第14話 落ちる仮面 残る仮面

ーー38ーーーーーーーーーーーーーーーー


パーティーの 準備は 1ヶ月前から

はじまっている

料理のメニューから 食材の 選定

ドレスの デザイン 素材選び

採寸 縫製 試着 etc・・・


しかし ライナーに 残された日数


残り1日・・・


明日には 隣の西の国へ行き

宮殿で もよおされる パーティーに

列席しなくては ならない

普通なら 仕上がった モーニング

などを スーツケースに

つめ込み 馬車で 出発しないと

間に合わない


そう 普通なら


「あーっ

明日だってのに なんの

準備も やってねぇーッ」


ライナーは 朝っぱらから パーティーの

事で 頭が いっぱい いっぱいだ

あの後 真夜中に 一旦 メイナの

実家で 寝ようと したが 心配で

眠る事は 出来ずに いる


「ちょっと 落ち着いて ライナー 今まで

パーティーに 出席した事ある かな??」


ライナーを 落ち着かせようとする

モルグン


「パッ・・・パーティーぐらい・・・

そう 成人式の パーティーに

出席したわ」


遠い 記憶を たぐりよせる

ライナー


「そう それなら 話しは 早いわよ

みんなの 服装を イメージして

目の前に 出す」


両手を 前に 突き出す モルグン


「えっ そんな事できるんだ」


感心する ライナー


「あっ そう言えば

トルーヴィルが キングサイズの

ベッドを 出して くれたわ」


うっかり忘れる ところだった

ライナー


「そう 具体的な イメージが 必要よ」


丸い 石の玉が 先端に ついた

ステッキを 一振りする モルグン


「成人式の イメージ・・・」


おぼろげな 記憶から ひねり出す

ライナー


「むむっ」


ボンッ


「こっ これはッ」


どう見ても 紋付き袴である

ついでに 一升瓶つき


「あーッ

なんか チラチラして そっち出たー」


じだんだを ふみ くやしがる

ライナー


「ねぇ これって 魔王の衣装なの??」


日本の 衣装であるが モルグンは

知らない


「モーニング とか

そういうの イメージ 出来ないかな??」


少し あきれ顔の モルグン


「モーニング??

やってみる」


集中するライナー


ポン


白い皿の 上に 目玉焼きと トースト

サラダが 出て くる


「ねぇ お腹 へってるでしょ」


ニヤニヤする モルグン


「いや そんな」


ギュルル


不意に お腹が なり 顔色が 赤くなる

ライナー


「ハッ とりま 食べるわ

もったいないし」


とりつくろう ライナー


「それじゃあ わたしのも

出して」


おいしそうなので モルグンも

欲しく なる


ポン


「いただきます」


エルフの里に ホッコりとした 時間が

流れる


「いや まて 急がないと」


急に 現実に 戻る ライナー


「衣装は 本人が 出した方が

イイんだけど 特別に わたしが

出して あげる」


仕方ないなぁ と言わんばかりの

態度の モルグン


「かたじけない」


手を 合わせ 感謝する

ライナー


「えっ??

ライナーは 馬車とか 乗り物を作って」


きょとんと する モルグン


「うん その方が イイかも

乗り物・・・馬車か

それより 早く 隣の国に

つく 乗り物・・・」


ポン

メキメキッ


ライナーが いろいろ 考えて

出した物が 森の中に 出現し

木々を なぎ倒す


「キャアーーー」


一気に 青ざめる モルグン


「これなら 時短に なるのは

間違いない!」


ライナーが 出したのは そう

ジャンボジェット機である


「ねえ これって 馬を何頭で

引くの??」


腰を ぬかし その場に

へたりこむ モルグン


「馬??

自走できるよ」


ハンドルの ジェスチャーを する

ライナー


「えーっと

足が はえるとか

そういう??」


モグラが 穴を掘る ジェスチャーを

する モルグン


「いや 飛ぶんだよ」


腕を ひらげる ライナー


「羽根を バタバタさせて??」


鳥の ジェスチャーを する

モルグン


「いや 滑走路を・・・

って 滑走路も 作らないと」


前ならえの ポーズを して

大切な 事に 気付いた

ライナー


「それって どれくらいで

作れるの??」


ポカーンと する モルグン


「普通は 3年くらいだけど」


頭を 掻き テレる ライナー


「でも パーティーは 明日よね」


冷静に 痛い ところを つく

モルグン


「うーん やめとくか」


パッと 明るく 笑う ライナー


「最初 ドラゴンでも 出したかと

思って ビックリしたわ」


心臓が 出そうなほど おどろいた

モルグン


「ゴメンゴメン」


モルグンの 手を にぎり

立たせる ライナー


「瞬間移動して 現地で 馬車を

つくりましょ」


おしりを はたきながら

解決策を 言う モルグン


「それが 無難だねぇ」


腕組みをし うなづく

ライナー


「あとは 所作ね」


ステッキを 持っている手の

人差し指を 立てる モルグン


「所作って 食べる時の??」


気分が 悪くなる ライナー

異世界に 来ても 箸を 使っている


「それも あるし あいさつ

とか いろいろ」


貴族には 貴族同士の あいさつが

ある


「なんか やっぱり 行きたく

ねえな」


めずらしく 泣き言を 言う

ライナー


「それじゃあ この里が

破壊されてもイイんだ」


めずらしく まじめそうな

顔を する モルグン


「いや よくない

先生 お願いします」


ペコリと 頭を 下げる

ライナー


「ウフフ

一緒に がんばりましょ」


ステッキを 手のひらに

ペシペシする モルグン


「キャアー

ドラゴン!」


腰を ぬかす ニパ

ライナーを 探して 来たのに

巨大な 物に ビックリする


「あっ これは 生きてないの

大丈夫よ」


モルグンが ニパを なだめる


「なーんだ

あれ モルグンさん 来てたんだ」


ちょっと 気まずい ニパと

すごく 気まずい モルグン


「あはっ ニパが 心配で 来ちゃった~」


動揺を さとられないようにする

モルグン


「すいません 心配させて」


低姿勢な ニパ


「で どうだったの??」


はじめて 聞く風の

モルグン


「あたいの 負けです」


くやしさが にじみ出る

ニパ


「そう・・・

スペシャル技は 使ったの??」


修行の 成果を 聞く

モルグン


「いいえ パワー不足に なっちゃって」


申し訳なさそうな ニパ


「そうなんだ

それじゃあ もっと 強く なろ」


とりあえず はげます

モルグン


「はい その前に ゴブリンの集落で

おもてなしが あるので

モルグンさんも よかったら」


さりげなく お詫びしたい ニパ


「ああ・・・あ ちょっと いそがしい

から また今度 ゆっくりとね」



ーー39ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃあ 先に ゴブリンの

集落に 行ってるから

ちゃんと 来てよ」


ニパは さわやかな 笑顔で

ライナーに 言う


「ああ すぐ 追い付くから 後でね」


ライナーは やさしく 送り出す


「うん」


小走りで ゴブリンの 集落へ

急ぐ ニパ


「さて

めちゃくちゃ過密だぞ」


腕組みをして 仁王立ちの

ライナー


「半分は 勇者様のせい だと思う

けど」


ズバッと 一刀両断する

モルグン

コケる ライナー


「もうっ いちいち 痛いとこ

つくよね」


手くびを クルッと 回し

指差す ライナー


「あはっ 痛かった??

