第5話

「小宮はどうでした?」

「餌に食い着いたよ、バカ丸出し、あんなに上手く引っかかるとは思わなかったよ」

帰りの車で弟村と松田が話していた

「ねぇ、この後どうするの?」

「ん?どうしようかねぇ〜ライズには潜れないからなぁ…とりあえず小宮の会社の海外戦略室とライズの名簿を調べるか」

そういいノートPCのキーボードを叩き出した

「合宿名簿をっと…はい出た、これを…小宮の海外戦略室の名簿…あったあった…これらを重ねてっと、やっぱりね。楓ちゃんだけじゃない、ライズの合宿に行った子達はみんなカプスエンタープライズに入社させてちょっとした後退職扱いになってる」

「え?どういう事?!」

「音羽ちゃんこれを見て」

PCの画面を広瀬に見せながら説明した

「いいかい?これがライズの合宿のメンバー、こっちがカプスの海外戦略室の社員、最後の欄に「退職」になっているだろう?」

「あ!ホントだ!どういう事なの?」

「親と上手くいってない子供をライズが保護の名目で預かり生活保護費や何らかの補助金を申請させる、親の同意やらが必要だけど恐らく弁護士の吉野がその辺絡んでるんだろう、ライズのHPを見たけど性虐待やネグレクトの保護も謳ってるから生活保護費じゃなくてもNPOとして金を引っ張ってるんだろうね、でもそれも延々とできない、その為にカプスに就職を斡旋して今度はカプスに援助金を受け取らせるって仕組、それで現地でカプスを自主退職扱いにさせたらあとは知らぬ存ぜぬが言える」

音羽は納得言ってない様子

「なんでやめさせてるの?」

「音羽ちゃん、小宮の会社は企業舎弟と言って表向きは普通の会社を装ってるけど実際は反社会的組織、いわゆるヤクザだ。そんな奴らが日本でも厄介者扱いされてる人間…しかも若い女だけターゲットにして海外に連れ出してる…これはまだ憶測だけど十中八九現地でやってる人身売買だろうね」

「人身売買って…」

「それにさっきの楓ちゃんの母親見たろ?親も面倒見切れない子供が居なくなったって誰も探さないさ、みんな厄介払いできたと思ってるしまさかそんな事になってるとなんて考えないよ、仮に問い詰めてきた親がきたって「会社を辞めてバックパッカーになりました」とか言い訳ついたらそれで納得させられる、それに」

「…え?!じゃあ楓ちゃんは?楓ちゃんはどうなったの?!」

車内が一瞬静寂とした

「…もう足取りは掴めない」

「なんでだよ!松田さんには調べられない事はないんだろ?!」

「あくまでデータに残してある物だけさ、僕が調べられるのは。沖縄から台湾に移動した後の事が全くないんだ、それにひと月も前の事…僕にもできないことはあるんだ、本当にごめん。」

「そんな…楓ちゃんが…そうだ!これを警察に!」

「音羽ちゃん、それは今の段階では無理なんだ。これはハッキングで手に入れた非合法な物、それにこれを突きつけたとして疑惑は持たれても小宮の会社は自分で辞めた人の事は知らないと言い切るよ、それに人身売買の証拠がない」

「じゃあどうしたらいいの!松田さん頭で戦うって言ってたじゃん!」

「僕にだってできないことはあるさ、そもそも僕は正義の味方なんかじゃないんだ」

「今更何なのよ!さっきの楓ちゃんの家で偉そうな事言ってさ!」

「僕のやり方が気に入らないかい?、じゃあ聞くけど君は何かしたかい?音羽ちゃんがした事は僕に話をしただけだ、この件だって僕が違法にハッキングして得た情報、僕は協力をしただけだよ。君が知りたがってた事を調べただけ」

