第5話 ある出会い(中編)

N…ナレーション

アサギリ…アサギリさん。自由人

ハルノ…ハルノくん。新卒でアサギリの同期

ナカノ…お嬢(ナカノお嬢)。オペレーター。先輩



──────────────


N

「ハルノは絶句した。昼休み中にお昼を食べてないから、と喫茶店に連れ込んできた先輩が、とてつもなくデカいパフェを食べ始めたからだ。」


アサギリ

「ん〜〜!!!凄く美味しいよこれ!君も食べるかい?」


ハルノ

「いえ……食べないっす……」


N

「ハルノは既に昼休み中にご飯を食べている。いつ死ぬか分からないようなタフな環境の初日なので、大好きな牛丼を腹いっぱい食べてきたらしい。オマケに野菜ジュースも飲んで体に1ミリも隙間が無くなっている。」


アサギリ

「残念だなぁ。美味しいのに。」


N

「アサギリは口いっぱいにクリームをほおばって幸せそうにしているので、ハルノは苛立ちを隠せずに語気を強める。」


ハルノ

「いつまでここにいるつもりなんですか」


アサギリ

「ん〜あと30分もすれば食べ切れるよ。君はお腹いっぱいなんだろう?運動する前に満腹なのはいただけないねぇ。」


N

「恐らく、今全力疾走すればすぐゲーしてしまうであろうハルノは何も言い返すことが出来ない。自己管理もできないこれだから新人は〜とほっぺを人差し指でツンツンしてくるのも、けることができない。」


アサギリ

「まあ同期なんだけどね。」


ハルノ(そういえばそうじゃん)

「そういえばそうですね」


アサギリ

「ん〜だからタメ口で話して欲しいな〜なんて思うんだけど?どうかな?」


ハルノ

「仕事なので、敬語です」


N

「ハルノは毅然とお断りを入れるが、それすらアサギリはひらりとかわして魅せる。」


アサギリ

「ほほ〜ん。プライベートなら普通に話してくれるってことかい!?」


ハルノ

「なんでそうなるんですか。というか、ベタベタ触らないでください」


アサギリ

「あんっ。もうイケズなんだからな〜。」


N

「パフェを挟んで乳くりあう2人の音声を聞いてナカノは意外と2人は気が合ってて安心すると同時に、これは漫才だ、漫才を見せられている、と思った。」


アサギリ

「そんなだから妹さんからも距離置かれるんじゃないのかい?」


ハルノ

「っ!?

なんで……」


N

「アサギリの問にハルノは苦虫を噛み潰したような顔をしてみせた。下唇を噛み締め、目の焦点が激しく動き回り、陰りが見える。

そんなハルノを見てアサギリはニマニマと笑いながらこう続けた。」


アサギリ

「どうして君が警察署に配属されなくてニート生活していたのに、途中からこの会社に来たのか当ててあげようかい?」


ハルノ

「…やめて……ください」


アサギリ

「君が訓練所で問題を起こしたせいで、家で妹ちゃんが1人になって、その間に…なんてねぇ……」


ハルノ

「やめてください!」


ナカノ

「アサギリさん!そこまでですよ」


N

「ハルノはついにアサギリの胸ぐらを掴んでしまった。そこでナカノも遅ればせながら仲裁を入れる。」


アサギリ

「おやおや……少しやりすぎてしまったかな?顔が真っ赤だよ。私の胸元を見て興奮してしまったんじゃないだろうね?」


N

「アサギリのカッターシャツは第3ボタンまでしか閉じられていない。普通の男ならどんなに腹が立っていてもついチラ見してしまう誘惑だが、ハルノはしっかりとアサギリの目を睨んでいる。」


ナカノ

「アサギリさん、もう挑発しないでください。喋ってないで早くパフェ平らげてください。ハルノさんも落ち着いて、一旦手を離しましょう?」


アサギリ

「しょうがないな〜。ほら、パフェ食べたいから離してくれるかい?」


N

「自分から吹っかけといてしょうがないとは……アサギリは黙れと言われた返しに、元気に返事をした。ハルノは深く深呼吸をした後、アサギリのカッターのボタンを上まで閉めてあげた。」


ハルノ

「どうしてあんたが知っているんですか?」


アサギリ

「ん〜?何の事だい?」


N

「アサギリはあえて知らないふりをする。」


ハルノ

、どこまで知っているんですか?」


アサギリ

「んん?結構知っているよ〜なぜならそういうのをまとめた資料を貰っているからね。お嬢も貰ったよね?」


ナカノ

「う、うん。ごめんね。私も知ってた」


N

「ナカノお嬢はなるべくハルノを刺激しないように気をつけて発言をした。人が怒っているところにいるのが苦手なのだ。」


ハルノ

「……」


アサギリ

「他にも色々載っていたよ。君のスリーサイズとかもね♡」


ハルノ

「……」


ナカノ

「…まあまあ、ハルノさんも私たちの資料を貰ってますよね?」


アサギリ

「そうそう、お互い様さ。とは言っても私の過去は1行で済まされていたけどね。」


ハルノ

「もらいましたけど…覚えてません。よく覚えてますね」


アサギリ

「ふふふ、私は1度見たら中々忘れないよ。君のスリーサイズだってバッチリ…」


ハルノ(無視)

「このパフェの正式名称とか覚えてます?」


アサギリ

「ん〜…ウルトラなんとかスペシャルなんとかかんとかパフェだったような気がする!」


ハルノ

「……

正解は『店長特製スペシャル大盛りパフェ』です……」


N

「自信満々なアサギリの顔が固まり、3人の間に重苦しい沈黙が流れる。」


アサギリ

「まぁねまぁね!君のことだけは覚えておきたかったから!てか凄いね!よく覚えていたよ。私ですら覚えてなかったのにね!」


N

「頬を紅潮させながら場を取り繕おうとするアサギリ。心なしか涙目になっている気がする。

ついにハルノも堪えきれなくなって笑ってしまった。」


ハルノ

「アッハハ!!すいませんっ。後ろにポスター貼ってあるので……」


N

「アサギリが振り返るとそこには丸坊主で口ひげを蓄えた、絶対パフェとか作らなそうな大男の写真が載ったポスターがデカデカと貼ってあった。そこには確かに『店長特製スペシャル大盛りパフェ』と書いてあった。

アサギリも頬を膨らませて吹き出してしまう。その光景を見てハルノも一緒にお腹を抱えて笑う。ついさっきまで険悪なムードだった2人は店長のおかげで、少し仲良くなった気がした。ちなみにナカノは1度聞いただけで覚えていたのでフリップに答えをバッチリ用意していた。」


────────


N

「アサギリは普通に大食いの人でも食べ終えるのに1時間くらいかかりそうなパフェを、談笑しながら20分で食べ終えた。同じ時間をかけてコーヒー1杯をゆっくり飲んだハルノは、満足そうに器を置いたアサギリと、本社でずっと待ってくれているナカノに向けて手を着いた。」


ハルノ

「さっきはすいませんでした……2人にも、妹の件、手伝って欲しいです!!」

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神のみぞ知る いちか女史(わっきー) @IChikaps

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