができたのでこれから布旗飛行場に向かいます…はい…はい…大丈夫です、4人ちゃんといます、それでは後ほど……しかしまぁ沖縄や福岡に行かなくていいのは楽ね。これからこれが使えるならいいわぁ〜…さて私も行かないと」

そう言い身支度をして三山も車へ向かった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あーもしもし?松田か?俺だ小宮だ、準備ができたぞそ、これから布旗飛行場に向かう。そっちの準備はできてんだろうな?……あぁ…あぁ…こっちのメンツは揃ってるわ。外交官はどうなってるんだ?…あぁ…あぁ…わかった、話はついてんだな?てめぇ向こうで下手な小細工したらどうなるか分かってるだろうな?…じゃまた向こうでな」

タバコを吸いながら小宮は笑った

「この手が毎回使えるならいいな、やっぱり楽だ、さっさと国外に出せるのはデカい、松田って奴もなかなか使えるな。使えるうちは使ってやるかぁ〜アッハッハ……あぁ私だ、車を頼む」

そういい内線で部下に指示出した


ーーーーーーーーーーーーーーーー

「社長?広瀬さんの発信機が動きました」

名城がそう報告すると同時に松田のスマホが鳴った

「了解椿ちゃん、そのまま見張っててね、はいはいもしもし…こっちでも把握してるよ〜…そのまま気づかれないように尾行お願いね?多分行先は布旗飛行場だよ…ほーい、じゃあ現地でねー」

「社長、小宮も移動するみたいです」

弟村がヘッドホン片手に伝えてきた

「弟村、盗聴はもういいよ、ありがとうね。そしたらウチらもこのまま布旗飛行場行きますか〜」

「わかりました、社長運転代わります」

弟村が後部ドアを開けて運転席へ回り

「社長運転お疲れ様でした、ありがとうございます。」

「本当だよ、もう少し感謝した方がいいんじゃない?」

気だるそうに松田が運転席から降りた

「ほら行きますよ?置いていきましょうか?」

弟村は聞いちゃいない

「もー…わかったわかった、その前に寄って欲しい所あるからお願いね」

「何処へです?時間はありませんよ?」

「大丈夫大丈夫すぐ近くだから、ここね」

「…ん?ここは!まさか?!」

「お?さすが弟村、よく知ってたね、この人拾ってから行くから」

「わかりました、あの…この車で良いんですか?」

弟村が場の悪い感じて尋ねた

「仕方ないじゃん、今これしかないんだから、文句言ってきたら謝ろう…」

「社長?台湾の外交官役や見張りの人って誰なんです?」

名城がPCを見ながら怪訝そうに話しかけてきた

「今にわかるって…外交官役は買って出てくれたくれたけど見張り役は高くついたなぁ」

「珍しいですね、社長が「高い」なんて仰るの」

「ここに任せればまず間違いない人達だからね、でも2、3日でこれだと流石になぁ〜」

そういいながら名城にスマホの電卓を見せた

「えぇぇぇ!こんなに?!一体何方に頼んだ…あ!」

「名城さんやっとわかりましたか?」

「弟村さんはご存知だったのですか?」

「電話聞いててピンときましたよ」

「お?バレちゃったか〜つまんないの〜とりあえず外交官役に電話しておかないとね…」

そういいスマホの画面を通話に変えた

「もしもーし!松田でーす!連中がそっちに向かい出したよ〜…うん…うっさん臭い感じでよろしくお願いしますね!」

「今日でこの事は終わりますか…?」

「この事は終わるけど…きっとこんな事は氷山の一角だよ…さすがに全部は無理」

松田は車の窓に目をやりながら続けた

「日本って比較的他の国より平和だよ、それは立派、でも弱者がターゲットにされるってことはどこの国も変わらない、紛争地域だろうが先進国だろうが…」

「なんか…どうにかできないんですかね」

弟村はハンドルを握りながら疑問を呈した

「無理だね、昔の人が言ってたよ「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」てね、盗人じゃなくても悪さする人間は手を変え品を変え悪さするさ…法を変えてもね、特に日本は甘いよ、悪さする連中に」