「車停めて!」

「は?」

「いいから停めて!」

「社長…?」

弟村は困惑した

「彼女の意思だ、そこで停めてあげて」

「広瀬さん!ダメ!降りたら!お願い!」

「うるさい!弟村さんも名城さんにもお世話になったけど結局このチャラ男も同じだ!手助けするフリして何もしないんだ!少しでも信用したアタシがバカだったよ!もうお前なんて知らない!死んじまえ!」

そういい残し広瀬は車を降りた

「社長…今のは…」

名城が嫌悪感を出した

「ん?僕何か間違えた事した?」

「確かに社長は間違えていません、でもあんな言い方はないと個人的には思います」

「それは俺も同意見です」

弟村も不機嫌そうに言った

「なんだよもう…僕は事実を言っだけだ、相手が子供だろうが大人だろうが関係ない、短絡的行動をするのも本人だ」

「あんたそれでも社長かよ、あの子を新入社員って言ってたじゃないか!」

「まだ書類作ってないよ」

「そういう事じゃない!あの子を守るって約束どうなったんだ!」

弟村は畳み掛けた

「約束はしたけど彼女が嫌がったら仕方ないよね?それは」

「もういいですよ…」

「てかさ?なんか君達勘違いしてない?」

「社長が冷たいって認識をどう解釈しろと?」

「広瀬さんを見捨てるとは思いませんでした」

名城も弟村と同意見

「あのね?僕が何も手を打ってないと思ってるの?」

「は?」

「ちゃんと音羽ちゃんには発信機を着けさせてる、ネックレスとカバンにね。僕らはライズに潜れない、だけど彼女は違う。それに僕らが音羽ちゃんに頼んだら彼女は協力するだろう?でも僕らがお願いしちゃうと彼女は無理してボロが出る、だから自分から進んで戻るように仕向けた」

「だとしても危険過ぎます!そんな事が分からない貴方ではないでしょう?」

名城は怒りを顕にした

「あ!あの時の電話…まさか!」

弟村は何か気づいた

「六松原の例の建物あるじゃん?あそこ定期賃貸でロイズの三山が借りてるのよ、おそらくあそこが拠点だ、だからバイトを雇って超優秀な見張りを2.3人くらい着けさせてる、動きがあれば直ぐに僕へ連絡がくるしくみになってるし、音羽ちゃんら女の子達が移動させられたら尾行するようにとも言ってあるよ」

「社長…?見張りって何方なんです?」

「今に分かるよ、さて…僕は僕で急いで準備しないとね、椿ちゃん布旗の飛行場抑えてくれる?」

「かしこまりました、日にちはいつにします?」

「うーん…ここ1週間くらいだけど…向こうの言い値で払うから上手く交渉して、お願い!この通り!」

「承知しました、油断はできませんが社長が見捨ててないで良かったです」

「僕が見捨てると思ったの?椿ちゃん?」

「ぶん殴ってやろうと思ってました」

「…俺もボコボコしてやろうかと」

「2人とも勘弁してよ…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


六松原のビル一角で女性の怒鳴った声が響いていた


「音羽!あんたよく戻ってこれたね?!今までまどこにいたの!」

三山はカンカンだ

「…あの社長の所…どうしようも無い奴だったから逃げてきた…三山さん…ごめんなさい…三山さんが正しかったです…」

「フー、分かればいいのよ、分かれば」

三山は電子タバコを吸いながら答えた

「三山さん、アタシも合宿に行きたい」

「どういう風の吹き回し?」

「特にないけど…三山さんやライズに迷惑かけたから何か協力したいです、何でもやります」

「…いい心掛けね、あんたもう少しで誕生日だっけ?合宿のメンバー足りなかったから音羽、あんた合宿行っていいよ」

「三山さんありがとう!アタシなんでもするから!」

「合宿まで音羽、あなたはロイズの勧誘やビラ配り手伝ってね」

「はい!」

音羽は力強く応えた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これを機に俺も高川組でのし上がるさ、こんな美味しい儲け話ねぇよ!アハハ!ん?俺が幹部、いや、若頭になったらお前は若頭補佐として使ってやるよ…おっとキャッチだ、またな兄弟!…はい小宮です、あぁ三山さんか!え?1人増えた?全然いいよ、向こうも喜ぶわ、そうだなー……今手配してるから…準備できたらこっちから連絡する、じゃあな」

小宮はタバコに火をつけた

「フーー…若い女、しかも日本人は金になるからなぁ…」


コンコンコン


「はい、どなたかな?」

ドア越しから女性の声がした

「すみません社長、松田様がご面会を希望されまして…あ!ちょっと!困り…」


バァン!


