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――と、また画面がノイズに覆われ、復帰した。
今度はロボ研の活動内容PVの続きである。一人の少年、たぶん
「ケイちゃんの時の制作記録ビデオだー。カイチョーこの頃からメガネかけちゃって、面影あるなー」
マスターが状況も忘れてのどかな感想を漏らした。たしかにこれは何かほっこりしますな……って、それどころじゃない。
みたび画像が乱れ、復帰した時にはまたロボ研とは関係ない映像を流していた。
今度大写しになったのはわがマスター、青空ひまわり。ちょっと幼い印象を受けるから
「やりそうなヤツだとは思ってたが、やっぱ早弁してたか」
ロン殿が生ぬるい笑みを浮かべてマスターを向く。
「う。けんこーゆーりょーじはお腹が減るんだよー」
さすがに赤面して言い訳するマスターにかぶせるように、学内放送から男性とも女性とも判別付かない、機械的な音声が降ってきた。
「これがロボ研究会の日常である。こんなふざけたクラブがわれらが穂妻学園に存在していいのか。学生諸君はよく考えていただきたい」
ことここに至って、ようやく吾輩とマスターはこの状況に結論を得た。二人して顔を見合わせる。
「これって……」
「放送ジャックだ!」
叫ぶが早いか、マスターはロン殿を置き去りにしてダッシュした。吾輩もそれに続くが、人並みの運動能力しか持たない脚ではとても追い付けない。しかし後ろ姿を見失っても行き先はもう分かっている。
放送室だ。
どたばたと放送室に駆けつけると、中ではすでに会長殿が狂ったように――狂ってるんだけど――明滅する大小多数のモニタの光を受けながら、常人離れした打鍵速度で必死に
「カイチョー! PVがジャックされて」
「分かっている!」
マスターの問いかけを食い気味に、怒気をはらんだ声が返ってくる。この人のこんな余裕のない姿は吾輩これまで見たことがない。
「ボクになにかできることってない?」
会長殿の様子を見て、のんびり問答をしていられる事態ではないと悟ったのだろう。マスターは最低限の言葉のみで、
「青空はとにかく配信を正常化することに専念してくれ。それでこちらは
「りょーかい!」
指示を受けて、マスターも
「吾輩にもなにかお手伝いできれば」
「だめだよ、ミケ!」
一歩踏み出しかけた吾輩を、これまためったにないマスターの切羽詰まった声と表情が制した。
「ロボだってネットにつながってるんだよ。この状況でヘタに手出しして、ミケまで
「ア、アイアイサー」
吾輩はあたふたとケイ殿が待つ放送室の
「一体誰がこんなことをしたのでありましょうか?」
なんとなく答えは推測できるが、ぼーっと突っ立っているだけというのも間がもたない。吾輩が口にした疑問に、これまたすることのないケイ殿が答えた。
「確証は持てません。しかし堅牢な学園内放送ネットワークに侵入する技術力。ことさらにロボ研をおとしめる映像を選び抜き編集する情報収集・処理能力から<推理>しますと」
「サイバー部、だな」
相変わらず目と指は忙しく
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