第4問目 何なの?

「あんた今、のろいって言った?」

「だってさ、帆月ほづきはおかしいと思わないの?」

「何がよ」

「他の教科の出来はそこそこで、国語なんかめちゃくちゃ得意でしょ? それなのに、算数だけが不自然に悪すぎるなんてさ」

「うーん、まあ言われてみればそうなんだけど……てか、何であんたがそんなこと知ってんのよ!」


 セシルはインコのくせに「ヤバっ」て顔をしてから、尻もちをついたままの私のひざの上に止まった。


「とにかく一つだけ言えるのは、キミがこの依頼とあといくつかをこなして、『鉄のステージ9級』になれば、その分だけ呪いが軽くなるってこと」

「ふーん、何か夢にしてはやけに理屈っぽい感じがするけど……ま、いいか」


 ――それから私は、何回か尻もちをつきながらも無事に回復草を集めた。


    ◇


「それで我妻あがづま様、続けて依頼を受けますか?」

「えーっと……」


 カウンターの向こうで、綺麗きれいなお姉さんがにっこり笑って言った。

 戸惑とまどう私。


「セシル……この人、誰?」

「受付じょうだよ。定番じゃん」

「いや、そうじゃなくてさ」


 さっき取ってきた回復草をカウンターに置いたら、フッて消えて代わりにこの人が突然現れたのだ。


「帆月が依頼を達成するたびに、最初のうちは一人ずつ街の人が現れるのさ」

「……どゆこと?」

「キミが頑張るほど街がにぎやかになるんだ。呪いも軽くなっていくし、いいことづくめじゃんか」

「どうされます? 我妻様」


 お姉さんがもう一度聞いてきた。


「いや、あの……帰ります」

「はあ!?」


 セシルが頓狂とんきょうな声を上げた。

 耳元で大きな声を出さないでほしい。


「承知しました。ではお帰りになる前に左手をお出しください」

「ひ、左手? ……こうですか?」

「はい、ポチっと」

「わわっ!」


 お姉さんが私のてのひらを指でぷにって押すと、手の甲が光った!

 白っぽい四角い形で。


「これで冒険者登録されました。我妻様は現在、『ゲストステージ』です」

「ゲ、ゲスト?」

「手の甲を指で三回タップすれば、現在のステータスを確認できます」

「はあ……でもずっと光っていられると、ちょっと困ると言うか……」

「他の方からは見えません。ご安心ください」

「あ、そうなんですね」


 私がほっと息をつくと、お姉さんはカウンター近くのドアを手で示した。

 何の変哲へんてつもない、普通のドア。

 手の甲の光は、いつの間にか消えていた。


「お帰りの際は、そちら『目覚めのとびら』からどうぞ」

「もう帰っちゃうの!? 帆月」

「うん……何か分かんないけど疲れた」


 夢の中だってのに、妙に眠たい。

 セシルがピーピー言ってるけど、私は構わずにそのドアを開けた。


    ◇


 ――ピピピ、ピピピ……


 目覚ましのアラームが鳴ってる。

 私はむくりと起き上がり、大きなあくびを一つした。


「――変な夢」


 アラームを止めると私はベッドを出て、学校に行く支度したくを始めた。

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