楽しいわね」


ニッコニコの モルグン


「いや マジで そんな

時間ないから」


真顔に なる ライナー


「そうよね

ここの 雰囲気が そう させるの

かも」


ななめ上を 見まわす

モルグン


「ああ」


つられて 見る ライナー

視界に ジャンボジェット


「外は きな臭い 戦争の 話 ばかり

でも ここは いやされるわ」


ものおもいに ふける

モルグン


「うん そうだよな

西の国って ずっと 戦争を

してるんだよな」


一度も 行った 事は ないが

いろいろ 情報が 入って くる


「そう わたしも 半ば 強制的に

かり出されて 行ったの」


自分の 経験を 話し はじめる

モルグン


「新米魔女の わたしで さえ

何十人と 手に かけて 来たわ

それこそ 船を 何そうも

沈めた」


自身の 肩を 抱く モルグン


「そうなんだね」


なんだか ライナーの 方が

悲しくなって くる


「だから 罪滅ぼしね

こうやって エルフの里を 守るのも」


かがやくような 笑顔を する

モルグン


「でも 一緒に 西の国に 行って

ツラい記憶とか 思い 出さない

かな??」


少し ひっかかりを 感じる

ライナー


「わたしは 全然 フッきれてるから

大丈夫!」


あっけらかんな

モルグン

今まで つけて いた 仮面を

外せる 相手を えたのだ


「うん 安心したよ」


つられて 笑顔になる

ライナー


「それじゃあ 準備の つづき

やりましょ」


そでを まくる 仕草を する

モルグン


「ああ やろう」


チカラこぶを 見せる

ライナー


その頃


「ねえ ライナーが 好きそうな

女は 集めているんで しょうね」


ニパが ゴブリンの長に たずねる


「もちろん 魔王さまを とりこに

する 悩殺ボディの

上物ばかりだよ」


長は ジェスチャーで セクシーを

表現する


「ニパこそ 今日は ちゃんと

魔王さまを 連れて くるんだろうな」


少々 いら立ちを かくしきれない


「もちろん 念押し して おいた

から 必ず 来るわ」


自信まんまんな

ニパ


「昨日も 来るという

てはず だったが 結局

来なかった では ないか」


腕組みする 長


「あれは トラブルが 発生した

から 仕方ないの」


またかよ という

表情の ニパ


「それで エルフの里は 安定した

のか??」


少し 気がかりな 長


「もちろん 安定しないと

ライナーが こっちに 来れない

じゃない」


自分自身の 努力を ありありと

みせつける ニパ


「なんか コワい女に なったな」


目が キョトンと する 長


「そう??

