第EX話 NEW GAME

 死防銃戯を携帯端末で読んでいた<あなた>は背後からの気配に振り返った。

「これが願いを叶えたサバイバーとなっております」

 ナビゲーターの女が部屋の中にいる。

 ありえないと<あなた>は不法侵入に悲鳴を上げるより先に、携帯端末と女を交互に見比べては目を白黒させるしかない。

 これはフィクションのはずだ。

 何故、空想の存在が背後にいる?

 コスプレか? それとも質の悪い強盗か?

「夢か現か、それは当人が決めること」

 女は淡々とした表情でタブレットを見せてきた。

「おめでとうございます。あなたにはデスゲームの参加権が与えられました」

 つい先ほどまで一作品として読んでいた<あなた>は、その意味を知っていた。

 最後まで生き残れれば願いは叶う。叶えられる。

 一方で、ゲーム途中で失格となれば仮に生き残ろうと、反転した願いが災いとして降りかかり、脱落すれば文字通り死が訪れる。

 次などない。次などないが、うちにくすぶる欲望が参加を渇望してくる。

 命を賭けたデスゲーム。

 一発逆転できるハイリスクハイリターンのゲーム。

 願いが叶う。理想が実現する。

 勝ち残ればいい、生き残ればいいだけの話。

 どこに参加を躊躇する理由がある。

「参加を表明する際は、このタブレットに表示された内容をよく読み、手の平を乗せてください」

 読まなくとも知っている。

 作品を読んだから一通りルールどころか、攻略法すら知っている。

 既知が故に願いが叶う。叶えられる。

 シンプルな誘いが死の恐怖を塗り潰す。

<あなた>は内容を熟読するよりも先にタブレットに手の平を乗せる。

「はい、参加登録が完了しました。では、がんばってくださいね」

 営業スマイルに押し出され<あなた>の身体は何処かへ転送される。

 部屋には<あなた>がいた痕跡はあっても、<あなた>はいない。


「それでは死防剣戯しぼうけんぎを開始します」


 叶えられる願いは一つだけ。

 握る武器は剣一つだけ。


<死防剣戯ルール>

 剣は己の半身、折れた時点で失格となる。


「皆さま、ルールはしっかりと、?」

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死防銃戯-Corpses and Bullets- こうけん @koken

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