第79話  絆 その十三

6月24日、フランチェスコはヴェネツィアに上陸した。長老から、戦に備えて準備を始める様、依頼を受けたのだ。

サン・トロヴァソの宮殿に着くと、ゾルゾ・ブロニョロが待っていた。

フランチェスコは笑みを浮かべて歩み寄ろうとした。

不意にゾルゾは、手に持っていた紙を読み上げた。

「閣下をヴェネツィア共和国総司令官の地位より解任する。

                   1497年6月23日  十人会議」

ゾルゾはそれだけ読み上げると出て行った。

フランチェスコは茫然と立ち尽くした。

長老の要請でフランチェスコはヴェネツィアへ赴いたのだが、到着の前日、十人会議が解任を可決したのであった。

フランチェスコはすぐさま飛び出すと馬に乗り、大運河沿いの道を全速力でサン・ジョルジョ・マッジョレ教会に向かった。

フランチェスコは教会に駈け込んだ。

やがて行政長官が現れた。

「今すぐ、今すぐ長老に会わせて下さい。

どうしても確かめねばならないことがあります。」

行政長官は、眉一つ動かさず言った。

「長老にお合わせするわけには参りません。」

                 つづく


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