ライナーの おかげで 変われたの

かも」


苦笑い する ニパ


「たくましいな

お前たちが いてくれたら

この ゴブリンの集落も

安泰だーーーッ」


両手を ななめ上に つき上げ

天を あおぐ 長


「それは ちょっと 大げさ じゃあ

ない??」


クチを 手で かくし 笑う ニパ


「いや 期待して おるぞ」


おのが アゴを こする 長


「あはは」


ニコニコする ニパ


「よー

遅く なったな」


ライナーが 肩に 猫を乗せて

ゴブリンの集落に くる


「これは 魔王さま

ごきげん うるわしゅう」


もみ手をし 出迎える 長


「どうしたんだ

えらく かしこまって」


また 一段と 持ち上げようとする 長に

警戒する ライナー


「今日は この前とは 比べものに

ならない美女を 10人 とりそろえました

必ず 魔王さまの おクチに 合うよう

入念に 調べましたゆえ」


リサーチ能力を アピールする


「だから さぁ 喰わねえの

人を」


まいどの 事ながら 話を聞かない 長に

少し イラッと する ライナー


「またまた 人を 喰ったような事を」


半笑いの 長


「誰が うまいこと言えって」


見事に 流れるような

つっこみを 入れる ライナー


「でも この向こう側に ある 池で

喰い あらされた 遺体が あったとか

なかったとか」


ニヤリと 笑う 長


「それは 違う」


自分では ないと 否定する

ライナー


「そうですよね

魔王さまに しては 喰い かたが

キタナかった らしいので」


やはりという 表情の 長


「お おう」


なんだか 妙な 納得の されかたで

肩すかしを 感じる

ライナー


「ささ まずは 食事に なさって

下さいませ」


建物の 中に 案内する 長

内装が ガラッと 新しく 清潔に

改装して あり

まるで 別世界だ


「ああ そうさせて もらうぞ」


逆に 緊張感が 出てくる

ライナー


「食事を 持って まいれ」


給仕係りに 命じる 長


「ははっ」


女たちが あわただしく 動く


「さあ 奥の部屋に 入って お待ちを」


以前には なかった 板張りの

部屋が 用意されて あり

居心地が よい よう 改良されて いる


「ああ」


なにか すごく 気を 使って くれて

いる事に きょうしゅくする

ライナー


「猫は おあずかりいたしましょう」


長が ライナーの 肩に 手を

伸ばし 猫を つかもうと すると


「シャーッ」


モルグンは 激しく ていこうする


「ああ こいつは 一緒に いないと

ダメなんだ」


モルグンの 頭を なでる

ライナー


「さようで ございますか

それでは 中へ」


ドキドキする 長


「うむ」


中には どこかで 見た ような

藁の ラグが しいて あり

くつろぎを 演出して ある


「なんか めっちゃ 豪華に

なって ビックリだよ」


部屋の 中を 見回す ライナー


「お気にめして いただけましたかな

奴隷を たくさん使い 仕上げまして

ございます」


にこやかに 話す 長


「ハハハ 奴隷って」


じょうだんだと 思う

ライナー


「はい 寝不足で 何人かは」


すごい 突貫工事だったと

努力を アピールする 長


「えっ リアルガチで??」


これを 作る ために 人が

死んでいる 事実に きょうがく する

ライナー


「はい でも 仕上がりは 満足いく

ものに なって ございまする」



ーー40ーーーーーーーーーーーーーーーー


低い テーブルの 一番 奥がわの

席に すわるよう うながされる

ライナー

そこだけ なにも入っていない 皿が

5枚 積んで ある


「なんだ みんなで 食べるんじゃあ

ないのか」


配置に いぶかしがる

ライナー

まさか 毒は 盛らないだろうが

みんなで 同じものを

食べたい


「ハハハ 我々など 魔王さまの

おこぼれで 十分で ございます」


盃と お酒を 持って来た 女中から

それらを 受け取る 長


「そうなのか・・・」


立ち尽くす ライナー


「さあ おすわり下さい」


着席を うながす 長


「ああ」


ゆっくりと すわる ライナー

新しいためか 少し 固いが そこまで

悪くない


「さぁ まずは 一杯」


長が ライナーの 盃に お酒を

注ぐ


「あーあーそのへんで

それでは こちらも」


ライナーも お返しと ばかりに

長の 盃に 注ぐ


「あっ ありがたき」


頭を さげる 長


「それでは 乾杯」


カチッ


「ゴクッゴクッ」


よく 音が なる ライナー


「ぁー」


つい 笑顔に なる ライナー


「それでは 食事を お楽しみ下さい」


