第4話 終わりに
けれど、俺はそんなバッドエンドは許さない。許せない。悲劇? 悲恋? そんなのはいらない。悲しみの疑似体験になんの価値がある?
俺は、動くことにした。ヨシキとサエカ。この二人の物語を、ほんの少しでも幸せにできる魔法の力。そう、これは、あんたの力でもあるわけだ。世界を変えることはできない。けれど、きっと社会を変えることはできるはず。
だから、俺はあんたに問いかける。俺がしている行いが正しいのか否かをね。
これは、俺の物語じゃない。ただ、俺が目にして、耳にした彼らの物語だ。そして、今まさに、俺は自分の物語を始めようとしているわけだ。
あんたの顔も、名前も、性別だって、年齢だってわからない。ただ、ひとつ、どうか俺に協力してはくれないだろうか。どうやってあんたがこの文章を読んでいるのかはわからない。ただ、あんたはこれを読んで、ヨシキに死んでほしくないと思ったなら、どうか声を上げてくれ。
今、俺たちは戦ってる最中だ。結局、最後はここに生きるあんたたちの力が必要なんだ。
俺は、俺の体感したすべてを話したつもり。俺だけじゃない。チカも、シュウゴも、ソウヤも、リッカも、ミキヒサも、サエカも、その物語を俺に託してくれたんだ。
なあ、どう思う? この世界は酷く退屈で、酷く汚れている。それを、ほんの少しでいいから変えたいなんて思わないか? その結果、ほんの少しでも幸せの総量が増えたなら勝ちだろ?
これは俺の最初の一歩でしかない。俺はこの社会を変えるために全身全霊をかけることに決めたんだ。それが、俺のしたいことだから。
なあ、あんたも心のどこかで思ってるはずだ。わかってるはずだ。何かがおかしい。何かが間違ってるってね。それでも動けない。動けば叩かれるような時代だよ。それでも、もっと正しいものに変えていけるはずなんだ。
愛するひとが自殺しなくてもいい社会。愛するひとが犯されなくてもいい社会。愛するひとが身体を売らなくてすむ社会。
そうなっていないのは、俺たちにも、ほんの少しの責任があるはずなんだ。
だってそうだろ。俺たちはこうして繋がってる。誰かは誰かの友達の友達だ。しかも、こうして誰もがネットを使って繋がれるんだ。誰もが誰もの関係者ってわけ。きっと、それが社会ってやつなんだと思う。
ひとがひとを殺したとしよう。もしかしたら、自分が止められたかもしれない。直接的ではないにしてもね。
そうやって、互いが互いに優しくして、関わることが、より良い社会の一歩になるはずなんだ。
俺は諦めない。諦めたくない。誰にも悲しい思いをしてほしくない。
だから、頼む。あんたの力を貸してくれ。
市村 顕
ケモノ 中村智一 @tomo_nakamura
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