最終話解答編
「マギヤ、ほんとにヴィーシニャのこと、なんだと思ってるの?」
ヴィーシニャをぶち犯してから、いろんな人に幾度となく聞かれ、毎日自分でも問いかけたこの質問。
まずは率直にこう答える。
「そりゃあ、聖女だと思っていますよ」
「……マギヤにとって聖女って何?」
それもよく聞かれる質問。いつも通り答える。
「純白がよく似合う、身も心も清らかで美しい人でしょうか」
純白がよく似合うヴィーシニャさん……私という純白を鎖骨や首から肩や後ろへ、あるいは、淫部から内腿にしたたらせる様がよく似合うヴィーシニャさん……。
身はともかく、ヴィーシニャさんの心は清らかでいいのか……。
「マギヤ……」
顔を上気させ、荒い呼吸の中、私の名を呼び、抱き寄せようとする裸のヴィーシニャさんが浮かんで、即座に目の前のヴィーシニャの首を絞めようとしたら避けられる。
あれ、ヴィーシニャ? 貴方そんなことできたっけ?
そんな疑問はすぐに消え、また首を絞め殺そうとするが、やはり避けられる。
仕掛ける、避けられる、仕掛ける、避けられる……ヴィーシニャのくせに、ちょこまかと……。
「マギヤ……今何が見えてるの?」
……自分の立場を分かってないな……今に始まったことではないですけど。
「今? 裸一貫のくせにちょこまかと私から逃げる貴方が、ヴィーシニャさんが見えますが?」
「……そのヴィーシニャさんになにする気?」
……? そのヴィーシニャさん? なぜ「その」が付く? しかも自称でさん付け?
……先に向こうの質問に答えよう。
「……首を絞め殺そうかと」
「どうして? 絞め殺したらマギヤはどうなるの?」
……確かに、私がヴィーシニャを絞め殺したら
「……絞め殺すは言い過ぎました。けど、貴方を絞められたら私はすごく嬉しくなる。
ウリッツァは優しいから貴方に頼まれたとしても、そんなことに応じないでしょう?
でも、私なら応じられる、貴方の願いを叶えてあげられる。そして私も満たされる。
すごくwin-winだと思いませんか?」
うん、私はヴィーシニャさんを殺したいのではない。痛め付けて分からせて私でいっぱいになって――
「今は絞めないでほしい……って言ったら?」
「もちろん絞めませんよ。あ、でも……」
ヴィーシニャさんの喉奥を犯せれば、さっき思ったことほぼ叶うな……。
それで私がヴィーシニャさんに指示を出しながら、ズボンのベルトを外そうとしたら、「やめなさい」とトロイノイがベルトを持ったままの私の手を止めた。
あれ? トロイノイ? ……いや、おかしくない。
私は元々トロイノイとデートしてたはず……いつからヴィーシニャ……さんが?
考える間もなくトロイノイは私を屋敷……聖女邸に引っ張っていく。
……見れば見るほどトロイノイだ。
頬の感じ、髪や肌の質感、ちゃんと手などを洗ったとはいえ、ベタベタ触ってくる私への、やや不快そうな表情。
「マギヤ、そんなにあたしが珍しい?」
「いえ、そんなことは」
ほとんど反射的にそう答えると、トロイノイが「……とりあえず、手ぇ止めて?」というので、それに従って、トロイノイの顔から手を離す。
……空中では落ち着かないので、トロイノイの肩に手を置く。
……トロイノイが何か言ってる。
トロイノイの声は聞こえてるのに、何を言ってるかは、さっぱり分からない。
トロイノイが普段話してて、特に滑舌が悪いとか感じたことないのに……。
……私の所業から考えてお説教だとは思いますが、聞こえないんじゃちょっと……。
話終わったかな、と思ったところで、トロイノイをギュッと抱き寄せたら「こら、マギヤ! まだ話の途中!」などと怒ってるのが聞こえたが、離れる気はしない。
ああ、好き、大好き、こんな素晴らしい人を人違いで殺しかけたなんて……。
この腕の中で、じたばた暴れられてるのに全く不快に思えない。
むしろ心地いいぐらい……。
「トロイノイ、大好き……」
「……うん、それはそれとして、離して、もしくは離れて?」
ヴィーシニャのことを考えると落ち着けない、ヴィーシニャと二人でいると目の前のヴィーシニャを犯したくてたまらない。
ヴィーシニャで安らげるときといえば……強姦するときやそれを思い返すときぐらい。
……自分でも非常によくないのは、よく分かってる。
だからせめて、ひどいことを考えないよう、思い浮かべないようにしたけれど、結局無理だった。
……そもそも、日常警護班の当番の日もそうでない日も、毎日ヴィーシニャのことを考えているから、ひどいことも浮かんでしまうんだ。
ヴィーシニャのことを考える課題の日数を減らせないか提案してみよう。
意図せず大事な人を害しかけたと言えば、さすがに応じざるを得ないはず。
あと、監視魔法を仕込んだあのペンダントの映像開示及び位置情報把握権を
……あの人やあの人がいなくなってからのあれこれに夢中で、この設定にするのをすっかり忘れていた。
他にヴィーシニャさん……ヴィーシニャのことを考えなくて済むこと……。
……そういえばタケシさん、結構いろんな娯楽に通じてるようですし、私に合うものが無いか聞いてみますか。
……武道の本懐とは、敵を倒すことではなく己と向き合うこと……。
……今まで、自分のことを考えてたようで、結局人のことばかり考えてた私に一番必要なこと……。
……もっと弓道部に顔出すか。
それから、ウリッツァ班の当番の前日と当日だけ、ヴィーシニャさんのことを考えていいと決めて、一節は経った当番のある平日。
ヴィーシニャさんの背中にかかる髪に、ホコリが付いてるのを見つけ、時を止めた上で取る。
…………止まった時の中で、ヴィーシニャさんの髪と背中を眺めてたら、抱きしめたくなってきた。
そっとヴィーシニャさんに腕を伸ばし、近付こうとしたら、あと一歩で抱けるのに、なぜか手も足も動かせなくなった。
動けない私を後ろへ追いやり、「えっと、こう?」などと言いながら、私の腕を下ろす人。
私はその人を、トロイノイを見下ろすことしか出来ない。
で、トロイノイが時止めを解除したので私は早速、トロイノイが時止めを習得したのか尋ねる。
こちらを見てそれに同意したトロイノイを見た私は、間髪入れずに時を止め、同意した時の顔のまま動かないトロイノイの制服のシャツのボタンを全て外す。
タンクトップ……の下にスポーツブラと思おしき肩紐。
構わず私はトロイノイの首筋と鎖骨周りを軽く、甘く噛む。
その箇所が赤くなったのを、私はうっとり眺めて、トロイノイのシャツのボタンを戻し……頬にキスしてトロイノイと恋人繋ぎをし、時止めを解除する。
トロイノイが真っ赤な顔をそらして、小さく「……変態」と言ったのが聞こえた。
今度、時を止めたら、トロイノイに何をしようか。
決意だけで記憶が消えたら苦労しません〜マギヤの女子に関する記憶全部消える(仮)解答編 霜月二十三 @vEAqs1123
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