第2話


「ほら、アイス買ってきたぞ」

「ありがと〜。大好きだよ~」

「お前それで言えばタダにできると思うなよ」

「…やっぱり?」

「当たり前だろ」


海の分のアイスを渡し、袋を開けて1口食べる。

あー、冷たくて美味しい。


「最近急に暑くなってきたね」

「今年は最高気温40℃行くらしいぞ」

「マジ?やってらんないわ~」


アイスを咥え、自転車のスタンドを立てたままカラカラと漕ぐ海は本当に暑そうで、汗をかいていた。

俺よりも少し小さい体躯にはこの暑さは辛いのだろう。

そしてアイスを齧る音が響く。

海はチラッとこちらを見た。


「なんだよ」

「ソーダ美味しそうだな~」

「お前ほんとふざけんなよ」


言わんとすることを察してしまい、目を逸らす。

すると意地でも食べたいようで、肩を掴んで揺らされる。


「ねーえー、翼~!それ一口ちょうだい!」

「分かった分かった!!暑苦しいわ!!!」


観念してアイスを差し出せば、そこそこ大きな口で食べられた。

お前の中の一口はどんだけ大きいんだよ……。

結局、半分以上食われた。


「あー、涼しかった」

「そりゃ良かったですね!!」

「お、怒らないで!?一口って言ったじゃん!」

「遠慮というものを覚えなさい」


2人で言い合っていれば、遠くから「おーい」と誰かに呼ばれる。

目を凝らすとクラスメイトの東条 真人だった。


「おー、真人じゃねーか!部活はー?」

「サボりー」

「おいコラ」


遠くで話すのも疲れるため、海に断ってから駐輪場を出て真人に近づく。

ガタイのいい体に日に焼けた肌。

運動部ならではの元気の良さも真人の良いところだった。


「いや、冗談だって。今日は放課後からグラウンド整備で休みなんだよ」

「あー、だからいつもより静かなのか」

「そういうこと」

「んで?どうしたんだ?」

「いや、特に用はないんだけど翼が見えたから声掛けただけ」

「なるほどな」


しばらく真人がこちらの様子を伺うような素振りを見せた後、口を開いた。


「あのさ、」

「なんだ?」

「その、あんまり無理するなよ。アイツも弱った翼とか見たくないと思うからさ」

「え?」

「……いや、俺が言うようなことじゃなかったわ。悪かったな」

「ん?えっと…」

「じゃあ俺も帰るからさ」

「お、おう。気をつけてな」


自転車に乗り、真人は帰って行った。

真人が何を言いたいのかよく分からなかったが、とりあえず海の元へ戻ることにした。


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