街の外2

〔主人公視点〕


《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


数秒後にその魔物は白い液体とドロップアイテムを残して光の粒子となった。いやー……結構危なかったかも。真っ直ぐ突っ込んできたからよかったけど、少しでもずれてたら顔面串刺しコースだよあれ。

ちょっと冷や汗かきながらドロップを確認する。


【戦闘結果】

戦闘時間:43秒

戦闘評価:C(A)

参戦人数:1名(PLアリア)

ドロップ:角兎つのうさぎの角×1・角兎つのうさぎの肉(小)×1・戦闘経験値200・角兎の情報(20%)


手に入ったのは角兎とやらの角と肉。

とりあえずインベントリから出してどんなのかを確認してみる。

まずは「角兎の肉(小)」というアイテム。マンガ肉を想像して、出てきたのは生肉である。

実に生々しい、ハンバーグほどの大きさの赤身肉である。

今日の晩御飯は冷蔵してある兎に決まった。


次に「角兎の角」。出てきたのはその名の通りの一本の角。

白くシャーペン程の長さで、先端は鋭く尖っている。串刺し未遂の凶器だろう。……槍の穂先程度には使えるか?


角兎つのうさぎの情報を10%獲得しました》


「うん?」


何やら情報値とやらを獲得したようだ。さっきの戦闘でもドロップにあったが、魔物に対して何かすると貯まるのかもしれない。

あとでネットに潜ってみよう。


一通り見終わったので、生肉と角をインベントリにしまおうとした時、


ーーーザッ

ーーーザッ、ザザ

ーーーザー、ッザ!


あたりの草が蠢く音が聞こえ、飛び跳ねた私の真横を角兎が貫いた。


「「「ーーージュ!」」」


「……ッ!」


数はわからない、けど、包囲されているのが草の動きがわかる。左手の生肉をしまい、私を穴だらけにしようと跳んできた角兎を角でそらし、入れ違いに走り出す。


「ナイフは、そんな得意じゃ、ッ!ないんだけど!」


「ジュウウウウウウウウ!!!」


跳んでくる緑色の毛玉を避け、逸らし、時に角を突き刺しながらインベントリから弓を取り出す。

ジグザグに走りながら角を避け、目の前の地面に突き刺さって愉快な体勢の毛玉の尻に矢玉を突き込んでやる。


「ZYUUUUUUUUUuuuuuu!?!?!?」


「そのままでいなさい!」


《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


まず1匹。されど1匹。包囲からは逃れたものの後ろからは多数の毛玉が跳んでくる。

攻撃が止んだタイミングで、地面に突き刺さった角兎の1匹に飛び撃ちを喰らわせる。


「ZYUu!?」


《戦闘経験値を獲得しました》


着地して右に方向転換し、途中の角兎を蹴り飛ばす。ああ、ダメだ!即死しない!

角兎が掠め始めたらスライディングしながら射撃し、転がりながら立ち上がって左に方向転換。


《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


足元に突き刺さってきた角兎を今度は踏み潰す。内臓が潰れる感触を感じ、死んだことを確認する。


《戦闘経験値を獲得しました》


そんなことを何十分と続けていけば、疲労が溜まりミスをすることもわかっている。しかし立ち止まれば全身串刺しである。

ジレンマに苛まれ、いつ終わるかもわからないことが不安を掻き立てる。

そしてその時がきた。


「…ッグァ?!?!」


足に角兎が突き刺さる。痛みはないが、痺れと衝撃によってバランスが崩れて倒れる。


「……ジュア?!」


「死ね!」


《戦闘経験値を獲得しました》


突き刺さった角兎を引き抜き、脳天に角を突き立てる。あたりに白い液体が飛び散り、数秒後に死骸が光の粒子となって消えて……あれ?

ふと何かが引っかかった。違和感が疑念となり、最終的に一つの予測が浮かび上がる。


最初からどこかおかしかったのだ。

さっきまでは1匹しかいなかったのに今の私の周りには数十匹はいる。あれだけ光の粒子に変えてやったのに数は減るどころか増えている。

その答えは目の前にあった。そう、白い液体だ。これはおそらく血なのだろう。

死骸は消えるが血は残り、その匂いが風に運ばれて魔物を引き寄せている。コレが答えだ。


「全く、チュートリアルといい、このゲームは!」


逃げることはできない、ここで倒すしかないのだ。


「……皆殺しよ!」


立ち上がり目の前の角兎に一射。

矢を取り出しながら振り返り一射。


《戦闘経験値を獲得しました》

《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


この間約2秒。ようやく私の場所に気づいた角兎達が殺気立つ。

弓を離しその手に矢を持ち、角を構える。


「「「ZYUUuu!!!」」」


まず跳んでくるのは3匹。

1匹目を半身で躱し、2匹目に横から鏃を突き立て、3匹目を躱しざまに下から刺し殺す。


《戦闘経験値を獲得しました》


まず1匹。


一拍遅れて跳んでくる無数の角兎を倒れてやり過ごす。ついでに2匹目にトドメを刺し、矢が光の粒子となり消える。


《戦闘経験値を獲得しました》


そして2匹目。やはり矢をそのまま突き刺すのは良くない。


私から角兎の姿を隠していた背の高い草は、角兎から私の姿を隠している。ここまで戦ってきてわかったが、あの魔物は夜目は効かないのだろう。伏せてれば大体真上を跳んでくる。


落とした弓を取り、3本の矢を番え角兎が跳んでいった方向に一矢ずつ放つ。


《戦闘経験値を獲得しました》

《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


これで5匹目。


そして弓を落とし矢と角を構える。

矢の続く限りこれを続けた。


《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《アイテムを獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》


矢が無くなったらドロップした角をナイフがわりにした。

跳んできた角兎が少数なら跳んでるとこを刺し殺し、大勢なら地面に伏せてやり過ごした。


《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《戦闘経験値を獲得しました》

《アイテムをーーー


こうして、私は街の外で夜を越した。




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凡人VRMMO(仮) アルアール(?) @FEEEEEL

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