第9話 謝罪
野菜です。
今日は、電車とバスを乗り継いで12軒目の方に謝罪に行きました。
”こうじくん”についても大体知ることができたので、今回で最後にしたいと思います。
近隣の電車を乗り継ぎ2時間半ほどで、”A地区”のバス停につきました。
到着時刻は13時過ぎでした。
以前は、富豪村と言われていただけあり、大きな屋敷や別荘のような建物が沢山ありました。
初めての”A地区”は、金待ちそうな家は多いが、思っていたより普通の村という印象です。。
バス停から約10分ほど歩いたところに目的の家があり、恐る恐る呼び鈴を押すと、一人のお爺さんが出てきました。
今後はわかりやすいように、Cさんと記載します。
以下に会話を記載します。
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野菜:
突然の訪問、申し訳ございません。
私、〇〇大学の〇〇(野菜の本名)と申します。
先日は、突然お電話をしてしまい、申し訳ありませんでした。
Cさん:
お前があれか!!
どこからあのことを知ったんだ!!
野菜:
すみません、本当にすみません。
実は不動産情報サイトを見てるときに見つけて気になって調べて。
Cさん:
くそが、、あれに載せるからお前みたいなのが出てくるんだ。
どうせ、お前も願い事目当てなんだろ。
野菜:
いや、動物とかが可哀想なので、生贄とかは考えてないです。
今の願い事は「猫を飼いたい」なので、尚更です。
ただ、”こうじくん”が何なのか知りたかっただけです。
Cさん:
お前珍しいな。普通はどこにいるか教えろって言ってくるやつばっかりやぞ。
まあ、とりあえず上がれ。
野菜:
はあ、わかりました。
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家に上がるのは怖かったですが、生贄を捧げる気がないというと顔が優しくなったので、家に上がることにしました。
また、こういうときに断れない性格なのもあります。
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Cさん:
そこ座って。今お茶入れるから。
野菜:
あ、ありがとうございます。
そういえば、これよかったら。
(手土産を渡す)
Cさん:
あー、わざわざありがとうね。
これも一緒に出すわ。
野菜:
ありがとうございます。
Cさん:
はい、お茶。
で、あんたはどこまでわかっとるんや。
野菜:
あ、”こうじくん”ですか?
Cさん:
他にないやろ。
野菜:
あ、すみません。
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私は、”こうじくん”を不動産情報サイトで見つけてからBくんに話を聞いたことまでをCさんに誰から聞いたかなどは隠し、調べた内容を手短に話した。
すると、Cさんはまた怖い顔に戻っていた。
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Cさん:
それは”A地区”の関係者が言いよったんか?
野菜:
誰とかは言えないですけどそうです。
Cさん:
ほんと、若い奴らは、。
あいつの怖さを何もわかっとらん。
野菜:
え?”こうじくん”って生贄で願い叶えてくれる神様じゃないんですか?
Cさん:
そんなもんじゃなかさ!
村の若い奴らはほんとになんもわかっとらん。
野菜:
え、なにをですか?
Cさん:
お前、不審者情報サイトちゃんと見てないやろ。
古いやつ詳しく見たか?
野菜:
いや、一番昔の事案情報を探したくらいです。
Cさん:
調べるならちゃんと見らなやろ。
あのな、サイトを見たらわかるんやけど、2016年やっけ?
あの頃の目撃情報はな、2ヶ月くらいの間隔で現れとるとさ。
野菜:
そうなんですか!?
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確かに調べてみると、2016年10月2日にある一番古い事案情報の次は2016年12月21日だった。
他にも遡っていくにつれて、”こうじくん”の現れる日にちが短くなっていることがわかった。
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Cさん:
昔はな、こいつが現れるのは100年に1回やったとさ。
それが何十年に1回、10年に1回、数年に1回、1年に1回って短くなってきとるんよ。
今では1週間に1回になっとるやろ。
あいつが出てくる間隔が短くなってきとるとさ。
そしてあいつは何かを殺すまで消えん。
時間が経つと見境なしに一つ殺し、他の土地に移る。
わかるか?現れる時間の間隔が短くなればなるほど、生贄を捧げる前に関係のないものが大量に殺され続けることになる。
でもな、あいつは願いを叶えずに命を奪った場合には、現れるまでの間隔は変わらんっていう特徴がある。
だから、あいつに生贄を捧げるのを辞めれば、週に1回関係のない奴が死ぬが、被害は少なく抑えられる。
なのに、あのバカたちは自分の都合のいいように、”こうじくん”を願いを叶える神様のように崇めよる。
憑代があれば、まだ”A地区”を捨てるだけで済んだとに、他の土地の奴らを入れて金儲けをしようとするからこんなことになるとさ。
あれはな?神様なんてもんじゃない。
ただの死神さ。あんなもん。
まずな?ここは、昔の人が開拓した土地ってなっとったやろ?
あそこから違う。
この土地は、”こうじくん”に生贄を捧げて開拓された土地。
だから、農作物も育ちやすいし、ここら辺じゃやられてない畜産もやれてるようになっとる。
"こうじくん”はこの土地を開拓しようとしたやつが、どこからか持ってきて坊主に憑代を作らせ、封印したって聞いた。
あいつをどこから持ってきたかは知らん。
俺の婆ちゃんは、「大量の子供を閉じ込め、食べ物も水も与えずに殺し合わせ、生き残った一人を殺し、その怨念を憑代に込めた」と言いよった。
本当かは知らん。
村の秘密ってことで文献も残っとらんから。
ただ一つ言えるのは、あいつに願いを叶えてもらったらいかん。
いつか取り返しのつかんくなる。
もう手遅れかもしらんけど。
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Cさんの話を聞いた後、自分は再度電話をかけてしまったお詫びと、話を聞かせてくれたお礼をして帰路についた。
帰る途中に、”こうじくん”の本当の名前である”こうし様”について一つの考えが浮かんだ。
”こうし様”は、子供の牛を生贄に捧げた「子牛」様ではなくて、死を願う、死を乞うものという名の「乞う死」様ではないだろうか。
考えても答えはわからない。
ただ、私は”こうじくん”に殺されないことを願うだけである。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
野菜
こうじくん 野菜 @haraharaharahara
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