「たしかに社長の仰る通り少々ぬるい気がします、だからあの時警察にリークしなかったのですか?」

名城も賛同

「それもあるけどね、あの段階だとあれだけでは動かない、それによしんば逮捕させても小宮や三山は確固たる証拠があっても弁護士使って公判の引き伸ばしや控訴して無駄あがきをするさ、だったら目には目を歯には歯をだ、こんな甘っちょろい法で奴らを野放しにする気は毛頭ない、こんな日本というぬるま湯で悪さしてる奴らに分からせてやるよ…もっと怖いのがいることをね」

その語尾には明らかに怒りがこもっていた

「社長…?大丈夫ですか?」

名城が不安に思い松田に聞いたが松田がハッとしたのか直ぐに元に戻った

「ん?大丈夫だよ〜僕は平気さ!さ!奴らをギャフンと言わせようぜ!弟村行けー!」


松田達を載せた車は車列に消えていった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〜布旗飛行場〜

ここは東京の郊外から離れた所でセスナや国内でプライベートジェットを所持している人が飛行機を保管したりしている所でそう遠くない離島に行く人や離れた県に行く人達が使う飛行場でセスナの免許の試験にも使われる飛行場だ


先に来たのは4台くらいの車列できた小宮達だった

飛行場に併設されたこじんまりひた建物に車をつけ、先に3台に乗っていた護衛達が降りその後小宮達が降りた

「なんだ?こんな所から行けんのかよ、ったく…」

そう言うと向かいから丸メガネのサングラスを掛けたソフトモヒカンチックな男が小宮に近づいてきた

「あノぅ…カプスエンタープライズの小宮さンデスか?」

「…なんだお前?」

小宮は相手を下から上までジロジロ見ながら答えた

「あぁ、私ハ松田サンからのショウ介で今回見届ケる荷 軍「カ グン」デス、よろシくお願イします。」

そういい名刺を出した

日本語は話せるが独特のイントネーションだ

「おぉ、貴方か!これはこれは…失礼しました!初めまして、小宮です、今日はよろしくお願い致しますね!早速ですが荷物のチェックとかはどうなるんです?」

「小宮サーん、ワタシ外交官でスよ?国家の機密に関ワル事は日本の政府すら感知デキナイので心配いらナーイでス、それにワタシ荷物何カ知らナい方がいいでシょ?」

「ハイハイハイ!そうです!荷さんは何も知らんでいいのですよ!お礼はたっぷり弾みますから!」

小宮は上機嫌だ

「おー!オ金?お金イイネー!期待シてルよ!アッハッハッ」

小宮のスマホが鳴った

「もしもし、おー!三山さんか?着いたかー!ちょっと待ってくれ」

手を抑えながら外交官の荷に問いかけた

「荷さん?向こうの車どう入れたらいいんです?」

「おー、私の車で先導シますから着いテ来てくダさい、今取っテキますカら」

そう言うと荷は車を取りにいった

「三山?今先導する車が来るから待ってろ、中の女達は大人しくしてるか?…そうかそうか…これからどうなるかも知らんのは気の毒だなぁ」

そういうと1台のドイツ製の車が小宮の車列の横につけてクラクションを鳴らした

「おい!お前ら車乗って着いてけ!」

荷の車の後に車列続き飛行場入口まで戻ると白いワンボックスカーが停まっていて窓を開けたのは三山だった

「小宮さーん、三山です、そちらについて行けばいいですか?」

「おー三山さん、俺の車についてきてくれや」

荷のクルマ、小宮の車列、三山の車と連なって空港裏手の通用門までくると警備に荷がパスか何かを見せると門が開いた

そのまま車列は格納庫へ

荷が車から降りて小宮の車に手を振りながら言った

「小宮サーん、この飛行機ヨー」

車列からボディガードらしき人間が降りて小宮が後に続き飛行機を見ながら

「こんな小せぇ飛行機で行けるのかよ? 」

と納得いってない様子で荷に言った

「大丈ーブ!こんなの向こうデはアタリ前だよ」

