わたし⑧

「どうしようかなぁ……」



あの後、鐘が鳴った音がしたからここに戻らないといけなくなった。だからお話はできなくて、そしたら、


『どこに行ったらお前に会える?』


そう聞かれたからここを教えた。もうすぐ来るはずなんだけど、今とても困ってる。


(お客様ってことだよね?どうもてなせばいいのかなぁ……)


お城にいる時のお客様にはイスに座ってあいさつをするだけだった。けど執事様やメイド様たちがお客様のおもてなしするために色々準備してた。


(だから準備がいるはずだけど……)


何をすればいいのか分からない。


(わたしの準備の仕方は教えてくれるんだけどなぁ)


わたしの準備以外のことは何も教えてくれない。


(……いっぱい繰り返してるのになぁ)


教えられないと分からない。わたしは頭が悪いから。


(……本当に何にもできない出来損ないなんだなぁ……)


『お前は所詮何も出来ない無力な出来損ないです。そんなお前に価値を与えてやっているんだから私に感謝しなさい』


(…………ご主人様がやっぱり正しいのかな?)


よく思うこと。よく考えること。けど、


(……正しい人が目にあうのかなぁ)


これもよく思うこと。いっぱい繰り返し見てきたこと。

だからご主人様が正しくないんじゃないかと思う。これもよく考えること。


(……殺されることは何回もあるけど……ご主人様みたいなことにはなったことないしなぁ)


これも不思議。だって、


(……一番偉い人のはず何だけどなぁ?)


そして、一番偉くないのはわたし。なのに、



あんな目にあうのはご主人様。



(……へんなの……あ)



音がした。すごくすごーく小さな音だった。けど、なぜかよく聞こえた。


(こういう時のあいさつは)

「ようこそお越しくださいました」


顔が痛い。けど気にしちゃダメ。だってあいさつする時は笑わなきゃいけないから、じゃないと怒られるから。それに、



「わたしはあなたを歓迎いたします」



笑って言いたいって思ったから。だから気にしちゃダメ。



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