パンパン


長が 手を たたくと 料理が はこばれて

くる


「ああ」


使用人が 皿に 盛った 料理を

ライナーの 目の前に ならべる


「なんか いろいろ

作ったんだね」


感心する ライナー


「はい

ニパが 中心と なって 腕に よりを

かけて 作り ました」


腕を たたく 長


「それなら 安心して 食べれる」


少し ホッと する ライナー


「はい もちろんで ございます」


鼻高々の 長

料理に 舌鼓を うつ ライナー


「それでは 本日の メインイベントに

うつら させて いただきます」


声 たからかに 長が

合図を 送る


「いや そっちは 期待して ないから」


手を 横に パタパタ ふる ライナー


「まぁ そう おっしゃらずに

ご覧くだされ」


にぎにぎしく


ボアーーン


ドラの音が 鳴り響き まばゆい

ばかりの 美女が 次々と 部屋に

入って くる

しかし

ある女を 見た時 笑顔が 凍りつく

ライナー


「あいつ どっかで 見たぞ」


ものすごい 美女だが ひたいから

ツノが はえている


「おやおや

あいつ シャーロンに 似てるな」


他人の そら似という 事も ある


「あの女 とびっきりの 上玉です

お気に めしましたでしょうか??」


ニヤニヤする 長


「うん ちょっと 見たい」


そう言うと 立ち上がり 女に

近付く ライナー


「うーん」


ライナーが 女に 顔を 近付けるが

目が うつろだ

しかし いきなり 抱き付き

濃厚な キスを する 女


「んぐ

やっぱり そうだ

こいつは シャーロンだ」


疑問から確信へ


「ややっ

お知り合いでしたか」


変な 汗が 止まらない 長


「おい お前 シャーロンに

なにを した」


眼光が するどくなる ライナー


「いや その ちょっとした

手違いが あったみたいで」


必死に ごまかす 長だが

ごまかしきれない


「あの 洞窟で 洗脳したのか

どうなんだ??」


モルグンと 最初に シた ところを

思い 出す ライナー


「ひぃええ どうか ごかんべんを」


両手で 顔を かくす 長


「それじゃあ この女たち

全員か??」


ほかの 女たちも 一様に 目が うつろだ


「いやそれは」


防御姿勢を とる 長


「今さら 隠すな」


うなる ライナー


「はい ほうぼうより」


ついに ゲろった 長


「えーっ

どうすんの こいつら」


事の 重大性で めまいする

ライナー

自分まで 犯人あつかいに

なるのではと 変な 汗が 出る


「元の とこに 置きます

必ず」


この場を 必死に おさめようと

やっきに なる 長


「うーん たのむよー」


長の 良心に すがるしかない


「はい 必ず」


まかせろと 言わん ばかりの 長


「もしかして ニパも 洗脳されて

たり するのかな??」


ふと イヤな 事が 頭を よぎる

ゾッと する 気持ちを グッと おさえる


「いえ 小さい頃に ここへ来たので

その 必要は なかったです」


説明する 長


「つまり ゴブリンと して

育て られたと」


そっと 置く ように ていねいに 聞く

ライナー


「さようで」


ペコリと うなずく 長


「で どこで 拾われたって??」


いよいよ 核心を つく

ライナー


「聞いた 話しでは 沼地の女神の娘

らしいのですが 詳細は わかりかねると」


腕組みして 首を かしげる 長


「例の 泉から 出て来るって

あれか」


ヒザを ポンと たたく

ライナー


「ですが 詳細までは」


首を ふる 長


「なるほど それなら テレキネシスが

使えるのも 納得だ」


妙に ふにおちた

ライナー


「そうなんですか??」


ピンと きていない 長


「ああ あいつを 怒らせない

方が イイぞ」


笑顔が ひきつる

ライナー


「はい さようでございますか」


ポカンと する 長


「とんでもない目に あうぞ」


おどろおどろしく 語る

ライナー


「こわやこわや」


あまり 響いていない 長


「えっ だれが コワいんですかぁ??」


ライナーの 背後を とる ニパ


「誰って ぬぁ」


ライナーは ふり返って

ビクッと なる


「ねーねー だれが コワいの??」


笑顔だが 目が 笑って いない

ニパ


「いや 大丈夫だ コワくない」


ニパの 肩を ポンポンと する

ライナー


「??

えっ」


理解できない ニパ


「うん 食事の つづきからね

ニパも 一緒に 食べるだろ」


思い切り 話しを 変える

ライナー


「うん 食べるよー」


ニッコリ笑う ニパ


(よかった いつもの ニパだ)