「いやーーー小宮社長!申し訳ない!急にきちゃって!」

松田が勢いよく入ってきた

「松田ぁ、なんだ!失礼じゃないか!なんだ急に!君はいいよ外して、まぁそこ座れや」

そう言い女子社員を下がらせた

「ありがとう、座らせてもらうね…いやね?偽造頼んだ奴がパクられちゃってね…パスポートが用意できない」

「まだ顔写真も送ってねぇだろ?代わりを探せよ」

「小宮社長…一つご提案なんですか…」

「なんだよ?」

「社長が何にパスポートを使うかは僕には関係ないなけど…僕には台湾の外交官が知り合いにいるよ、外交官通せば外交官特権で出国手続きを簡略化できるそしたら色々面倒が省けない?それにこれは小宮社長に試して貰ってからだけど僕のプライベートジェットで台湾まで行くのはどうかな?」

「お前…何探ってんだ?!」

「探るなんてとんでもない!ただ国内に長く居させらない人間を移すなら早い方がいいかな?と思っただけだよ、お互い探られると面倒でしょ?」

「…お前俺の目的分かってるだろ?」

「僕はそれに興味はないよ、ただ小宮社長と繋がれてる方が僕も旨味にあやかれるかな?と思って提案しただけさ、嫌なら時間掛けてもパスポート用意するよ」

「だからってお前、外交官に口きくんだってタダじゃねぇだろ?誰が払うんだよ?」

「そこは初回サービス、小宮さんには色々無礼な事しちゃったから今回は僕が払うよ」

「…飛行機はどこから飛ばすんだ?」

「布旗飛行場なら移動も面倒じゃないでしょ?」

「わかった…提案を飲もう、でもお前の取り分どうすんだ?」

「初めのパスポート代と空港使用料だけでいいですよ、お詫びも兼ねてだから。それにこのやり方を気に入ってくれたら次から払ってくれればいいよ」

「わかった、手筈はどうなってる」

「小宮社長の準備ができたら僕に連絡して、すぐに飛行機出せるようにしておくから」

「よし、また連絡する、だから今日は帰れ、な?今度来る時は連絡くらいしろ」

「わっかりました!それでは失礼しまーす!」


バタァン!

