第4話 あいつ、何か企んでんのか。いや、誰も信用するな

 優里は俺の前を歩いている。俺はついていってるわけだが、こいつはどうも信用ならない。


 俺の経験上、なんの見返りも無しに優しくしてくるやつなんていない。大体が金か、俺に恨みを持った奴の罠だ。


 あいつはあの見た目で優里って名前だ。全く素性が分からないが、多分髪を染めた日本人か、ヨーロッパとのハーフって奴だろう。


 俺は馬鹿だが、例えそれが友達であっても人を簡単に信用してはいけないという事は経験から知っている。


 とはいえここがどこかも分からない。だからついていくしかねえ。……大丈夫、大丈夫だ。こいつが変なことしだしたら殺す。それだけだ。


「どうかした? そんなに睨んで。あまり睨まれると、僕も怖いんだけど」


「なんでもねえよ」


こいつずっと笑顔だが、気色悪い。別に胡散臭さは無い。しかし、笑顔なのに表情の奥は笑ってない様に感じるからだ。無理やり笑ってる感じ。何を考えてる、気味が悪い。


「あそこが王様が住われてる城だよ」


 こいつが指差す方にはでかい城があった。日本の城じゃない、ヨーロッパの城だ。行ったことがあるわけじゃないが、某夢の国にしかないだろこんなの。


「マジでどこなんだよここ……」


「ここは王都さ。大陸では一番大きな国の王様がいる街だよ」


 王都? 益々わかんねえ。わかるのは、こいつが嘘をついてないんなら、多分ここは日本じゃない。……駄目だな。考えるだけ無駄な気がしてきた。とりあえずはこいつについていく。これでいい。


「ここが冒険者ギルド。飲食店と一緒になってるから、ここでご飯も食べられるよ。それに職と宿も斡旋してくれるのも便利なんだよ」


 そういってこいつが指差すのは、木造で少し汚い大きめの建物だった。


「じゃあここで飯を食うんだな?」


「そういうことだね」


 やっと飯にありつけるってわけか。誰かが何か盛ってるかもとか、そんなこと考えてたらキリがねえし、食わなきゃ死ぬ。そういうことは食って考える事にするか。


「……おい、どうした」


 なんだ? ここが目的地なんだろう? 何故入ろうとしない。


「何故入らない。そこになんかあんのかよ」


 あいつは一瞬泣きそうになって、それから分かりやすい作り笑いを俺に向けた。


「……なんでも。入ろうか」


「おう」


 なんだよ、その感じ。……気に入らねえ。



 

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追放補助魔術師とはぐれ者転生者 ぽりまー @porima

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