「どうかした??」


不思議そうな 顔を する ニパ


「いや イイんだ 食べよう」


とにかく 食事に 集中する

ライナー


「ところで この子 ライナーのこと

好き みたいね」


シャーロンが ライナーに ピッタリと

くっついて 離れない


「いや 洗脳のアレじゃあないかな」


めちゃくちゃ ごまかす

ライナー


「フーン」


目を 細く する ニパ


「いや まいったな」


頭を 掻く ライナー


「長 洗脳って いつ とけるの」


話の 矛先を かえる

ライナー


「それは 個人差が ありますから

いちがいには なんとも」


けっこう まともな 事を 言う 長


「強制的に とけたりしないか??」


解決策を 聞く ライナー


「それも 個人差が あります」


首を ふる 長


「まいったな」


悩む ライナー


「魔王さま なにが まいったの

です??」


長が ニパに 聞こえないくらいの 小声で

聞く


「いやぁ どうしよう」


ひたいから 出て いる ツノさえ

なければ 西の国に 一緒に 行くのも

ありえるが


「ここに おいておくというのも

酷だよな」


「と 言いますと」


ライナーの つぶやきに

反応する 長


「ここだけの 話だが

明日は 大事な 要件が あって

行かないと ダメなんだ」


かなり ボカした 発言をする

ライナー


「なーに 洗脳は そんなにすぐ

とけませんから 安心して

行ってらっしゃいませ」



ーー41ーーーーーーーーーーーーーーーー


眠りたくても 眠れない

ライナー

よく言えば 遠足前 の気分

悪く 言えば 課題は 山積み

なに 1つ 解決して いない

貴族の マナーも 中途半端だし

大きな船も 自分で精巧に さいげん

出来るか わからないし

モルグンに せっかく 作って

もらった 服は サイズ きついし

シャーロンの 事も ある


「ねえ 寝た ライナー??」


気配を さっして 小声で 声を

かけるモルグン

ライナーを はさんだ 反対側には

ニパが つかれて 眠っている


「うん

全然 寝れないんだ」


ギンギンの ライナー


「そうなんだね」


ライナーに よりそう モルグン


「モルグンも 眠れないんだろ」


モルグンの 頭を なでる ライナー


「うん ちょっとね」


声の トーンが 下がる モルグン


「夜が 明ける前に 西の国に 行きたい

と 思うんだけど どうかな??」


下手に 寝坊するよりか 早く つくように

提案する ライナー


「それなら 瞬間移動を

誰にも 見られないかもね」


賛同する モルグン


「うん それで 決まりだ」


少し あかるさが 戻る ライナー


「ええ」


ニッコリ ほほえむ モルグン


「どこにも 行かないで」


急に ニパが 大声を 出す


「ニパ 起きてたんだ・・・」


ビクッとなる ライナーと

モルグン


「ムニャムニャ」


ニパは まだ 眠って いるようだ


「寝言かよ

ビックリした」


ホッと 胸を なでおろす

ライナー


「ねぇ ニパだけでも 連れて

行った 方が イイんじゃない

かな??」


やさしさから そう言う


「でも メイナと 差を つけると

後で なに 言われるか」


また 二人が 対立するような

火種は のこしたくない


「それなら メイナも 一緒に

行けば イイじゃないの

ホラ 人数 おおい方が たのしいわよ」


ルンルンな モルグン


「瞬間移動なんて めちゃくちゃ

魔力を 消費するのに

人数を 増やすとか 正気じゃねえよ」


つい まじめに 返して しまう

ライナー


「まぁ そうよね

いくら 魔王って 言っても

限界は あるよね」


ニヒルに 笑う モルグン


「いや 挑発すんなって」


少し ムッと する ライナー


「あはっ そう聞こえたなら

ごめんなさい」


笑いながら あやまる

モルグン


「いや イイよ」


ムクっと 上半身を 起こす

ライナー


「よし そろそろ出発しようか」


ふり返り モルグンを 見る


「ええ 勇者様 行きましょう」


夜も 明けきらぬなか

1人の魔王と 1匹の猫が こつぜんと

姿を 消す


「ムニャ

あれーっ ライナーいな・・・」


再び 眠る ニパ


「だいぶ 瞬間移動したな」


眼下には 広大な 農園が 広がって

いる


「なんで 見える範囲しか 飛べない

かな」


ちょっと イラ立つ モルグン


「だって 場所が わかっていれば

1回で 飛べるよ」


反論する ライナー


「わたしが 何回も 使えたら

1回で 行けるのに・・・」


残念がる モルグン


「でも 何回でも できるのは

正気 うらやましいわ」


ニヤッと 笑いかける

モルグン


「なんか モルグンが 言うと

エロく 聞こえるんだよなー」


意味深に とらえる ライナー


「あら うれしいわね」


鼻息が 荒くなる モルグン


「で 今度は どっちかな??」


モルグンの 反応を スルーした

ライナー


「あっちよ」


前足で さし しめす モルグン


「よし」


そうして ようやく 花の都まで

到着する ライナーと モルグン


「やたら デッカイ都市だな」


薄暗くて よく わからないが

大きな建物が いっぱい 並んで いる


「でしょ ポルムの町とは

大違い」


脚を のびちぢみ する モルグン


「異世界にも こんな 文明的な

ところが あるなんて 感動だな」


この世界も もっと広いのかも と

思う ライナー


「さぁ ずっと空に いたら

攻撃されるかも だから あの茂みに

降りて」


前足で さす


「お おう」


ガサガサッ


「さあ 馬車を出しましょ」


モルグンは 人間の姿に もどって

指示する


「よし 馬車は この前に見たから

