第4話 隠密

ーーー8ーーーーーーーーーーーーーーーー


簡単な、食事を とりながら

事の いきさつを聞く。


「なるほど ニパの元カレは

俺と魔女を ぶつけようと

したのか」


「ごめんなさい

はやとちりして」


ニパは、罪悪感を感じ謝る。


「いや 謝らなくてもイイよ」


狙いは、自分だった。

深読みしすぎたと反省する

ライナー


「とりあえず

黒猫の」


「ボクはナーガ」


「ナーガは モルグンが

家に帰ってないか

確認してくれ」


「うん」


「こんな時 番号を知ってたら

なぁ」


そう言って、ハッとする。

この世界に、スマホがない。


「俺は とりま

ゴブリンの集落を

さぐってみるから

メイナとニパは

ここで待機してくれ」


そう言うと


「えーっ あたいも~」


ニパが、少し むくれる。


「遊びに行くわけじゃ

ないんだから」


そう

全て壮大なワナの

可能性もある。


「一応 薬草も持って行って

普通に入ってみるよ」


ライナーと、ナーガは

急いで山を下っていく。

そして、分岐点で


「それじゃ たのんだよ」


ナーガは、ポルムの町へ

猛ダッシュで向かう。


「おう まかせとけ」


ライナーは、胸を叩いてみせる。

ゴブリンが、腰の低い連中だと

知ったから、足取りは軽い。


集落に、つくと静まりかえって

いる。

簡素な、建物の ところどころ

コゲたような跡もある。


「昨日と 雰囲気が違うな」


一抹の、不安を おぼえる。


「おい 誰かいないのか」


奥の方から、長が ゆっくりと

歩いてくる。


「どうか されましたか

魔王さま」


なにか、平静を保とうとする

雰囲気を感じ 単刀直入に


「ここに モルグンという

魔女が 来なかったか??」


「いや 来ておらぬが」


明らかに、動揺が見てとれ


「ごまかすんじゃねぇ」


と、声が大きくなる。


「ヒッ

たしかに魔女が

来ました」


「で どうした」


少し、ためらいながら


「血気盛んな 若い連中が

ちょっと おいたを」


「それで」


ライナーの顔が、ゆがむ。


「ヒッ

怒った魔女が ステッキから

炎を3回ほど 出したのですが」


「うん」


「体力の限界か

魔女が ぶったおれまして」


「それで 手当てをして

いるのか??」


「いえ 若い連中の

オモチャになって おります」


「なん だと」


道理が、わからん。

助けに来た人間を

オモチャになどと

わからん。


「わしらも 若い連中には

手を 焼いているの

ですじゃ」


情けない、表情を 見せる 長。


「それは 調教しないとな

それで どこにいる」


長は、少し首を かしげつつ


「裏山に 洞窟が ありまして

一番 奥だと」


「そこは どんな所だ」


洞窟内で、迷わせるつもりか

と思い、聞いてみるライナー


「拷問部屋です」


仕方ない、という顔の 長。


「そんな所に

押し込みやがって」


「ヒッ」


奇声をあげ、長は急いで

自分の家に入る。


「洞窟の入り口くらい

言って行けよ」


裏山を、しばらく うろうろし

それらしき場所を、見つけると

出入り口には、2人ほど

立って、談笑している。

あわてて、身を隠すライナー


「最高だったな」


「ああ最高だった」


「お前どんだけだよ

何回も」


どうやら、魔女は生きて

いるようだ。


「ホッとしたぜ」


しかし、簡単に 渡しては

くれなそうだ。でも、

ゴブリンを殺してしまうと

食料品の、調達に影響が

あるかも知れない


「あの2人だけ

なんとか しよう」


ライナーは、石を 拾うと

向こうの茂みに投げる。


ガサッ


「なんだ」


1人が、確認するように茂みに

分け入る。

そのうちに、ヒラリと

舞い上がるライナー

もう1人の背後に降り

後頭部に、チョップする。


バキッ


首を、くの字に曲げ

ヒザから、崩れ落ちるゴブリン


「よし

中に入ろう」


洞窟内に、踏み入ると


「あー

あー

あー」


あえぎ声の、ような

エコーが、かかった音が

響いてくる。

入り口は、狭いが

中は、普通に立って歩ける

ぐらい広い。


「しかし 迷路みたいだな」


とにかく、分岐点が多いが

松明が焚かれ、意外と明るい。

フレインの、特殊能力で

頭の中に、地図が出来てくる。

その時

ゴブリンと、鉢合わせになり

思わず、右の拳がゴブリンの

腹に、突き刺さる。


「ぶぶ」


壁に、もたれるように倒れこむ

ゴブリン


「あぶねー」


他の、ゴブリンたちも

異変を感じて、ぞろぞろ

集まってくる。

そいつらを

殴っては、投げ

殴っては、投げる。


「どんだけ 奥に いやがるんだ」


あらかた、片付いてみると

10体くらい倒した。


「さすがに もういねえよな」


そう、思っていると

奥から、大きめなのが

出てくる。


「あんな丸々とした

ゴブリンも いるんだな」


ノシノシと、ライナーの

所まで来ると


「きさま 魔王か」


「だったら なんだ」


大ゴブリンは、怒りに満ちた顔を

ライナーに向け


「ブッ殺してやる」


あまりの惨劇に

低く、うなるような声を

しぼり出す、大ゴブリン。


(この空間でファイアボールを

撃てば 俺以外 助からない

だろう)


