第77話  絆 その十一

1497年が明けた。

長く続いた喪も終わりを告げ、やっと新しい年になった。

お城では毎年の様に新年の舞踏会が催された。

広間には無数の灯りがともされ、真昼の様な明るさだった。

そして、夕方から沢山のお客様が馬車で続々と詰め掛けた。

広間には音楽が流れ、人々は舞踏に興じた。

あたりはいつか夜のとばりが降りていた。

そして、夜が更けるにつれ、舞踏会はいよいよたけなわになっていった。

「お妃様、ちょっとワインのことで。」

侍女が耳打ちしたので、イザベラは急いで奥へ行った。

「ああ、それならこちらの白ワインをお出しして下さい。」

「はい、かしこまりました。」

イザベラは、きぬずれの音をさせながら、また広間へ戻って行こうとした。

その時、突然、音楽が止まった。

それに続いて、人々のざわめきが起こった。

イザベラは言い様の無い胸騒ぎがして、急いで広間へ行った。

フランチェスコが蒼白の顔をして立ち尽くしていた。

「ベアトリーチェ殿が・・・ベアトリーチェ殿が」

フランチェスコの唇が震えた。

イザベラは大きく目を見開き、くい入る様にフランチェスコの顔を見上げた。

「亡くなられた」

その瞬間、イザベラは意識を失った。

               つづく

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