荷はニヤニヤしながら答えた

「ワたし、何もミテない、いいネ?」

「わかったわかった、あんた離れていいよ、よし、三山さん彼女らを降ろして書類にサインをしてもらおう」

「わかりました、ほらみんな降りて」

三山の指示で運転手以外の中間、上原、田原、広瀬が降りてきた

「やぁみんな、私は小宮、合宿前に君たちに書いてもらいた…」

「この!嘘つき野郎が!」

小宮が言い終わる前に広瀬が持っていたカバンから小型のナイフを出して小宮に切りかかったが小宮には躱されたが倒れ込んだ

「みんな!騙されんな!三山とこいつらはアタシ達を海外に売るつもりだ!てめぇ!楓ちゃんもこうやって騙したのか!このクソオヤジ!」

「え?どういう事?」「なになに?!」

広瀬以外は何の事か状況が分かっていない

服を払いながら小宮が起き上がった

「君は何を言ってるんだ?売るなんてする訳ないだろう?」

「うるせぇ!楓ちゃんを返せ!返せよ!クソが!」

「楓?…あぁ!あの背の高い娘か?あの子は台湾で…」

「嘘つき野郎が!てめぇの会社を辞めてるじゃねぇか!」

「音羽!何やってるの!そんなもん…」

「うるせぇぞ!この嘘つき女め!何が買われないだ!全部知ってて楓ちゃんを外国に渡したんだろ!どいつもこいつも…」

とその時広瀬は後ろから小宮の護衛に捕まえられた

「クソ!離せよ!このクソが!離せ!離せよー!」

バチン!

小宮が広瀬の顔を叩いた

「威勢がいい小娘だな、おい三山!てめぇの躾がなってねぇぞ!」

「すみません…」

「まぁいい、おい!」

小宮の合図で他の3人も羽交い締めされた

「ちょっと!離してよ!」「やだー!助けて!」「誰かーーー!嫌ーーー!」

「暴れな暴れるな、ここから逃げられっこない、もうお前らは買い手が決まってるんだ…無駄だよ、どんだけ泣き喚いてもなぁ…気が強いお前らでもいつまでそれが続くかなぁ?」

広瀬が食ってかかった

「あたし達が居なくなったら絶対誰かが探してくれる!お前らは捕まるんだ!絶対!絶対お前ら…」

「アッハッハッハッハッ!親から見捨てられ社会からも見放されたお前ら小娘が居なくなって誰が困るんだ?実際に楓?だって居なくなったって親は探さなかったろう?所詮お前らなんてそんなもんなんだよ、お前らは。親から離れて一丁前の口を効いていい気になって…大人でもねぇのに…まぁこうなったのも仕方ねぇな?甘い言葉にホイホイ着いてくるお前らがアホなんだ」

小宮はドヤ顔で反応した

「フン、行き場のないあんたらなんかこれしか社会の役に立つことないでしょう?逆に私達に感謝して欲しいくらいだわ、親元から出てきて行くあてもないあんたらに場所を提供したんだし」

「てめぇら!!」

「この世は利用するか利用されるかそれが世の仕組み、それを知らなかったお前らは頭が浅いんだよ、仕方ねぇよな?」

「まぁ小宮さん…その辺にしましょう、もう」

「そうだな、あ!楓だったか?あの背の高い娘は気が強くて美人だったから高く売れたぞぅ?お前らは知らんだろうが日本人の若い女というのは高く売れるんだよ」

「てめぇーーー!殺してやる!ぶっ殺してやる!」

「やってみるといい?どうやるだ?ほれほれ?アッハッハッハッハ、お前らみたいなゴミみてぇな奴ら吠えるな。だいたい仕方ねぇんだよ、親に捨てられたお前らを使ってやってるんだぞ?俺達は?」

「誰かー!きてー!助けてよ!」

「ほら、都合が悪くなると誰かが助けてくれると思ってる、世の中そんなに甘くねぇんだ、社会から逃げて親からも逃げた、親と上手くかないから「仕方ない」学校がつまらないから「仕方ないよね」キツい仕事なんてしたくない、楽に稼ぎたいだから「仕方ない」一体何が仕方ないんだ?お前らは?親がいるから、社会があるから存在できてるんだよ!お前らみてぇなガキは!ガキの癖に大人ぶるからツケが回ってきたんだわな、それもまた仕方な…」