簡単に 出せるぞ」


集中する ライナー


ポン


「また えらく きらびやかな馬車を

出したわね」


金色に かがやく 馬車

細かい 装飾が ずいしょに

ちりばめられた 豪華さ


「そうだろ これなら 貴族にも

バカに されない」


自信マンマンな ライナー


「逆に 悪目立ちするかもー」


首を かしげる モルグン


「ん?? なんか言った??」


スッと ふり返る

ライナー


「いや なんでもない」


ごまかす モルグン


「あとは 馬と 馬係は わたしが

作って あげる」


モルグンが そう言うと そこらへんに

いる 野良犬を 馬に ドブネズミを

馬係に 変える


「魔女って スゲェな」


感心する ライナー


「あなた ほどじゃあないわ」


ライナーは 魔法を 使わなくても

空を 飛べるし 手から ファイアボールを

出せるし クチから 冷気を出せるし

目から レーザービームも 出せる


「それじゃあ 服を 全部 ぬいで」


指示する モルグンの 顔色が 赤い


「えっ ここで シたいの??」


キョトンとする ライナー


「いや シたいけれども

着替えないと 行けないでしょ」


正直な モルグン


「あっ なんか 間違ってしまった」


赤面する ライナー


「早く 全部 ぬぐ!」


人差し指を グルグルする

モルグン


「はいっ」


モルグンが 服を 着るのを 手助け

する


「ひぁあ」


股間を さわられ 変な声を 出す

ライナー


「なにが 今さら はずかしいの」


やっと 着替え おわる

ライナー


「さあ 行こう 宮殿に」


見た目は どこから 見ても 貴族に

なった

見た目だけなのが 残念では ある

また 猫の姿に なる モルグン

馬車に 乗る ライナーの あとに

ついて乗る

ゆっくりと すべるように 進む

馬車


「これって もしかして

地面に ついて ないのかな??」


違和感を 感じる ライナー


「だって アレ 馬じゃなく 野良犬

だもん 4頭でも 1馬力くらいしか

ないよ」


簡単に 説明する モルグン


「なるほどね」


宮殿の 前まで来たが

まだ 門が 開いてないらしく

出入りの業者で 渋滞している


「これ しばらく かかるな」



ーー42ーーーーーーーーーーーーーーーー


「んっ

ライナー??」


ニパは 朝 めざめて すぐ ライナーを

探し はじめる


「ねぇ 長

ライナー どこに 行ったか

知らない??」


集落じゅう 探した ニパ が

長 に たずねる


「うーん

もう 魔王さまは 帰って 来んかも

しれんな・・・」


腕組みし さみしそうに言う 長


「そんな・・・」


ショックを 受ける ニパ


「あたいが なんの為に 川に 流す

毒を 増やしたと 思ってんのよ!!」


くやしがる ニパ


「ニパ お前 まさか」


顔面が 白く なる 長


「そうよ メイナの 母親を 本当に

やったのは」


その頃


「来賓の方は 左手に 曲がって 下さい

中央へ 出ます」


ライナーの 乗る馬車は

分岐を 左に曲がり

車止めの ところで 停車する

そこに マヌエスの 姿が あり

ライナーに 近寄ってくる


「お待ちして おりました

ライナー」


見ない あいだに しおらしく

なった マヌエス


「おい ずいぶんと 雰囲気が

変わったな」


変化を さっちする ライナー


「はい あれから わたくしも

色々 経験いたしまして

それで やはり ライナーの」


「ちょっと待て 俺は エリザベトに

まねかれて 来てるんだよ」


マヌエスの 言葉を さえぎる

ライナー


「はい だから 朝から ここで

お待ちして おりました」


全然 気持ちの 折れない

マヌエス


「うーん ちょっと ひとけの

ないところで 話そうか」


「はい」


大きな 柱の 陰に 入り

人目を さける


「で なんで 待っていたのかな??」


「ライナーに 会って 気持ちだけでも

つたえようと ずっと思い悩んで

いたのですが やはり 本人の

前では 言えませんので

コレを・・・」


小さく 折り畳んだ 手紙を

ライナーの ポケットに 入れ

顔を 赤らめる マヌエス


「これ 恋文だね

あのぅ」


「では これにて」


そそくさと 立ちさる

マヌエス


「ちょっと 待てって」


ライナーの 制止など 聞かず

行って しまう


「なーに そんな 紙切れ 食べて

あげても イイんだけど」


モルグンが 敵意を むき出す


「まぁ マヌエスとは あとで

ゆっくり話そう

こじれると 厄介だ」


彼女も 武人だから あなどって

いると 痛い目を みる


「うん それもそうね

ライナーに 執着してる雰囲気

プンプンだったし」


ライバル視する モルグン


「しっかり 話あえば

わかって くれるさ」


自分自身を 納得させる

ライナー


「だと イイけど」


ニヤリと 笑う モルグン


「オイオイ」


ちょっと 不安に なる

ライナー


「ライナー様!」


背後から 大声で 呼ばれる


「うぉえい

グリエルじゃあないか」


ビクッと する ライナー


「えらく かしこまった衣装ですね」


ニヤつく グリエル

まわりに いる ドレスを 着た婦人たちも

クチを かくし せせら笑う


「えっ ドレスコード違ったかな??」


あせる ライナー


「他の 来賓者の 方々も

笑って おられるので 早く

エリザベト様の部屋へ」


苦笑する グリエル


「ああ そうさせて もらうぞ」


内心 ドキドキの

ライナー


「はぁ 恥ずかしい

おのれ モルグン!」


肩に 乗る モルグンを 見る


「あはは

宮殿にござる 宮殿にござる」


おどける モルグン


「これより 先は ペットを

あずかりましょうか??

