第5話
「罪状、高瀬 重造。女性患者への診察と称した性的暴行、全て含めて1023件。医療ミスによる患者への意図的な死亡件数17件。全て把握」
『雫』が自分以外知り得ない行状を述べた瞬間、男の目が更に恐怖で見開かれた。
“殺される”
何故そんな事を知っているのか、今は考えてる暇も無い。少なくとも目の前の人物が、自分を殺しに来たであろう事は状況からして明らかだ。
この期に及んで逃れようと必死にもがく男を、『雫』は冷めた眼で見下ろしながら。
「よってこれより……“消去”を開始する」
『雫』の掲げられた右手に煌めく、蒼白くも冷たい輝き。
「フグォォッ! フグォォォォ!!」
口にした“消去”がどういう意味か馬鹿でも分かる。迫りくる絶対的な死に呻くしかない。
しかし無駄、無力、無意味。それは“人”の力で抗える訳がなかった。
『雫』の蒼白い右手が男の胸に押し付けられる。戒める様にゆっくりと。
「フグォォォォォッ!!!!!!」
その右手が触れた瞬間、言葉にならない呻きが上げられた。
刹那、蒼白い煌めきが更に輝きを増す。
“ドクン”
「――っ!?」
まるで胎内に不純物が入り込んだ様な感覚。
『雫』は塞いでいた左手を口元から離し、押し付けていた右手も戻す。
「ななっ……何をしたっ!?」
男はようやく口を訊ける様になったが、全ては後の祭。手を離したのは“消去”が滞りなく終了した事を意味していたからだ。
エリミネーター2 シンチャン @siguto
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