しかし、冷凍ブレスも

出来るみたいだ。


「ためしに やってみるか」


大ゴブリンが、右手を ふり上げ

拳を、ふり下ろしてきたタイミングで


スーッ


冷たい吐息が、大ゴブリンに

直撃し、見る間に凍ってゆく。

そのまま、転倒し粉々に粉砕

される。


「うわ グロ」


ところが、自分にも

異変を感じている。

そう、頭部は魔王の それでは

なく、多少ダメージが

あるみたいだ。


「あー

クラクラする」


奥の、部屋に行くと

激しい声が、聞こえてくる。

残りは、小さいゴブリンと

手かせ足かせを、付けられ

壁に、クサリで張り付けに

なっている魔女。


「あっ」


素早く、ゴブリンの首を

つかむと部屋の端へ

放り投げ、壁に ぶつける。


「ぎゃあ」


チカラ強く、無理やり引きはなされ

ゴブリンと、魔女が声をあげる。


「助けに来た

もう大丈夫だ」


頭が、多少クラクラする

ライナーだが、クサリを

両手で、つかみ 引きちぎる。

とっさに、魔女がライナーに

抱きつき


「ああっ

勇者さまぁ」


と、言い 濃厚なキスをする。

ライナーは、意識がハッキリ

しないために

なすがままにされる。


小一時間後


罪悪感が、いっぱいの

ライナーと

実に、さわやかな表情の

モルグンが洞窟から出てくる。


「やっぱり勇者さま

のは違うわぁ」



ーーー9ーーーーーーーーーーーーーーーー


洞窟を出ると、長が待ち構えて

いる。


「魔王さま あなたは

おぼえていないでしょうが

この集落を襲うのは

二度目になります」


ライナーは、おどろきを

隠せない。


「それは どういう」


「トルーヴィルの所で

召還され ここの集落を

めちゃくちゃに破壊して

その後 首から上が

つけ換えられて

まともになったと

思っていたのに」


残念そうな、顔をする 長。


「それで あんなに

恐れたような扱い

だったんだな」


なにか、とんでもなく

悪い事を、やってしまったと

身が、ちぢむ思いに かられる。


「なによ わたしを救って

くれた勇者様に むかって」


モルグンが、堰を切った

ように、まくしたてる。


「どうか わしの顔に免じて

矛を おさめて下さらぬか

なにとぞ」


深々と、頭を さげる 長。

隠れて、見ていたゴブリンも

ゾロゾロと、集まって来て

取り囲むと


「うちの娘も

生け贄に 捧げますから

ご勘弁を」


「うちのもだ」


「うちのも」


次々と、沸き上がる声。


「いや 別に救出が

出来たら別に生け贄

とか 間に合っているから」


多少、もったいない気も

するが、丁重に お断りする。


「なんと 寛容な」


「それより また薬草と

肉を交換してくれ」


この、ゴブリンたちから

魔女を、救い出す英雄譚は

またたく間に、近隣諸国の

うわさの的となり

尾ひれが付き、魔王ではなく

伝説の勇者では、ないかと

間違いが広まってゆく。


「なんとか わが軍に

取り入れたい」


密かに、勇者獲得作戦が

水面下で、あわただしさを

みせる。


「今の皇帝に 正当性は

ない どんな事をしても

勇者を手に入れ

戦いを有利にするぞ」


キナ臭さが、増しつつある。

しかし、当の本人は


「また 元カレに 一歩

近づいたな・・・」