勢いよく松田が出ていった


「ったくドアくらい静かに閉めてけ」



「あぁもう!なんだよ、この車」

弟村が用意した大きめの古いワンボックスを少し改良したクルマのドアを勢いよく閉めた

「あいつ超ー嫌い!大物振りやがって!なーにが「まぁ座れよ」だ!あんちくしょう!」

「社長お疲れ様です…あ、音声拾えました」

弟村がイヤホンで聞いていた

「あの盗聴器はスグレモノだからね!音声かなりクリアに入るよ、これでいつ移動させられるかわかる、しかしアホだねぇ〜布旗飛行場からなんかセスナ以外飛ばせないのにね」

「社長、やっぱり広瀬さんは三山の所に戻りました、六松原から発信きてます」

「椿ちゃんは目を離さないでね、よしちょっと移動しようか、盗聴器の範囲はそこそこだけど恐らくあまり離れないでね」

「社長…?私はGPS、弟村さんは音声、誰が運転するのでしょう?」

「あ…」

「俺も運転したいのは山々なんですけどね、いかんせん社長命令で…」

「分かったよ!もう!僕が運転すればいいんでしょ?なんだよこれもう!」

文句を言いながら松田が運転席に座った

「そう言えば社長?台湾の外交官なんてお知り合いいらっしゃいました?」

名城が不思議そうに尋ねた

「ん?いないよ?」

「じゃあどうするんです?」

「布旗飛行場を勘違いしてるマヌケなんてどうとでもなるよ、役者をお願いしてある」

「何方にご依頼を?」

「アハハ、それもその内分かるよ、内容メールしたらノリノリで協力してくれた…その分ギャラが高いけどね…さて準備が…あ!忘れてた」

「…まだ何か?どうしたんです?」

弟村はヤレヤレと言った感じ

「1本だけ電話を…もしもーーし!ピースカンパニーの松田でーす!ご無沙汰しておりまーす!お元気でした?その後お身体の具合どうです?えぇ…えぇ…おぉ!良かった良かった!そうそう一つご相談したい事がありまして…」

名城と弟村は顔を合わせた

「誰に電話してるんです?」

「さぁ…この人は読めないから…」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今回の合宿のメンバーは中間、上原、田原、広瀬の4人で決まり、出発は…明後日、それまで大人しく待っててね」

「はい!三山さんありがとうございます!」

呼ばれた4人は深々と頭を下げ

「自室に戻っていいわよ」

4人は部屋を出る間際もお辞儀をして出ていった。

「さて…もしもし小宮さん?三山です、今回は4人です…えぇ…えぇ…1人はまだ19です、きっと値がつくんじゃない?そちらの準備は…えぇ…えぇ…分かりました、ではご連絡お待ちしております」


「ふーやっぱり人選間違えたかな…小宮さんはなんか脇が甘い気がするけど…ここまでまきたら仕方ない…行くところまで行くだけ、貯められるだけ貯めさせて貰うわ」

三山は天井を見つめながらため息をついた


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「もしもし?ポゥさん?小宮です、今回はこっちから直のプライベートジェットを用意させました、えぇ…はい…あぁ!それは心配しなくて結構です、どうやら外交官の知り合いに口きくとの事でほぼノーチェックだと思いますよ、なんてったって外交官と一緒ですからね、はい…では明後日に…代金はいつも通りで…はい!失礼します」


小宮は深々と椅子に座りニヤついていた

「これが上手くいったら松田のバカ使い潰してやるわ、使えなくなったらバラしゃ良いだけだ、アッハッハッハッハッ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんか弟村が盗聴してるっておかしいね」

松田がちゃちゃを入れた

「好きに言ってくだ…なんか話してますね」

弟村がイヤホン外しスピーカーに切りえた


〜4人かぁ?いいよいいよ、それで…19?それはそれは、準備?あぁ今回は布旗飛行場から直でやる…わかった…また連絡するわ〜


〜もしもし?ポゥさん?小宮です、今回はこっちから直のプライベートジェットを用意させました、えぇ…はい…あぁ!それは心配しなくて結構です、どうやら外交官の知り合いに口きくとの事でほぼノーチェックだと思いますよ、なんてって外交官と一緒ですからね、はい…では明後日に…代金はいつも通りで…はい!失礼します〜



「明後日か…思いのほか早かったな」

「ですね」

「椿ちゃん布旗飛行場は明後日ね!」

「承知しました」

「決戦は明後日!あいつらギャフンと言わせてやろうぜ!」

「社長?いつからこの計画を立ててたんです?」

名城は不思議そうに聞いてきた

「三山と会ったあとすぐに考えたよ」

「やっぱり社長凄いですね」

「何が?」

「やってる事は正義の味方ですよ、立派な」

「やめてくれよ、僕はそんなんじゃない、音羽ちゃんを何とかしたかっただけだ」

「なんだかんだ言って社長はいい人ですよ、俺はそう思ってます」

弟村も入ってきた

「なんだよ、2人して、ボコボコにしてやるとか言ってたのに」

「あれはあれです」「そうです」

2人とも息がぴったりだ


「仲いいね〜2人とも、よし!切り替えて明後日決戦!いいね!」

「「はい!社長!」」




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