第73話 絆 その七
一行は、さらにセニガリアを訪ねた。しかし、何の手がかりも掴めなかった。
イザベラは、不安がこみ上げてきた。
フランチェスコは本当にこの道を北上しているのであろうか。それとも何処かで容体が悪化し足踏みしているのか・・・次々に恐ろしい光景が心に浮かび、イザベラは胸が張り裂けそうになった。
イザベラは、たまらなくなってエリザベッタに手紙を書いた。
夜が明けると、一行はセニガリアを発った。
イザベラは、道々行き違いにならない様、馬車の窓から見つめ続けた。
いつしか10月になっていた。
やがてイザベラとジギスムントはファーノに着いた。そこには、エリザベッタが待っていた。そして、エリザベッタも一緒に町中尋ね歩いたが、遂に手がかりは掴めなかった。
イザベラは、もう絶望的だと思った。この広いイタリアで、フランチェスコは異なる道を北上しているのであろう。或いは、何処か南イタリアの一隅で、今、最後の息を引き取りつつあるのかも知れない。
イザベラは、まんじりともしなかった。
夜が明け、イザベラは何の望みも無いままファーノを発ち、アンコーナに到った。
しかし、遂に手がかりは掴めずじまいだった。
「おねえ様、本当に有難うございました。でも、もう無理です。
私は、マントヴァに帰ります。」
イザベラは涙ながらに言った。
「そう。」
エリザベッタはそれ以上何も言えず涙ぐんだ。
「どうか、御気を強くお持ちになって。」
別れ際にエリザベッタは、やっとそれだけ言った。
イザベラは、涙に暮れて何も見えなくなった。
つづく
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