第10話 千代、お出かけするⅡ

そんなこんなゲームを見に来ている私達。ここでも私を置いてけぼりで、自分の気になるもののパッケージ裏を見ている。本当に好きなんだなと実感している。


「なんか、面白そうなゲームあった」


「最新作のFPSなんてとても面白そうです」


「FPSって何」


 私には言葉の意味が分からなかった。ゲームはほぼしたことがなく、たまにいとことする程度である。ゲーム機本体のことかしら。


「ファーストパーソン・シューターのことです。簡単に言うと、主人公の視点でのシューティングゲームですかね」


 シューティングゲームか・・・・。したことないな。


「それ買うの」


「いいえ、買うお金がないので。僕には、ラノベのほうが大事ですから」


 臼井君は本気でラノベ作家を目指している。ってことなんだ。夢ってことなのかな。でも、そういうのいいな・・・。


「それより結城さん。ゲームセンター行きませんか」


「ゲームセンター・・・。いいけど、先にお昼にしない」


 私は時計を見ながら提案した。


「それもそうですね」


 彼も快く承諾してくれた。私は、ショッピングモール内にあるハンバーガーショップに足を運ぶことにした。ここなら、お金がないと言っている、臼井君にもリーズナブルな価格で大丈夫だからだ。


頼んだものを手に取り私たちは、奥の席に着いた。少し早い時間だったからか、まだ席は空いていた。


「そういえば、臼井君はなんでラノベ作家になろうと思ったの」


 私は、とても疑問に思っていた。ゲームを我慢してまでなりたいラノベ作家。なんでそんなことを思ったのか。ラノベもそんなに読んでいない臼井君は、どこに魅力を感じているのか。


「最初は、お金ですかね。新人賞に入選したらお金もらえるじゃないですか。そしたら、ゲームを買えますし。それに出版されれば、印税やらなんやらでさらにもらえると思ったからですよ」


 私は唖然とした。笑いながら言う臼井君に。たかが、そんな理由でラノベ作家になりたいだなんて。侮辱にもほどがある。私は内心イラっとした。こんな人だとは思わなかった。


「でも、今は違います。最初の入りは、お金のためでしたけど。ライトノベルを初めて読んだとき衝撃が走ったんです。文章だけで読者を喜ばしている。素晴らしいものなんだと。僕は、小説とかは絵もないのに面白くないし、正直読むのはめんどくさいと敬遠していたんです。でも、読んで文章のことを想像する。そしたら、なぜだか笑っていた。すごくないですか。文章だけですよ。それで、僕も書きたいなって思たからですかね」


 ・・・、違った。臼井君は、入り方が特殊なだけで、ラノベを分かっている。そう思えた。


「そうなんだ」


 臼井君は笑顔をこちらに向けている。なんだろ。私、なんか変な感じがする。この人とは気が合うのだろうか。


「あの・・。早くゲームセンターに行きたいです」


 いつの間にか頼んだものをたいらげていた。


「ちょっと待って」


 私は少しペースを上げて食べた。そんなにもゲーセンに行きたいのだろうか。それより、そもそもお金無いんじゃないの。


 頑張って食べたせいで何やらおなかが痛い。そんなことをいざ知らず、ゲームセンターに連れてかれたのであった。


「何します」


「あの、ちょっとお手洗いに行ってきます」


「わかりました」

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ボッチも積もればリア充となる 虎野リヒト @konorihito

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