14
「おいお前たち、何をしている」
騒ぎを聞き、駆けつける騎士達にあっという間に取り囲まれる。次々に抜かれる剣に、ラグは両腕を構える。
互いに間合いを図ったまま睨み合って動けずいると、一陣の風がバケツを鳴らす。それが合図だったように、切り込んで来る騎士達を巧みにかわし拳を放つ。兜が宙を舞い倒れる甲冑。お次は右上から叩きつけるように振り下ろされる切先を、受け止めようと腕を上げる。
光る刃。それを見てラグは瞬時に腕を引く。皮一枚でかわすと
騎士達が構えた剣が次々と光を帯びていく。斬撃をかわし拳を繰り出すが、先程のように決定的な攻撃へとは繋がらない。
「おい!大丈夫か」
すきを見て静かな後ろを確認すると、両手でロットを握りしめ目を見開いたソフィアが、先程と変わらぬ位置に立っている。
しだいに集まってくる騎士達が剣を抜き、ラグとソフィアを取り囲んでいく。
「ちぃ。それを貸せ」
振るえる手で握りしめたロットを奪うと、防戦から攻戦へ転じる。青白い光を放つロットが騎士を膝まつかせる。たじろぐ騎士達に退路を見い出そうとロットを振り回す。ひとりふたりと倒れていく、このまま、そう思った矢先に光を失うロット。再び包囲が強まる。
「おい!しっかりしろ!腕輪を」
呼びかけるがソフィアの耳には届かない。ふたりを囲む剣の群れがじりじりと狭まっていく。
「おい!ソフィア、聞こえてるか……おい!ソフィ!!」
「おじいちゃんは怖くないの?」
真新しいサンドシップを眼の前にして満足げな表情のジーク。それを横で見つめる黒く大きな瞳に優しく答える。
あの時、おじちゃんは……。
一際大きく叫んだラグの声が乾いた風にこだまする。大きく見開くソフィアの瞳。黄金色に輝く腕輪に呼応して首輪も白銀に輝く。
ラグの両腕が真っ赤に燃える。たじろぎを振り払うように無数の刃が一斉に襲いかかってくる。それをひと払い。火炎が空に弧を描き、騎士もろとも吹き飛ばす。
焼けただれた匂いが辺りを包む。炎を纏ったラグが次々に騎士を倒していく。輝きを放ち続ける腕輪。握りしめた両手に涙がこぼれ落ちる。解らない、私はいったい。
突然、騎士たちが左右に分かれていく。その先から黒い甲冑が歩み出る。重く暗い空気を引き連れて、兜の側面に白のラインが入った黒の騎士。柄に手を掛け抜いた刃は黒い光を纏っていた。
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