王妃の 御前で そそうが あると

あぶないので」


兵士が そう言うと


「おもらし するかって」


モルグンに 聞く

ライナー


「失礼な」


プイッと する モルグン


「おしゃべりになる猫とは

恐れ いりました」


ビックリする 兵士


「いや それじゃあ」


コンコンコン


「入れ!!」


エリザベトの 声だ


「はッ

どうぞ」


兵士が ドアを 開ける


「やあ エリザベト」


「おお 来たか

来てくれると 思って おったぞ」


エリザベトの 顔が 明るく なる


「それは 恐悦至極に 存じます」


「かたくるしいのは ぬきじゃ

それに その 衣装は 勲章でも

受け取りに 来たのか??」


イジワルそうに 笑う エリザベト


「いや 面目ない

ちょっと かつがれまして」


「あはは

トルーヴィルか モルグン あたりに

聞いたのか

手紙にも 書いたが そこまで

かしこまった パーティーでは

ない」


「ハハ・・・すっかり

やられました」


「準礼装 すなわち タキシード

で よいと 手紙に書いて

いたが 読まずに 捨ててない

よな??」


エリザベトに ズバリ 当てられる

ライナー


「もちろん ちゃんと読んで

おります

だから 今日 ここに 参上いたした

のですから」


「あたしの 恋文を ちゃんと 読んで

くれて いたなんて うれしいな」


キャッキャと 笑う

エリザベト


「・・・」


ムッと する モルグン


「タキシードを 持って来て

いないのなら 衣装部屋から

好きなのを 持って 行って

イイぞ」


使用人に 目くばせする

エリザベト


「タキシードも もちろん

ありますから ご心配には

およびませぬ」


見栄を はる ライナー


「そっか

ならば あたしも 準備が

ある

つのる話は あとで ゆっくり

しようぞ」


「はい もちろん」


そして 来賓用の 個室に 案内される

ライナー


「では 晩餐会まで ゆっくり

ごくつろぎ 下さい」


「はい どうも」


バタム


人間の姿に もどる モルグン


「タキシード 入ってるかな??」


ライナーは モルグンに

確認を とるが ムスッとした

表情を している


「入って なくても

つくれば イイじゃない」


あきらかに 反応が おかしい

モルグン


「ちょっと 機嫌悪くなってない??」


「別にィ・・・

まさか 本当に 王妃とも シてる

とは あきれた男ね」


ため息を つく モルグン


「いや せざるを えない事も

中には あるんだ」


仕方ないと アピールする


「それで わたしと 王妃は

どっちが よかったの??」


とんでもない 質問を する

モルグン


「ちょっと ここにきて

モメないでよ」


「なんか 宮殿に 来て 調子が

よくないのよ

たぶん 結界が 張って あって

わたしの 暗黒面が

露出しちゃってるの」


自分自身の 肩を 抱く

モルグン


「つまり 本音では」


「それ 以上 言わないで

おもらし しちゃう」


「そんなに 俺の 事を」


下の方を 向き だまる

モルグン


「ニパと メイナが 戦うよう

仕向けたのは わたしなの」


静かに 話し はじめる

モルグン


「うん」


「キライに なったでしょ

わたしの こと」


「いや キライに ならない」


「ウソ なんでよ」


「ウソ じゃあない」


「なら ここでシて」


「イイよ」


小一時間


いよいよ 晩餐会の はじまり

各国から 国王 貴族 諸侯など

隣接する 神聖国や 海峡を はさみ

西の島の北の国からも・・・

さすがに 西の島の南の国は

戦争中なので 出席者は なし


「なんか 場違いな ところに

来ちゃったなぁ」


胸に 勲章の ある 人も いて

すごく 疎外感が する


「しっかりして 勇者様」


「ああ うん」


「この あとは ダンスが あるから

食べすぎないようにね」


「いや 早く 言ってよ

ダンスとか 無理だよ」


「いいの 女の 手を にぎって

回転してれば 大丈夫だから」


「そんな もんかねぇ」


「うん 大丈夫」


食事の あと 別の 部屋に 通される

高い 天井から たくさんの

シャンデリア

夜だと 言われないと

わからないほど 昼間のように 明るい


「おどって くださる??」


エリザベトは 真っ先に ライナーの

ところへ よって うながす


「もちろん よろこんで」


楽団が 二人の様子を 見て

甘い ムードの 音楽が 流れる


「回転だな よし」


「好きに おどって よろしいのよ」


互いに 手を とり グルグル 回る


「あはは」


グルグル 回って すべて 忘れ

さりたいと 思う

ライナー

天井を 見つめ 回転を つづける・・・

この国の兵士を 溺死させた事も

ニパが メイナの母親を 殺したと

シャーロンから 聞いた事も

その シャーロンも 洗脳され

ダメに なった事も

すべて 忘れたい


「はははははは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る