第7話 お泊りイベント
前回のあらすじ:脱出したい!→トイレ!→うわぁぁぁぁぁぁ!→ありがとう友よ……。
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なんやかんやでヤンデレ妹から逃げ切った僕は、現在、親友ポジのキャラである久樹の家に泊まっている。
コイツの家に泊まるどころか、家に上がったことすら初めてなので、久樹の奴は割と喜んでた。
「ここが俺の部屋だぜ」
『友近』という文字が彫られたドアプレートが掛かっている部屋の扉を開ける。
目の前に広がっている部屋には、ゲーム機や漫画、たまに服が落ちているというテンプレズボラ男子高校生の体現みたいな部屋だった。
しかし、ベッドはデカい。
そういえばコイツは彼女持ちだった。
こんなデカいベッドで、そりゃもう彼女とくんずほぐれつの……。
想像したらイライラしてきた(下ではない)ので、一度大きく深呼吸をした。
そんな様子を見た久樹が「そんな俺の部屋変か?」と聞いてくる。
なんだか態度すらも癪に思えたので、取り敢えず頭を軽くはたいておいた。
久樹は「んな理不尽な!」と言うと、僕への意趣返しとしてかスマホを取り出すと、彼女とイチャイチャしているときの写真を見せられる。
ただ、イチャイチャしてる写真が大画面で写されている方より、下の方の小さな写真に嫌に肌色が見えたのが最悪だった。
なんで他人の情事を見せられないといけないのだろうか。
悪魔の所業である。
「ふあー、今日は疲れたし眠いから寝る」
「昼寝かー?明日に響くぞ、まあ、ご飯時になったら起こしてやるよ」
「あんがとね」
そういうと、久樹はこれから寝る僕を気遣ってか、部屋から離れていった。
てかコイツ、よく友達にベッド貸せるな。
僕だったら絶対に貸したがらなかった。
いやほらさぁ、潔癖症って訳じゃないけど、なんか自分のベッドに他人が不躾に乗ってきたりするのって嫌じゃん。それだよ、それ。
まあ、こういうところに久樹の優男っぷりが出ているのだ。
彼女との惚気だとかがあるのが玉に瑕ではあるが、彼が僕の親友ポジのキャラでよかったという気持ちの方が圧倒的に多い。
二回ほど連続であくびをした僕は、久樹のデカめなベッドに横たわる。
別にイカの匂いが漂ったりとかはしない。
何ならイケメンパワーかは分からんが、爽やかな香りがする。
……男のベッドでこんなこと考えてるの、冷静にキショすぎないか?
まあいいや、それよりも久樹の家の晩ご飯ってどんな感じなんだろ。
てか着替えとかも持ってきてないや。
久樹にTシャツでも借りようかな。
そんなことを考えていると、今日のことが自分でも思ったより疲れていたらしく、僕の意識はすぐに夢へと旅立ったのだった。
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「……い。……やく……きろ!」
「うーん……むにゃむにゃ?」
「――早く起きろボケェ!」
「ぐえっ?!」
くるまっていた布団を剥がされ、強制的にベッドから落とされる。
落ちた衝撃が体を貫き、僕の意識は突如として覚醒する。
とてもびっくりした。こんな陳腐な感想しか出てこないくらいには。
「ぐぁ~」とうめき声を上げながら、僕を楽園……もといベッドから突き落とした犯人の方を睨む。
僕の恨めし気な視線を受け取ったのか、件の犯人――久樹友近は「すまんすまん」と苦笑しながら僕におざなりに謝った。
「でも、言っても起きなかったお前も悪い」と、余計な一言を付け足す。
「むぅ……」
まあ、正論なのでこちらは押し黙るしかないわけだが。
そういえば、ずっと倒れた状態のままだったので、いい加減起きよう。
僕はゆっくりと立ち上がると、めいっぱいのつま先立ちをして体を反らす。
大きい伸びをすると、腰の骨がボキボキと音を立てた。
次は指をくにくにと曲げる。第一関節と第二関節、力を加えると、共に音が鳴る。
こうやって、寝起きは体の骨を鳴らすのが日課だ。
少し痛いくらいに力を加えることで、寝起きのボンヤリ意識を飛ばせるし、何より骨が鳴るのが気持ちいい。
これが苦手な人間がいるらしいが、僕にはこれが不思議でならない。
「うげっ!やめろよ、その体中の骨を鳴らすやつ」
早速いたよ不思議人間。
まさか久樹、コレが苦手だったなんて。親友だと思ってたのに……。
「これの良さが分からない人間には……これでもくらえ!」
こうなったらやるしかねぇ、一日に二回しか発動できない、ボキボキの境地を見せてやるぜ!
僕は心の中でそう宣言すると、両手を両頬にあてがう。
そして首が、地面と平行になるように、思い切り捻った(絶対に真似しないで)。
首の関節が、ボキボキと……否、バキバキと音を立てる。
一日にならせる回数が少ないとはいえ、これを思い切り決められたときの爽快感は、僕にとって病みつきになるものだ。
一方で、骨を鳴らす音が嫌いな久樹殿は……
「ひえっ!やばいって、お前!それで首の骨が折れたらどうすんだよ!」
これでもかってくらい驚いて、僕の身を案じていた。
久樹、君って男は……。
『関節鳴らし』の良さが分からない人間だと侮っていたよ。
これの良さが分からないのが癪で、そんな思いをした意趣返しとして君の前で首をバキバキしたけど、それでも僕の体の心配をしえてくれていたなんて。
君はなんて出来た人間なんだ。
「久樹、僕はお前を見直したよ」
「は?なんでいきなりの上から目線?」
僕の発言に素っ頓狂な反応をする久樹を無視して、僕は「そういえば」と話をすり替える。
「なんで久樹は僕を起こしにきたの?」
「あー、そういえば言ってなかったわ。もう飯だぞ」
「こんなモタモタしてて大丈夫なの?」
「誰のせいだ誰の」
まさかもうご飯時だったなんて。
僕は久樹と一緒に、リビングへと行った。
ふわりと香るいい匂い、この匂いは、ハンバーグだろうか。僕の好物だ。
机の周りの椅子には、既に二人が座っていた。
久樹のご両親である。
「遅れてすみません。こんな美味しそうな晩ご飯を、ありがとうございます」
ご両親に挨拶をして、みんなで晩ご飯を食べた。
好物だから贔屓してるかもしれないが、久樹の母が作ったハンバーグは、どんな料理よりも美味しいと感じた。
僕の母が作るハンバーグも大好きだが、久樹の母が作るハンバーグとはまた違う。
やはり食は奥深いものだ。
「ごちそうさまでした」
ものの数十分で完食した僕は、せめてお手伝いさせてほしい、と久樹たちの皿を洗った。
こっちが急に押しかけたのに、こんなに温かい対応をしてもらっている手前、このくらいのことをするのはマナーの一環だろう。
楽しい晩ご飯の時間を過ごした後、久樹と共に部屋に戻り、一緒に格ゲーをした。
……友達の家でのお泊り会イベントも、存外悪くないかもしれないね。
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ちなみに私は首の関節と、手の指の第一関節と、手の指の第二関節と、腰の骨と、顎の関節と、足の指の第一関節と、足首の関節が鳴ります。
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僕はどうしても異世界に転生したい! あるままれ~ど @arumama_red_dazo
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