となりのその子はなんてーの?
8
「ふあぁ、こんな陽気のいい日の朝っぱらから校長のしかつめらしい訓辞なんて聞くと、眠くなっていかんねえ」
始業式が終わって
「それでなくても夕べは嫁とめくるめく一夜のあと、寝落ちしたところを幼馴染に起こされて、メイドの朝食をいただいた後、妹の素材集めと娘のスキル獲得の面倒を見てねえ。
ちなみにいま言ったの、全員中身は男なんだが」
そのまま慢性的に二日酔いの空気を身にまといつつ、聞かれもしない私生活を語りだす。
最近の子供は理解が早い。それにゲームだって大人よりやっている。ほぼ全員が、なにかのゲームの話なのだろうと納得した空気が教室を支配した。
そして早くもこの桜子先生殿の性格を見切ったようだ。
(この人の言うままに動いていたら、人間ダメになる。この穂妻で有意義な一年を送るためには、自分たちがしっかりしないと)
そんな無言の了解が、生徒たちの間で飛び交った。
この先生殿、生徒の受けた印象のように度を過ぎてルーズで放任主義のように見えるが――実は全くその通りである。
マスターと吾輩は、さる事情で
「まあかったるいけど、年度初めは恒例の自己紹介から行ってみようか。出席番号1番」
「さりゅーじる!」
例の口癖とともにマスターががたんと席を立った。続いて吾輩も教卓の隣、
「
集中する視線に臆した様子もなく、マスターは明るく一気に自己紹介を済ませた。教室から拍手が飛ぶ。
「もののついでだ。そちらのロボ君にも一言いただこうじゃないか」
「あ、アイサー」
先生殿の呼びかけに我に返って、吾輩は一歩前に出た。
「ご紹介にあずかりましたミケランジェロであります。お気軽にミケとお呼びください。得意分野は家事全般。それと頭脳は一応コンピュータですので、覚えようとすれば必ず覚えますし、忘れようとすれば必ず忘れます。ただし
ぺこりとお辞儀する。するとクラス全体、主に女子から、マスターに勝る拍手が送られた。
ロボの口上にクラスが盛り上がる中、さっきの窓際の一番後ろの席の男子だけは拍手を送らず、熱のこもった瞳でこちらを見続けているのを、吾輩は<
「……ロン・トイトイ。中国出身。中等部からの編入生。得意科目は数学と物理、苦手科目は日本、じゃない国語。この国には来たばかりなので、不慣れで迷惑をかけることもあるかと思うが、色々教えてもらえるとありがたい」
ぱちぱちぱち。
全員の自己紹介が終わると、先生殿はかったるそうに立ち上がってタブレットを拾い上げた。
「と、こんな面子でこの一年の付き合いになるわけだが。式の前にも言ったとおり、あたしの教育方針は『生徒の自主性を最大限尊重する』だ。あたしの方から諸君にあれこれ小言を垂れるような真似は極力やりたくない。仮にもこの穂妻学園の門をくぐったからには、
なんとも恰好つけた言い回しだが、先生殿をよく知っている吾輩達が分かりやすく翻訳すれば「このクラス、放任主義で行くよ」ということだ。
「とりあえず、クラス委員長をはじめとして、それぞれの担当を決めませんか?」
このまま放っておけばこの
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