と、うつむきつつニヤリと

ほくそ笑む。


「メイナとニパに

なんて 言い訳しよう

かな」


悩みが、クチをついて出る。


「勇者様ぁ

さっきから なにブツブツと

言ってらっしゃるのかしら」


モルグンは、興味津々と

いう顔で、のぞきこんでくる。


「んぐ

とりあえず 君はポルムの

自宅に帰ってくれ

飼い猫が 探していたぞ」


ライナーが、そう言うと

首を、横に振り


「わたしは まだ帰りません

にゃんこは すぐ魔法で

呼び出せるので心配は

いりませんの

それより勇者様は

これから イクところは

ありますか??」


魔法は、便利なものだと

感嘆しつつ


「とりま 食材を手に

入れたから 家に

帰るよ」


「勇者様の ご自宅」


うっとりという表情の

モルグン


「いや トルーヴィルの家

だよ」


「そうなのですか」


少し、ガッカリと曇る。


「だから ここで」


「いえ 勇者様と

お供いたします」


くい気味に、言葉を ぶつけて

くるモルグン


(また 厄介な展開だな

なんとかしないと)


と、そこに


「いゃあ

遅いから心配だってニパが

言うもんだから」


「あたいも心配だったけど

先に言ったのメイナだから」


メイナとニパが、バツがわるそうに

やってくる。


(やっ ヤバい)


とっさに、モルグンの前に立ち

隠す、素振りをみせるライナー


「あー 無事に救出したんで

これから 帰ろうかなって」


「その人が 魔女さんかな??」


「はじめまして

里の者が ご迷惑を

ごめんなさい」


魔女に、興味津々な二人。


(修羅場だ なんとか

しないと

あっ 空を飛んで逃げるか)


「いいえ イイんですよ

こうして勇者様と

お近付きになれて

むしろ ハッピーとさえ

思っていますの」


そう言うと、ライナーの腕を

ガッシリ掴むモルグン


「おっ おい」


「わたしたち もう

こんな関係なの

ねー勇者様ぁ」


いたずらっこぽく笑う

モルグン


(地獄だ)


ライナーは、二人の顔を

凝視できない。

しかし


「なーんだ

また女 つくったんだー

勇者様」


テッカテカの、笑顔の

メイナ

逆に、背筋が 凍るような

恐怖を感じる。


「あたいも もうなれたから」


そう言うわりに、冷たい視線を

送るニパ


「なーに このコたちも

そうなの

さすが勇者様ね」


益々、ギュッと しがみつく

モルグン


「ちょっと 一旦 はなれて

もらってイイですかね

そこ わたしのポジション

なんで」


メイナが、にこやかに毒を

吐く。


「あら それは勇者様が

決める事でしょ」


モルグンが、ライナーに上目遣いで

顔を、近付ける。


「ちょっと 一旦 冷静に

なろう」


ライナーは、モルグンを

ひき離す。


「あら残念」


「そこは 奥さんである

わたしの場所だから

当然よね」


ちょっと、不服そうな

顔になるモルグンと

にこやかな二人。


(えぐいて こんな)


「あっ 食材が あるなら

ご飯にしょー」


メイナは、正妻ぶった余裕を

みせる。


「うん つづきは食事して

あたい 魔女さんとも いろいろ

しゃべりたいし」


ニパは、魔女に興味が

あるみたいな、クチぶりだ。


(はぁー まだこの地獄

つづくんかぁ)


