13

瓦礫の間に立ち並ぶホロの市を、騎士達がひとつひとつ丁寧に確認していく。ゆっくりゆっくり、それは波紋のように街に広がっていく。


「おい、女。ここにローブを被った二人組が逃げ込んでこなかったか」

「さてね。客商売だから顔を覚えるのは得意だけど、そんな連中は見てないね。それよりどうだいこのトトママ、熟れててちょうど食べごろだよ」


顔先に差し出された赤色の実を無視して、三人の騎士は次の店へと移動する。路地の向こうから元気な声と共に駆けてくる子供たちが、勢い余って騎士にぶつかる。


「痛って」

「おい小僧。ここでローブを被った二人組を見なかったか」


尻もちをついた子供に手も貸さず、同じ質問を繰り返す。自力で立上り尻についた砂を払うと、無言で路地の奥を指差す。


子供が指さした方を確認すると、路地に座り壁にもたれた薄汚れたローブの固まりを見つける。


「わぁぁぁ」


騎士を避け勢いよく駆けていく子供たち。騎士達は床に座ったローブに歩み寄る。


「おい、そこの者。そのフードを上げてみろ」


騎士の呼びかけには、ピクリとも動かない。


「もう一度言う、そのフードを上げて顔を見せろ」


なおも動かないローブ。


「おい!貴様」


その態度にじれて柄に手を掛ける。


「よう聞こえておりますじゃ。この老いぼれになにかようですかね?」


しゃがれた声が深々と被ったフードの奥から聞こえてくる。顔を見合わせる三人の騎士。


「聞こ言えているなら、なぜフードを上げぬ」


再び沈黙するローブの男。苛立ちを隠せない質問した騎士に変わり、後ろに立っていた騎士が口を開く。


「なぜ質問に答えない」

「見ての通りでございます」

「私には見ても分からない。もう一度言う、なぜ質問に答えない」


騎士が全員柄に手を掛け、抜刀の構えをとる。


「ほうですか。なに、忙しくて手が離せんのですじゃ」

「なに?どこをどう見ても座っているようにしか見えんが」


左足を半歩下げ腰をひねって膝を落とす。間合は十分、一刀で首が落ちる距離だ。と、不意に立ち上がるローブの男。有に2ミールはある身長に騎士達が唖然と見上げる。


「いやね。まぬけな騎士の相手をするは手間が掛かるって話さ」


次の瞬間、騎士達の腰が閃光を放つ。一斉に襲い来る刃に、ローブは切り裂かれ宙を舞う。しかし、中身はない。


「本当に間抜けだな、あんたら」


後ろからの声に振り向くことも出来ず、頭と頭を叩きつけられ路地に倒れ込む騎士ふたり。それを見て残った騎士が切りかかろうと踏み込むと、背後で稲妻が走り前のめりに倒れる。騎士が倒れた後ろには先から稲妻が漏れるロットを持ったソフィアが立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る