花が散った青い春に何の意味があるのだろうか
宮野 智羽
第1話
高校の6限なんてしっかり聞いている生徒がいるわけがない。
少なくとも俺は窓の外で騒いでいる隣のクラスの女子の方が興味ある。
窓側の席の特権で、体育をしている女子を眺めていれば名前を呼ばれる。
「おい戸田。ちゃんと話を聞け」
「だってこんな状況で集中できないっすよ」
そう答えると先生は渋い顔をして授業に戻った。
お、なんだ?今日はすぐに引いてくれた。
いつもなら『そんなこと言わずここの答えを書きに来い』とか言ってくるのに。
明日は槍でも降るのかな。
チャイムが鳴り、怠そうに挨拶をする。
担任が前の授業を受け持っていたこともあり、すぐに解散となった。
幼馴染の海を待つために昇降口に向かう。
鈍臭いアイツのことだからもう少し時間はかかると思うけど。
「すまん翼〜、やっと終わった…」
スマホをいじって待っていればヨタヨタと走りながら海はきた。
中性的な顔立ちの海の軽く結ってある髪は急いだからなのかほとんど解けかけていた。
「髪解けかけてるよ」
「え、ほんとじゃん…結んでー」
「待たせておいてそれか?」
「…自分で結びまーす」
海は口を尖らせながらも結び直した。
それを待ってやってる俺は相当優しいと思うよね。
「よし、おまたせ。あ、あの子可愛くない?」
「俺はお尻が大きい子が好きでーす」
「僕はおっぱいが大きい子の方が好き」
「お前マジで言ってる?どう考えてもおし…」
「待ってお願い翼。周りの女子の目が痛い」
そういえばここは昇降口だった。
ひそひそと耳打ちをし始める女子の視線に居た堪れなくなって2人揃ってそそくさと帰る。
「明日以降女子からの視線が冷たいだろうな〜」
「尻派の俺は救われてほしいけどな」
「え、翼だけずるい」
駐輪場で自転車にまたがりながら駄弁る内容は先ほどとあまり変わってない。
幸いにも帰宅部や今日部活がない人たちが一通り帰り終わった後だから良かった。
「ずるいも何も好みの話だしな」
「はーい可哀想な僕にアイス買ってきてくださーい」
「は?急すぎないか?」
「だって暑いもん」
確かにもう7月だし暑いのは分かるけどあまりにも理不尽じゃないか?
「ねーお願い〜」
「お前はめんどくさい彼女か」
「翼の元カノってメンヘラばっかりだもんね」
「そうそう…って何で海が俺の元カノ知ってんだよ。…誰から聞いた?」
「内緒♡」
「きしょいからやめてくれ」
「えー…でもアイスは本当に食べたいから買ってきて」
「人件費は?」
「がめつい男は嫌われるよ?」
「海に好かれてればいいわ」
「え、本当に僕のこと好きなの?」
「どうだ、ゾッとしたか?」
「翼からの愛情で暑いからアイス買ってきて」
「……くっそ負けたわ」
渋々購買に向かうも海は着いてくる様子はなく、ひらひらと手を振っていた。
本気でパシる気かよ。
人件費たっぷり貰うからな。
鞄を海に預けて購買に向かう。
購買のおばちゃんにアイスを2つ渡し会計をする。
「はい、ありがとうね。今日暑いから気をつけて部活頑張るんだよ」
「ありがとうございます」
あの優しそうな目はきっと運動部でもやってると思われたかもしれないが生憎こっちは帰宅部所属なんで。
なんならこれからいつも通り活動してる部活が終わるぐらいの時間まで駄弁り続けるから帰宅部の活動もしていないけど。
駐輪場に戻ると海は熱いのかぼーっとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます