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「
そのままずずい、と教卓を占拠する。中途半端に伸びた髪には寝ぐせが付いたまま。外の光をほとんど浴びていないなまっちろい肌。顔面には脂が浮いている。食べすぎと運動不足ででっぷり太った体。それを包むのは露出度の高い女の子のイラストがでかでかとプリントされたTシャツだ。「TORIKAZE-KUN」と名前らしきローマ字が振ってある。……
「大西、今は大事な打ち合わせの途中」
会長殿も抵抗を試みるものの、やせ型と肥満体型の重量差は悲しい。ひともみで脇にどかされてしまった。
「成果の上がらない話をいくら続けても時間の無駄でおじゃるよ。そんなことより、今日はオヌシらにいい話を持ってきたのでおじゃる」
大西、と呼ばれたこの誰もが不快感を抱かざるを得ない印象の男子は、ぎょろりと脂ぎった目を教室にめぐらせた。血走った視線が人間三人をきれいに
「ロボ研はもう解散して、我々パソコン・サイバー部に吸収されるでおじゃる。そのほうが結局は諸君のためになるでおじゃるよ」
吾輩は起動してまだ半年ほどだが、もう何度もこの人と顔を合わせているし、ついでに同じ台詞も聞いている。
吾輩も大西……殿も自ら言ったように「パソコン」の後にわざわざ一言追加しているのは、
広い「第一コンピュータ室」を拠点とするのが、古くは簿記部の系譜から連なる、清く正しくビジネスソフトの使い方を学ぶ「パソコン・ビジネス部」。
中規模の「第二コンピュータ室」に巣食うのが、由緒正しいオタク集団、その気になればウイルスだって創れるというのがごろごろいる「パソコン・サイバー部」。
他にeスポーツ部、AIボードゲーム部、動画配信部などもコンピュータ系のクラブになるが、とりあえず単に「パソコン部」と言っただけではこの二つを区別する必要が生じてくる。
「いい加減飽きるほど言っているだろう。その提案は却下である」
肉体的には重量差で押し切られたが、精神的にはまったく譲ることなく、会長殿は敢然と大西殿の申し出を断った。
「二十世紀末以来脈々と続いてきた我らロボ研独立の伝統。私の代で
「そんなちんけなプライドにすがり付いている場合でおじゃるか?」
大西殿もまったく動じることなく、会長殿、ひいてはロボ研全員に相対する。
「会員わずか二名。この第三コンピュータ室を割り当てているのももったいないと、自治会でもたびたび議題に上がっているのを知らないわけはないでおじゃろう?」
「サイバー部部長の指摘は理にかなっています」
ケイ殿が口をはさみ、両目のプロジェクタの表示が再び変化してパソコン・サイバー部とロボ研の予算と必要経費の比較グラフを描いた。サイバー部の財政規模はロボ研の十倍以上、しかもロボ研のほうは赤字だ。
「パソコン・サイバー部に吸収されれば、ロボ研が現在苦心して捻出しているメンテナンス費用なども容易に補填可能です」
ケイ殿の態度は相変わらず超然としているが、吾輩は知っている。彼女が人間を呼ぶ時、「様」を付けないことはほとんどない。
「ですがそれでも、ロボ研がパソコン・サイバー部に吸収される提案には反対します。その理由は……解析不能」
ピーと
「そんなつれない返事をしないでおくれ、
大西殿の声になにかぬめっとした、直感的に不快な響きが混ざった。目の光も好意……なのだが、皮一枚はがしたその奥には何とも言えない不気味な色を感じさせる。
「吾輩はまだ歴史を語るほど経験を積んでいないのでありますが!」
大西殿のまき散らす不快な空気に耐え切れず、吾輩は大声で発言した。とにかくこの空気を強引にでも
「ロボ研はあくまで独立したクラブとして活動していくのであります。部外者の口出しは控えていただいて、早々にこの場から立ち去っていただきたいのであります!」
吾輩の
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