第76話 絆 その十
マントヴァに帰り着くと、フランチェスコの病気は徐々に回復していった。
そして、やっと歩ける様になると、フランチェスコはすぐ任務の遂行にかかった。
11月21日フランチェスコはヴェネツィアに赴いた。
そこで彼は凱旋者として熱狂的に華々しく歓迎された。
チョギアでは、両院議員全員が威儀を正してフランチェスコを出迎え、マルモッコの砦では長老および各国の大使が全員正装して待っていた。
聖マルコ寺院の大きな扉がフランチェスコに敬意を表して開け放たれ、ミサの後、フランチェスコは立派な船で大運河を遡ってサン・トロヴァソの宮殿へ案内された。
沿道は一目フランチェスコを見ようと詰め掛けた人々で溢れ、熱狂的な歓呼の声が町中に反響した。
翌日、フランチェスコは長老にカラブリアの戦いの一部始終を報告した。
身動きもせず聞いていた長老は、フランチェスコが話し終えると、満足そうに笑みをたたえて力いっぱい両手でフランチェスコの手を握りしめた。
しかし、この栄光は、フランチェスコを妬む者の心を一気に燃え上がらせた。彼らはじっと機を伺った。
数日後、ナポリから悲報がもたらされた。フェランテ二世の死去である。若き勇敢なナポリ王は、父祖の国を奪還した喜びをかみしめる間もなく、数日の病の後に世を去ったのであった。フェランテは、イザベラには従兄に当たった。そして、ナポリで共に戦って以来、フランチェスコとフェランテは固い友情を誓っていた。イザベラもフランチェスコも悲嘆に暮れた。あまりにも華々しく、あまりにも若かったフェランテの死に二人は涙が涸れるまで泣いた。
悲報は続いた。
遂にモンパンシエ公爵が亡くなったのである。
「どうか、姉上を慰めておくれ。」
フランチェスコは悲痛な声で言った。
イザベラは、言葉を失った。涙に暮れるキアーラを前にイザベラは、慰めることなど出来ないと思った。この悲しみを他の人間が癒すことなどできないと思った。イザベラは、頭を垂れてキアーラのそばに座り続けた。それでもキアーラはイザベラに感謝しているらしかった。言葉の端々にそれが伺えた。
年の暮れ、キアーラはフランスへ帰った。
つづく
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