06
「
「この世の全てが詰まった、お宝ですよ」
オアシスの街『ルガガ』。その中央に位置する一際大きな館で砂賊の頭ビナゴアは、珍しい異国の客椅子に深々と座り、ここいらでは見たことのない酒を煽っていた。
「あそこに、それが有るって言うのか」
「ええ。私も実際には見たことはありませんが確かな情報です」
あんな所に街が?
グラスを片手に眼光鋭くマカサニを見据える。それを察してか、テーブルにどかりと置かれる麻袋。
「前金で5000。なに、簡単なお話しですよ。要はアイツらより先に男を捕まえればいいだけの話ですから」
目の前の麻袋に移した視線を再びマサカニに戻すと、なんとも言えない笑みを浮かべている。
薄気味悪い野郎だぜ。
ビナゴアはグラスに残った酒を煽るとテーブルの麻袋を手に取り立ち上がった。
「いいか野郎ども。捉えるのはローブの男ただひとり、あとは皆殺しだ。わかったな」
雄叫びを上げ次々と船から飛び降りる命知らずの部下達。それを見て手を止める砲撃手。
「構うな打ち込め。死にたくなけりゃ避ける」
そう、構ってなどいられない、早く捕らえなければ。
ラグがローブの女を連れ街中を駆け回る。行く手に現れた砂賊を一撃で退けると、右手に折れ走り抜ける。ローブの女も必死に後を付いてくる、その後ろにはふたりを追う砂賊達。
お次は左右から大ぶりの半月刀が振り下ろされる。左右の腕でひと振りずつ受け止めると弾き飛ばす。 文様が入った
砲弾も動く的にはそうそう当たらない。走り続けるラグと女。しかし刻々と姿を崩す街が瓦礫に埋もれるのも時間の問題だ。
砲弾の雨が勢いを増す。ラグが崩れている外壁から街の外を確認すると、砲弾を打ち続けるサンドシップの後方に新たな船がもう2艘現れ、砲弾が放たれる。次々に上がる砂柱に巻き込まれる砂賊達。激しい爆撃は最早街の破壊だけには留まらない。
砂柱に半月刀、両方から逃れるため必死に走るふたり。焼き付く太陽に、ざらつく汗がまとわりつく。
「おい!」
ローブの女がよろけると同時に頭上で弾ける爆撃音。飛散した瓦礫が頭に降りそそぐ。
女が引っ張り飛ばされ、尻もちをつき倒れると、ローブがはだけ黒髪が現れる。
「ラグさん!」
しかし、目の前の瓦礫の山からは、返事は返ってこなかった。
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