17
船団の前に立ちはだかったキャムに、黒の騎士が問いかける。
「交換の品は持ってきたのか」
「ああ、アンタにお似合いの品をな」
手にした太刀を掲げ、ふてぶてしい態度のローブに、騎士たちが武器を向ける。それを片手で静止して船首から飛び降りる黒の騎士。
「死にに来たか」
「借りが増えすぎてな、このままじゃ首が回らなくなっちまう」
黒の騎士がゆっくりと抜刀すると、キャムがそれを目掛けて走り出す。黒の刃と白の刃が交錯すると、火花が弾け空気が揺れる。傍らを駆け抜け旋回すると、もう一度斬りかかる、しかし今度はキャムを狙われ咄嗟に飛び降り、刃を交え向かい合う。フードがはだけ、ニヤケ顔のラグが現れる。
「愚かな男だ」
「返しやすそうな奴から優先さ」
激しく交わる音と火花、黒の騎士が繰り出す斬撃をいなし攻撃に転じる。よろける黒の騎士へ打ち込む速度は緩まない。
一旦引いて構えを変える黒の騎士。甲冑から吹き出る瘴気に黒の刃が怪しく光る。激しさを増す斬撃に、ラグは押され防戦が多くなっていく。ついには太刀を弾き飛ばされる。
「さらばだ愚かな戦士よ」
「そいつはどうかな」
「我、汝の力を開放する」
黒の斬撃が振りを下ろされる瞬間、乾いた風に乗って大地に響く声に、首輪が光り、両腕が燃える。
「私はリンドさんも、街の人も、みんなを助けたいの。それの何が悪いのよ。バカラグ!いけぇぇぇ!!」
燃える両腕が黒の斬撃を受け止め弾く。よろめく黒の騎士を捉え、右、左、右。弾け飛んだその躯体を追いながら、砂に突き刺さった太刀を引き抜き斬りかかる。
両腕の炎が太刀に移り燃え上がると、炎は大きく立ち上がり、火炎の龍に姿を変え黒の騎士を貫く。
崩れ落ちる黒の騎士。辺りが静まり返る。
「てぇ!!」
船から聞こえる号令で降ってくる巨大な鋼鉄の槍が、砂の大地に突き刺さる。
「ラグさぁん」
城壁から飛び出て疾走するサンドシップから伸びる小さな手に、全力で走り勢いよく飛び上がると掴まる。勢いで甲板に転がるふたり。
「おせぇぞ」
「出航に手間取っちゃって」
「ひぃぃぃ」
泣き腫らした黒い大きな瞳。舵にしがみついたポルクが左右に揺すられ、お決まりの悲鳴を上げる。それを見て笑うふたり。
「笑いごとではありませんよ」
悲鳴に近い抗議の声を上げるポルクの頭上に迫る鋼鉄の槍。
間一髪で交わすもマストが折れ倒れる。舵をポルクから奪ったラグが叫ぶ。
「どうする、ソフィ!」
「左のレバーを引いて下さい」
「これか」
低い唸り声を上げ船体が浮かび上がると、猛スピードで砂煙をあげ走りだす。
高速で左右に蛇行するシップに、なおも襲いかかる鋼鉄の槍から逃げる。しかし、突き刺さった槍が行く手を徐々に阻んでいく。
「くっそ」
「ラグさん、私の言う通りにして」
黒く大きな瞳を閉じるソフィア。
再び開くと左の瞳が、碧天のように青く輝きだす。
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