イッツショータイム?その時までは訓練だ!

10話目 平凡は非凡を殺せる武器を持つ

「…人殺し」


…んー?聞き間違えかな?

最近ちょっと病院にいすぎて疲れているのかもしれない。

そう、聞き間違えだ。

だって僕は人を殺してなんかいない。


「三月君ほんっとにサイテー」

「なんで殺したの?!」

「近づかないで!殺人鬼!!」


少しの沈黙の後に周囲は騒ぎ始めた。

そして言葉の矛先はすべて自分に向けられている。

なんで?

なんで、なんで、なんで?人を殺してなんかいないのに!

無慈悲な言葉が投げつけられる中、僕はただ立ち尽くしていた。

理解できない現状と、その場の空気感で恐怖感以外何も感じなくなってしまった。


「消えろよ!化け物!」


誰かが僕に向かって筆箱を投げつけてくる。

なんだよ化け物って、僕はヒーローじゃないのかよ?!

人殺しってなんだよ!!


バンッ!ガラガラ


また無意識のうちに能力が発動した。

やっぱ僕は怖いのか…。

この平凡たちが怖くて仕方ない。


投げられた筆箱は、筆箱の中心で壁が生成されたため、真っ二つに割れて床に転がった。

また、近辺にあった机は吹き飛び、誰もいない壁ではじけ飛んだ。

あぁ、机の脚が無残に曲がってる。

そして筆箱も真っ二つに…。

その瞬間、僕の中でこれからも呪いとして存在し続ける言葉が放たれた。


「なんで、トラックの運転手を殺したんだよ!」


え?トラックの運転手?

何の話?AIは生き物じゃない。

何が人殺しなんだ!

無性に腹が立ってきた。能力でこいつらを震え上がらせたい。

こんな災難が降りかかっていた僕を労われよ!この野郎!


されど現実を思い知らされる。


「私見たの!あのトラックのお兄さんがつぶされる瞬間苦しそうな顔をしてた!」


彼女は歩道から眺めていた。と、周囲の人が付け加えた。


…?トラックのお兄さん?

だから、AIの自動運転技術だろ?

…ちょっと待ってくれよ。人工知能だろ?

本当に…人間が乗っていたのか?

もしかして、僕のお母さんは噓をついたの?

ねえ!教えてよ!僕はAIを潰したの?それとも…人間をこの手で殺したの?


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世界を巻き込んだ平凡なサーカス団 九条 夏孤 🐧 @shirahaku

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