ズンズンと、家路へ向かう

メイナとニパ

とぼとぼと歩くライナーと

その後ろに、付いていく

モルグン


「なんか あの二人

いつの間にか 仲良く

なってねえか」


にこやかに、談笑する

メイナとニパを見て

少し、ホッコリする

ライナー


「奥さん楽しそう

わたしも奥さんに

なろうかな」


ライナーは、そんな事を

背後から言われて

ビクッとなるが

冷静を、装う。


「いや 無理には

おすすめしないよ」


振り向かず、答える。


「あら 無理やりにでも

なるつもりよ」


実に、コワい事を

クチ走る魔女。


「ちょっと

ホント 今は冷静に

なってよ」


ライナーは、もしかしたら

モルグンが、メイナとニパを

殺しかねないと感じ

なんとか、なだめる。

いくら、異世界とはいえ

自分の、彼女を殺される

のは、耐え難い。


「ねぇ なにやってるのー」


メイナの大声が、深い森に

こだまする。


「ああ 大丈夫だ すぐ

追い付く」



ーー10ーーーーーーーーーーーーーーーー


「おいしそうなリンゴね」


少女は、ニコニコする店主の

目の前で、山のように積み上がった

中から、一番おいしそうなのを

つかみ、ガブッと 頬張る。



「おいし~い」


満面の、笑みになる少女を

見て、店主がニヤニヤしながら


「お嬢ちゃん おつかいなの

かな??感心だね」


そう言われ、プリッとした

表情に、なる少女。


「年頃のレディに対して

無礼じゃなくて」


「ああ ごめんよ」


バツが悪そうに、頭を掻く店主。


「おいしかったわ

それじゃ」


そう言うと、果物屋を あとに

商店街を、歩きだす少女。


「待って おだいは」


その言葉に、ピタッと立ち

止まり、クルッと振り返る。


「持ってないわ」


店主の顔が、見る間に

怒りに満ちてくる。


「きさま いい度胸してん

じゃねえか」


そう言うと、強盗用に

しのばせている、こん棒を

手に取り、大きく かかげると


「少し 痛い思いしないと

わかんないみたいだな」


と、少女に つかみかかる。

すんでのところで、それを

かわすと、一目散に走って

逃げる少女。


「待てやゴラ」


近隣の、店員も 加わり

屈強な 3人が少女を

追いかける。


「ハアッハアッ

誰か助けて」


細い路地を、駆け抜ける少女。


その頃


「お前さ」


トルーヴィルは、またライナーが

女性を、連れて帰って来た事に

辟易としつつ


「オレへの当てつけで

やってるんじゃない

だろうな」


と、少し皮肉をクチにする。


「そんな事 あるわけ

ないだろ 俺だって困って

るんだ」


小声で、トルーヴィルに

反論するが


「おい 顔がニヤけてるぞ」


と、指摘され あわてて手で

隠す。


「さっ 料理しないと」


そそくさと、キッチンに

逃げこむ。

そして、軽く調理をすませ

リビングを見ると

女たちは、キャッキャと

楽しそうに、談笑している。


「あっ そう言えば

しゃべる猫を 初めて見て

あたい腰ぬかしちゃった」


ニパも、楽しそう。


「わすれてた 呼び出さ

ないと」


モルグンは、イスから立ち

サラッと、魔方陣を描く。


黒猫は、自宅の近所の猫と

イチャイチャの

真っ最中。

いきなり、光につつまれ

消える。


ライナー達の 目の前に

黒猫が、あらわれ

バタッと、コケる。


「あイタぁ」


またかよ、という感じで

起き上がる。


「せっかくイイとこだった

のにさ」


「すげえな

こんな事 出来るんだ」


ライナーは、目を丸くする。


「あっ モルグン

無事そうだね

ヨシヨシ」


取り繕うように、言う

黒猫。


「へぇー それじゃあ

その逆も 出来るのか??」


興味津々で、ライナーが

聞くと


「まぁ 出来なくは

ないんだけどね」


ちょっと、歯切れが悪い

答え方をするモルグン


「ちょっと やって見せてよ」


「仕方ないわね~」


しぶしぶ聞き、魔方陣を描く


「えーヤダなー」


黒猫は、不服そうに悪態を

つく。


「まぁ イイじゃねえか」


「うむ」


仕方ないと、魔方陣に入る黒猫。


光に、つつまれる瞬間 ライナーも

魔方陣に入る。


「へへッ」


「あっ」


