三日目 アイドルをしたい君

夢を見た。

好きな○○○と遊ぶ夢

幸せそうに笑う○○○

どんなときでも笑顔を絶やさない君が好き

こんな僕でも受け入れた君が好き


だけど君はここにはいない。


嫌な夢を見た。楽しい思い出がたくさんつまった。とても心地がよくて夢から覚めるのが辛い。でも起きて支度しないと、、、だって君があそこで待ってるから。


僕はいつも通り屋上でサトナさんを待っていた。アルマジロの人形アロマさんを抱き抱えながらの読書も慣れたものである。だんだん温かくなるアロマさんの毛繕いをしているとサトナさんがやって来た。

「やあ、少年。今日も絶好の自殺日和だな!」

「そうですね、でも今死んだらカラオケいけなくなりますよ」

「それは困る!」

なんだか変だ。テンションが高いのはいつものことだけどいつもより高すぎる。無理している気がする。それに目にくまできてる。本人は隠してるつもりだけどわかる人から見たらバレバレだ。もしかして昨日学校サボったことでまた親になにか言われてたのだろうか?僕のせいでまた誰か傷つくのかな、、、

「これはただのゲームのしすぎで出来たものだから君のでせいではないよ」

「・・・え?なんで」

「いつもより顔を見る回数が多いのと、なにかに遠慮しているように見えた。ここから君が要らぬ心配をして、自分を責めてるのではと考えたからだよ」

「意外と考えてるんですね。大体あってますよ」

「頭がいいのが取り柄なものでな。まあそういうことだからあんまり気にしないでくれ」

「わかりました」

「じゃあ、放課後校門前集合で。あと、昼休みはこれなさそうだから先に伝えとくよ」

そう言って走り去ってしまった。僕はアロマさんをぎゅっと強く抱き締めながら少しの間ボーとしていた。


少し時間がたった頃、あることを思い出す。そうだ、昨日弁当を忘れた人がいたな。弁当箱は昨日のうちに綺麗にしといたからあとは届けるだけ。今日は3限が理科で特別教室を使うはず。僕は重い腰を上げ教室に向かうのだった。

誰もいない教室。いつも通り僕の机には花瓶が置かれてる。毎日水を変えて、花が枯れたら花を変えて、本当に凝ってるなあと思いつつ花瓶を片付ける。弁当を忘れたクラスメイトの、、、いや友人の机に向かう。佐野さのエイトと高梨たかなしハルヒ。佐野くんは怖いものが苦手だけどいざというときに頼りにある人、高梨くんは見た目はいかついけどめちゃくちゃ優しい人、二人とも僕の大切な友人だった。弁当をおこうとしたとき高梨の机の中に気になるものがあった。三人で買ったストラップだった。

佐野と高梨と僕の出会いは本当に偶然だった。

佐野が僕の席を、僕が高梨の席を、高梨が佐野の席に座っていたことから三人で行動していた。最初は距離があったけど趣味が三人とも読書だったことから一気に距離が縮まった。このストラップだって佐野が「最初に座った席の人に贈ろうよ」と言って三人で買ったものだった。

「懐かしいな」

ポツリとつぶやく。今はもう話すらできないけど、それでも僕は二人を親友だと思うよ。そんなことを思いながら教室をあとにした。


放課後、僕は校門に来ていた。たくさんの人とすれ違う。サトナさんは白衣を着ているからすぐに見つかる。サトナさんも僕を見つけたらしくこっちに駆け寄ってきた。

「こんにちは、サトナさん」

「やあ、少年。やっと例の場所に行けるのだな」

いつも通り目をキラキラさせながら話すサトナさん、なんだかほほえましい。やっぱりというか行く道中の会話なんてものは存在しない。それでも楽しい。

「着きましたよ。ここがカラオケです」

繁華街にひっそりと建つそこは僕がもともと働いていたカラオケ店だ。見た目は古いけど機種などはしっかりしたところだから大丈夫だろう。店の前まで来たところでサトナさんを止める

「ん?行かないのか少年?」

「僕はここで働いてるので裏口から入ります。一人で手続きできますか?」

「・・・何事もチャレンジが大切だ!」

少し心配だが信じてサトナさんを見送る。

「いらっしゃいませー。1名でよろしいでそうか」

「は、はい」

「でしたら・・・」

店員はなれた手付きで手続きを済ませる。それを見たあと僕はやるべきことをしに言った。

裏口には人はおらず、寂しい廊下を一人進んでいく。店内は相変わらずぼろぼろだななんて思いながらサトナさんが入った部屋に入る。彼女は僕に気がついていないのか歌い始めていた。・・・うまい。音もしっかり取りつつアレンジしている。たまに踊ったりしているが全然息を切らしていない。

「・・・アイドルみたい」

歌い終わってから思わず言ってしまう。サトナさんも僕に気づいて驚く。

「少年いたのか!?いつからいたんだ?」

「最初からいましたけど、、、」

「う、気づかなかった。」

「それにしてもすごかったですね。本物のアイドルみたいでかっこよかったです」

「まあ、アイドルになりたかったからね、、、」

「今は目指さないんですか?なれると僕は思いますよ」

何も考えず僕は本心で言う。実際に歌はうまいし、体力だってある。サトナさんだったらなろうと思ったらなってしまうような気がしたが

「・・・」

サトナさんの顔がだんだん暗くなっていく。ここでぼくは彼女の地雷を踏んだことに気づく。しまったと思い話を変えようと思った時、

「よし、今日だけわがまま言おうかな?」

マイクを握り歌を選ぶ。さっきまでとは違い今度は思いっきり歌い踊る。僕はアロマさんと一緒に合いの手をする。


「私ね、アイドルになって■■■くんにいっぱいかわいいって言ってもらうの」


「・・・ッ!」

昔の思い出が蘇る。違う、彼女はもう、、、

「少年?なにかあったのか」

「い、いえなんでもないです。というかもうこんな時間ですよ。そろそろ帰りますか」

時計の針はそろそろ9時を指すところだった。あんまり遅いとサトナさんに迷惑がかかる。

「そうだな、、、ありがとう少年」

僕達は荷物をまとめて店を出た。


帰る途中、僕はとあることを思い出したのか立ち止まる。

「どうしたんだ少年、忘れ物でもしたのか」

「夏祭り行きませんか?」

確か、三日後に夏祭りがあったはず、、、そう思い思い切って誘ってみる。

「親の機嫌次第かな、、、誘ってくれてありがとう。それじゃ、また明日」

そう言って走り去っていく。なんだがモヤッと押した気持ちで僕は歩くのだった。





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死にたい君の横に立つ @kitakita1103

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