07
「ラグさん!ラグさん!」
瓦礫を掘り起こそうと必死に縋り付くソフィア。しかし彼女の細腕では岩の瓦礫はびくともしない。手から血が滲む、だが諦めない。
「ラグさん返事をして下さい。ラグさん!」
嘘のように静まり返る街。
「どけ!」
城壁の上から大きな声が飛んでくる。振り向くとリンドと名乗った銀髪の長髪が、自身の身の丈ほどの大きさの弓を構えている。
放たれる閃光。頭を押さえて踞るソフィア。瓦礫が飛散する。
「そんなに怒鳴らなくても聞こえてる」
瓦礫の中に立つラグが、こちらを見て不敵な笑みを浮べている。袖口で目をこするソフィア。
「で、この後はどうするんだ?」
「反撃開始です」
城壁からの氷の矢が、砂賊の船を襲う。連続して放たれる閃光は確実に帆を捕らえている。
「取舵いっぱい」
慌てて舵を切るが1隻の帆が貫かれる。砲撃で反撃を試みるが、絶妙に射程圏外で届かない。
「前進だ。あれを黙らせろ」
ビナゴアから激が飛ぶ。甲板を走る砂賊達、サンドシップが回頭して外壁上の障害に船首を向ける。全速前進、2隻のサンドシップがリンドに遅いかかる。
城壁の上から矢継ぎ早に放たれる氷の矢。こちらに気が付き向かってくる2隻のサンドシップから砲撃が放たれる。まだだ。見当違いの着弾点が徐々に近づいて来る。まだだ。足元に近づいて来る砲弾。まだだ、まだ。
リンドと船団の攻防を横目に街を駆け抜けるソフィアとラグ。行く手を阻む砂賊を蹴散らしながら城壁に立つラーハの石柱を目指す。必死に走る黒髪の少女を確認する、黒い大きな瞳。
大きな瞳がふたりを見つめる笑う。リンドとラグは改めてソフィアに向き直る。
「出来そうですか?」
「私は問題ない。ただしこれではそこまでの距離は出せないぞ」
「そこは問題ないと思います。少し待って頂ければ弓は用意できると思います」
リンドが手にした短刀を腰に収める。その横ではラグが腕組して目を閉じている。
「やっぱり無理ですか?」
「確認していいか?」
「何なりと」
「こいつの説明が途中だったろ。あれを聞かせろ」
「えっと、何でしたっけ?」
「とぼけるな。等価を支払わせるだけじゃないんだろ?」
ラグは首輪を掴み、黒い瞳を真直に見つめる。その黒に吸い込まれそうだ。
「そのままでは、力に制約が掛かります」
「なら無理だ」
「えー。なんだってやるって言ったじゃないですか」
「無茶言うな、このままじゃ無理だ。このままじゃな」
今度はソフィアが腕組して目を閉じている。
城壁の上、ラーハの石柱にたどり着いたソフィアとラグは、その巨大な石柱を見上げていた。その数十ミール先には、砲弾の攻撃を一手に引き受けたリンドの姿が。その狙撃手に、着弾点は確実に迫っていた。
砂漠の熱風が強くソフィアの頬を撫でる。リンドとサンドシップを交互に見定める青みがかった大きな瞳。ラグの視線に気が付きソフィアは小さく頷いた。
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