ライナーの姿と黒猫は消え

一同は、目が点になる。


「逃げたわね

まんまとやられたわ」


ニヤッと、笑うモルグン


そして、モルグンの自宅近く

いきなり閃光がたち

地面から 、1メートルほど浮いた

所に、転送され

黒猫は、前足から降りるが

ガクッと、ズッこけ アゴを打つ。


「ニ゛ャッ」


ライナーは、スーッと降り立つ。

その姿に、近所の猫は

シャーッと声を荒げ

逃げてゆく。


「あーあ フラれちゃった」


うらめしそうに、ライナーを

見る黒猫。


「ふぃー助かったぜ」


意に、介さず スッキリと

した、表情になるライナー


「キャー」


木を、裂くような女の

悲鳴が聞こえ

ライナーは、とっさに

声の方へ走りだす。


「やめて」


壁際に、追い詰められ

こん棒をパチパチさせる

屈強な男どもに、まわりを

とり囲まれた、少女の姿が

ライナーの目に、とびこんで

くる。


「男が よってたかって」


有無を尽かさず、つかんでは

腹に拳を、ねじこむ。

チカラなく、崩れる 男。


「なんだ この野郎」


ライナーは、うるさいと

言わんばかりに、顔面に

パンチを、くらわす。


「うごっ」


モゲそうな衝撃に

一瞬にして、意識が飛ぶ 男。


「ひぃあ」


それを見た店主が、こん棒で

ライナーを、殴ろうとするが

それを、左手1本で 受け止め

グッと握ると

こん棒が、粉砕される。


「ひぃ」


「まだ やるか」


地獄から、沸き出たような

ドスのきいた声に


「あひ

もういいですはい」


と、言い残し のされた

2人を、掴んで そそくさと

逃げてゆく。


「お嬢ちゃん ケガ なかったか」


ホッとしたのか

じんわり、涙を うかべる少女。


「うん

ありがとう

お兄ちゃん強いね

あたし強い人

だ・・・」


「ちょっと待った」


悪い気は、しないが

また、トラブルが増える

予感が して、さえぎる。


「それじゃあ」


と、少女は ライナーに

無理やりキスをする。

その濃厚さに、めまいを

するライナー


「そういうのは

本当に好きな人と

しろよ」


しかし、またキスをする。


「あたし 見た目が

こんなだけど もう大人よ」


「あっ そうなんだ

俺は ライナー」


「あたしは エリザベト

これから ずーっと

よろしくね」


なにか、重いものを感じ

その場を、去ろうとするが


「あたし 強い人 大好きなの

あたしは 一生 あなたの

ものよ」


さすがに、胸やけを感じ


「俺は 魔王なんだぞ

恐ろしいんだぞ」


そう言うと、女を

お姫様抱っこし、上空へ

舞い上がる。


「どうだ 怖いだろ


そう言って、エリザベトの顔を

見ると、楽しそう。


「お城の てっぺんより高いわ」


と、聞いて まわりを見るが

ポルムの町と、大森林しか

見えない。


「どこに あるんだよ」


そう、つぶやいていると


「姫さまーっ」


誰かを、探している声がする。


「ねえ あの人たちから

逃げて どこか遠くへ

あたしを連れて行って」


どうやら、この女性は

どこぞの姫らしい。

スーッと、地面に向かう。


「降りないで

お願い

なんでもするから」


懇願、むなしく降り立つ

ライナー


「ややっ

姫さま」


ホッとしたような 執事。


「きさま なにやつ」


執事は、大声を あげる。


「待って じいや

この人は 棒で 殴られそうな

時に 助けて下さったの」


それを聞き、事情を察知し


「それは 姫が お世話に

なりまして 感謝いたします」


と、丁寧に頭を下げ


「ささ 婚礼の準備が

まだ残って おりますぞ」


急かすような言葉を

かける。


「ん??結婚するの??」


ライナーが、問うと


「そうなの

西の方にある国の

エライ人と結婚するの

よく知らない方だけど」


異世界でも、そんな事が

あるのかと、思いつつ


「君の しあわせを

祈っているよ」


としか言えない。


「あなたとなら

しあわせに なれたの

かも しれないわ」


「そろそろ」


執事は、我慢の限界のようだ。


「手紙 必ず書くから

あたしの事 忘れないで」

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