「バァン!」


荷がライトで小宮達を照らした


「なんだ!荷さん?何を…」


「アッハッハッハッハッ!君のご高説素晴らしいね!」


「ん?誰だ?!」「誰?!」

小宮と三山が声のする方を向いた


「音羽ちゃーーーん!元気ー?やぁ小宮社長に三山さん、ピースカンパニーの松田でーす!」

「チャラ男!……今更何しに?!」

「松田!お前!何しにきやがった!」

「女のコ達の助けを求める声に!僕は山を!海を超えて参上!乙葉ちゃん、迎えにきたよ!何危ないことしてんのさ!」

「だってこれしか…仕方な…」

「何寝ぼけた事言ってんだ!てめぇは!」

「あんた…こんな所まで…出ていきなさい!」

「うるさい!お前ら黙ってろ!僕は乙葉ちゃんと話してる、乙葉ちゃん?仕方ないとか言うな!本音を僕にぶつけろ!どうして欲しいの?!」

「…松田さん…助けて…」

「よーーーし!わかったぁ!」

「いつまでてめぇは茶番やってんだ!ゴルァ!」

「おぉーこわぁ〜」

「おい!お前ら!こいつを黙らせろ!」

小宮の命令で護衛の4人が一斉に飛びかかろうとした

「お?前も言ったけどやめた方が…」

松田が喋り終わる前に特殊警棒を持った名城が目にも止まらぬ速さと骨が折れる音を響かせ4人をあっという間に戦闘不能にしてしまった

小宮と他の護衛、三山は何が起きた分かってないようだ

「何が起きた…?!」

「だから言ったでしょう?やめろって、ウチのメイドの椿ちゃんは最強だから…それにね」

弟村が和服を着た高齢の男性を載せた車椅子を押して出てきた

「小宮よ…お前一体何をしとるんだ?」

「え?オヤジ?」

「誰よ!このジジイは!」

「うるせぇ!誰に物言ってんだ!この方は高川組組長、高川さんだ!」

「ぇぇぇぇええ?」

「ここにいる松田さんから全部聞いたぞ、お前ら…一体何をしとるんだ?こんな年端もいかない若い子達を海外になんて…高川組の看板に泥を塗る気か!お前!」

まさかの組長の登場に小宮も三山もタジタジだ

「いやいや、オヤジ!なんでこんな用立て屋と…」

「バカかお前は!お前も裏の世界にいてこの人しらんのか!この松田さんはなぁただの用立て屋なんかじゃない!世界を渡り歩くピースカンパニーの社長、松田 啓介さんだ!日本の極道にだって顔が効くぞ、それにな?ワシは松田さんに感謝してもしきれない恩がある」

「恩?」

「ワシの孫はな?日本じゃ治療が難しい難病じゃった…ワシが諦めた時に海外の医者を紹介してくれたんじゃ!そのおかげでワシの孫は元気しとる、紹介の約束として子供が辛い目に合うシノギは辞めると約束したんじゃ!なのにお前は!お前なんぞ破門…いや!絶縁じゃ!承知せんぞ!このクズ!それと女!お前も…」

「クソ!この耄碌ジジィめ!丁度いい、てめぇも殺ってやるよ!おい!こいつら全員片付けちまえ!」

小宮の号令で残った護衛が銃を松田達に向けた瞬間


ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!


