第71話 絆 その五
数日後もたらされた報せは、さらに悲痛なものであった。フランチェスコの病状は悪化の一途を辿り、遂に彼はヴェネツィアの貴族パオロ・カペッロをフォンティに呼んで、自分の亡き後は妻子を頼むと長老に伝えて欲しい、と告げたのであった。
イザベラは、ただもう祈り続けた。もはや祈りの言葉は定かではなく、涙に暮れながらただ手を合わせ続けた。それでも、言葉は失っても、その心は祈りそのものだった。
暫く報せが途絶えていたが、9月中旬になってやっと早馬が来た。それによると、フランチェスコは僅かに持ち直し、マントヴァに向けての旅路に就いたとのことであった。しかし、まだ予断を許さぬ病状で、旅は中断の連続であり、今、南イタリアのどのあたりにいるのかも定かではなかった。
マルゲリータの命は、日に日に消え入る様に衰えていくのが感じられた。
明け方の光の中で、マルゲリータの顔は透き通る様に青白く、安らかだった。
「ああ、天使の様だわ。」
イザベラは、とめどなく涙を流した。
9月23日 マルゲリータ死去。
つづく
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