上から小宮達の足元へ銃撃がされた


「なんなんだ!どうなってる!」


「いやー松田社長、なかなか外交官役楽しかったですよ!」

「佐原さーーんいい感じでしたよ〜ナイスナイス!」

ニセの外交官は佐原だった、佐原の周りには数名のWCS隊員

格納庫1階にもWCS隊員が武器を構えていた

「くれぐれも汚したらダメだよ?君たち」

佐原が窘めた

「了解!お前ら!5秒以内に銃を捨てろ!」

「さぁどうする?このまま続ける?言っとくけどここのPMC半端じゃなく強いよ?世界最強の傭兵だからね」

小宮の護衛達は銃を捨て

「クソ!クソクソクソクソ!」

小宮は崩れ落ちた

「……脅されてた…小宮に私は脅されてたの!そう!脅されてたのよ!仕方なったの!」

三山が急に喋りだした

「三山さんさー?脅されてたから仕方なかった?本音はもっと奥にあるでしょう?仕方ないの奥にあるのは「儲けたい」でしょ?」

「私が脅されてなかったって証拠あるの?!」

「三山!てめぇ!」

小宮も吠えた

「たしかに証拠はないよ、でもね?こういう世界に証拠は要らないんだよ、ねー?高川さん?」

「そうじゃ、女!お前もこのままでは済まんぞ!」

「まぁ証拠はなくても…小宮の会社から君のライズに不明確の結構な額が流れてる、これはどう言うこと?」

「それは…」

「説明できないの?それじゃあ仕方ないよねぇあ!君たちの大好きな言葉「仕方ない」だね、はーい!椿ちゃん、弟村、それにWCSさん達こいつらにタイラップ巻いて動けないように拘束して」

WCSと名城、弟村が拘束してる時に1人逃げ出そうしたが名城が足めがけてナイフを投げた

クチャっ


「ぎゃーーー!」


「ったく、逃げれると思ったのかな?馬鹿だねぇ、このままこいつら高川さんと佐原さんに身柄を預けていい?」

「もちろんじゃ…」

「こんな連中使いもんにならないんですけどねぇ」

「俺たち…小宮に命令されて…やさられたんだ!だから…どうか…どうか…」

護衛が泣きついてきた

「ん?やらされてんだぁ〜ふーん、あっそ」

松田は全く興味を持たない

「おい…あんた!ちゃんと聞いてくれよ…頼むよ」

「じゃあ聞くけど…楓ちゃんや他の子達がやめてって言った声を君たち聞いたの?聞かなかったよね?それにいつでもその気になれば告発できたよね?高川さんでも。て事はさ?仕方ないんじゃなくて分かっていたけど止められなかったってのが本音だよ、それは随分と都合のいい言い分だと思うね、椿ちゃん、女の子達を保護してあげて」

「承知しました、もう大丈夫ですよ、……こちらに…」

名城が三山以外の女達をその場から少し遠ざけた

「なんであの娘たちだけ!ちょっと!…」

「ん?君女の「子」ではないでしょ?それになんで君を保護しなきゃならないの?ギャグでも笑えないよ」

「だったら自首するから…このまま自首させて…」

「てめぇだって日の目を浴びれねぇような事してるじゃねぇか…あぁん?どうなんだよ?!偉そうな事言える立場か?!」

小宮が噛み付いた

「ん?僕は自分で売った物で殺される覚悟をとっくに持ってるよ、自分が正しい事をしてるとも思ってないし仕方ないとも思ってない、君らと一緒にしないでよ」

「自首するから…自首させて下さい!お願いします!」

三山が言った

「何言ってるの?警察なんか当てにするの?そもそもこんな事しといてまともな司法の裁きを受けられると思った?おめでたいね?君らは行くあてのない子達をどこの誰かわからん連中に売ったんだ、その子達の恐怖は想像を絶するだろう…今どうなってるかもわかんない。目には目を歯には歯をだよ、自分らが一番強いと勘違いしてたけどそれ以上の暴力を行使される事を想像してなかったでしょ?それにこんなとんでもないことしてきたんだ、平和で温い日本で楽になれると思うなよ…クズ共…あ!そうそう、君らは僕が感知してる間は「殺すな」と言ってあるからその間だけは命の保証だけはしてあげるよ」

そう言うと松田が小宮達に近づいて耳打ちした

「…ここで殺された方が楽だったって思って貰えるように頼んであるから…残りの余生楽しんでね…」

小宮のスボンがみるみる濡れていった

「お…俺達を…どうするつも…?」

「さぁね?世の中には変わった趣味を持ってる方々が大勢いるからねぇ、僕が見たのは薬でで首から下の感覚を消して好き放題やられてる人とか…手足を切られて歯も抜かれて全身真っ青に刺青されてペットゲージに入れられてるとか…まぁ色々だよ、運良く佐原さんの部隊入れたら五体満足でいられるかもね、まぁとんでもない戦地や訓練、使い捨てられると思うけど…よく分かんないや。はい!お喋りはここまで!早く連れてって〜」

「そんな!」「待ってくれ!」「助けて!」…

様々な命乞いの言葉を言いながらWCSの隊員が小宮達を連れてっいった


「高川さん、佐原さんくれぐれも日本国内で殺さないと約束してください、もし彼らが死んだりした事が大っぴらになったら彼女達が自分達のせいでとか自己嫌悪を陥ってしまう、それは避けたい。」

「了解だよ松田さん、でも訓練や派兵先での事故は…?」

「そこは別に僕の感知する所じゃないから大丈夫」

「分かった、あんたの言うことが絶対だからな、とりあえず身柄は預かるよ、それじゃあの」

「はい、佐原さん、高川組長、御足労頂きありがとうございました」

松田は深々とお辞儀をし弟村が車椅子を押していった


「さて…乙葉ちゃんと他のみんなも無事かい?」

広瀬は猛ダッシュで松田に抱きついた

「啓介!ありがとう!怖った…怖かったよぅ…うわぁーーーーん」

「よしよし、もう大丈夫だから」

「ヒッく…でもどうしてアタシの居場所が分かったの?」

「んーーー内緒!楓ちゃんの事は本当にごめん、もっと早く分かっていれば探せたよ…」

泣いた顔を拭きながら広瀬は答えた

「ううん…アタシもあの時言い過ぎた…ごめんなさい」

「気にすることじゃないよ、僕は気にしてない。さっみんなもこんな所に居ないで帰ろう!ね!」

そう言って松田は広瀬を含む女のコ達を肩で抱き寄せ車まで連れていった


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


あの後松田はライズに保護されていた女達を全て親元に返し、ライズの不正な金の流れや顧問弁護士の利益相反等ネットで暴露、もちろん親元に返した女達の名前は検索できないようにして


NPOライズ公金不正利用、行方不明者多数、ライズ支援会社カプスエンタープライズの補助金不正…代表はどちらも行方不明…

連日テレビはその話題でもちきりだった

小宮、三山、小宮の護衛達は佐原と高川に身柄を任せたのでどうなったか真相は薮の中


クライトンベイホテル1638号室


「ねー啓介さん、三山達はどうなったの?」

フレンチトーストを食べながら広瀬が聞いた

「さぁ?僕は知らないし興味もない、乙葉ちゃんが気にする事なんて何もないよ」

トーストにベーコンを挟んた物を食べながら松田が答えた

「うーん…そうだけど」

「ほぅふぁ!ほぉろほぉ…」

「ねー!啓介さん!口に物入れて喋るのいい加減にやめて」

「ゴクン!そろそろ乙葉ちゃんもお家に帰ろう」

「嫌だ!そう言えば私の居場所の件はなんで分かったの?それにあの兵隊さん?はいつからあそこにいたの?」

「乙葉ちゃんと楓ちゃんの家に行く前に見張りをお願いしたのよ。それで半分は先回り、もう半分は乙葉ちゃんが乗った車の後をつけてたんだよ、これが今回1番経費がかかった」

「いくら?いくらかかったの?」

「乙葉ちゃんは知らなくていいよー、話を元に戻すけど乙葉ちゃんもちゃんと帰りなさい」

「アタシここで働く!新入社員って言ってくれたじゃん」

「ダーメ、雇用契約結んでませーん」

「なんで!」

「なんでもだよ」

「いいじゃん!」

「乙葉ちゃんね?帰る家があるってとても幸なことじゃないなんだ…怖いなら僕がついて行ってあげる、ちゃんとお父さん、お母さん話をした方がいいよ」

「…うん…家まで一緒に来てくれる…?」

「もちろんだ」

「わかった…」

「ご飯食べたら帰ろうね、弟村〜車の用意してね〜」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

広瀬の家は品川区だった

「ここがアタシの家」

「素敵な家じゃないか〜」

「怖い…啓介さん一緒に来て…」

「ダーメ」

「なんで?」

「たしかにしんどい時は人に頼ったりしていいけど今みたいな時は自分で踏ん張らないとダメな時だ。見ていてあげるから1人で頑張っておいで」

「うん…絶対見ていてくれる?」

「僕は約束を破らないよ、お父さんやお母さんに開口1発叱られたら僕の所に戻っておいで」

「わかった…啓介さん、名城さん、弟村さん今までまありがとうございました」

「頑張って!」「あまりご無理はしないように」

名城と弟村に挨拶をして車から降り玄関のチャイムが鳴った

しばらくすると母親と思わしき女が出迎え泣きながら玄関先で広瀬を抱きしめた、後から父親と思わしき男が出てきた、母親が一旦離れた後父親が1回広瀬の顔を叩き強く抱き寄せた



「いいねぇ…家族って、さて僕らも行こうか」

「そうですね…参りましょう」

名城が言い終わると弟村は車を発信させた

「あ、椿ちゃん…日本出る前にこれポストに入れておいてくれる」

「かしこまりました」

一通の封筒を松田は渡した



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「乙葉ー起きてるー?ご飯よー?」

母親が階段下から乙葉を呼んだ

「今行くーーー!」

バタバタバタバタバタバタ

「乙葉!階段くらいゆっくり降りなさい!」

食卓にいた父親に朝から小言

「急いでたから許して!この通り!」

「今日は何するんだ?」

「面接だよー!受かるかわかんないけどやるだけやってみるよ!」

「あまり無理しないでね、乙葉」

「うん、大丈夫!色々面接してて嫌な奴多いけどアタシ性格の悪い男は知ってるから!あれ以上はなかなか居ないよ!」

「あ!そうそう、乙葉宛に郵便が来てたわ」

母親が一通の封書を渡した

「ん?誰からだろう?差出人は無いね」

「そうなの、なんか変ね」

「まぁ見てみるよ!あ!こんな時間だ!お母さんご飯ありがとう!行ってきまーーす!」

「気をつけてねーー!今日は遅いのー?」

「面接だけだから終わったら帰るよー」

家から自転車で駅に向かい駐輪場に停めて改札に向かい電車に飛び乗った

幸い座れたみたいで一息

「ふー…そうだ!封筒なんだろう…」

封筒を開けてみたら手紙やら名刺、小さい紙が入っていた

「手紙となんだろう…?」


広瀬は手紙から開いてみた



〜広瀬 乙葉様へ〜

こんにちは、あれから今の暮らしはどうかな?

猛獣みたいに暴れてませんか?

目上の人に噛み付いてませんか?

広瀬さんは信念をきちんと持ってる数少ない立派な女性です

広瀬さんの気持ちをちゃんと理解してくれる人は正直少ないと思います

でもだからといって絶望しないでください、君とは少ししか一緒に居られなかったけど君が素晴らしい人間だって事は僕達3人は分かっています

伝わらなかったから仕方ないと諦めずにどんどん自分の気持ちを相手に伝えていけばきっと君を理解して君の味方になって支えてくれる人がいるから

だからどうかそのままの広瀬さんで居てください

どうしようなくなったらいつでもここに連絡をどうぞ

それでは、いつかまた会える日を楽しみしています



ピースカンパニー代表 松田 啓介


P.S ウチで働きたいならきちんと一般教養くらいと英語ぐらいは学んできてね!

本気で学びたいなら一緒に小切手入ってるからそれ使って勉強するんだぞ!



「ヒック…もぅ…啓介さん…朝から泣かせないでよ…」

一緒に入っていた名刺や小切手の他にパスが入っていた

そのパスには


広瀬 乙葉の顔写真付きの社員証で


ピースカンパニー

ID0003

Otoha Hirose


と記載されていた



ーーーーーーーーー完ーーーーーーーーー


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷宮のタルタロス 乾杯野郎 @km0629

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る