EP4 パーティー探し

 俺は次の日もゲームにログインし、昨日考えたレベル上げの方法を繰り返していた。

 ただ、敵のレベルも弱いし、アビリティーはlv5までは上がりやすい。

 がそのあとはかなり上げにくい。

 それが現在の問題だ。


 よって、いつもの通り頼れる人のところに行く。


 ピンポーン。


 俺が向かったのはリアルで幼馴染の月野 咲夜の家に行く。


 ガチャ


 「アサ遅いよ!」

 「サヨはせっかちだな。──ほら、お前の大好物のプリン」

 「わーい! 冷蔵庫に入れてくるから先に私の部屋行ってて」


 なんでもない、いつも通りの会話。

 何回通ったかわからない、彼女の部屋に俺は向かう。


 彼女の部屋で待っていると、オレンジジュースを入れて部屋に戻ってくる。


 「お待たせ。で、何か聞きたいことがあるんでしょ?」

 「ありがと。──で、聞きたいのは効率のいいレベル上げの仕方だ」


 俺はもらったジュースを飲んで一息つく。

 外の気温は高く、よほどのどが渇いていたんだろう。


 「私たちは、森の奥で強MOBと戦ったり、BOSSと戦ってレベル上げしてるけど、パーティー向けだからなー」

 「──やっぱり、パーティー組む方がレベル上げしやすいか」

 「そうだね。でも、パーティーって役割で組むことが多いから、あんたみたいな黒魔法、隠密のプレイヤーは受け付けられないかもね」


 確かに、俺のロールは一人でどうにかするために組み合わせた結果のものだ。

 パーティー募集で俺を必要としてくれる人は少ない、いやいないといっていいだろう。


 「例えば【白魔法】や【付与魔法】を取得すれば役割持てそうだけどね」

 「──やっぱりそうしないとダメか」

 「でもダメ! なんかあのキャラクターデザインと似合ってないからダメ! もっと悪そうな感じにしよう」


 目を輝かせて俺に語り掛けてくるが、圧がすごい。

 というか、お前が【黒魔法】なんてって言ったんじゃないかよ。


 「なら、何か俺にあってるアビリティを探すか」

 「賛成!!」


 こいつ絶対面白がってるだけだろ。


 俺たちは各々、アビリティ一覧から有用なアビリティを探す。

 だけど、俺にはわかっていた。

 あんまり俺にとって有用なアビリティは第1種アビリティにはないということに。


 「これなんていいんじゃない?」


 サヨが俺に向かって見せてきたのは、【魔眼】。

 戦闘時常時発動して、敵ステータスダウンと弱点発見というアビリティなのだが、デメリットがえげつない。


 「常時MP消費、そして0になるとパーティーのMPを自動消費。──デメリットがきつすぎる!」

 「えー。見た目にはすごくマッチしてるよ」

 「お前は俺を厨二病とでも思ってんのか」


 それから冷やしたプリンを食べながら二人で探したが有用なアビリティを探すことは出来なかった。


 ◇◆◇◆◇


 LBOにログインして、今日はレベル上げではなくほかのことをする。


 俺には有用なアビリティがないよりも、もっと深刻な問題がある。

 それはお金だ。


 MOBを倒すことができない。素材を採取することができない。

 簡単な話、一人では何も稼ぎを得ることができないのだ。


 そこでサヨから聞いた話を思い出す。

 ──パーティー。


 だから今日は酒場の前でパーティー募集をしてみる。

 と言っても俺のこのアビリティじゃ難しいだろう。

 だからと言って、【白魔法】とかに浮気してしまうのも、サヨから言われたからってわけじゃないが、なんか嫌だ。

 プライドが傷つく。


 俺はウインドウでパーティー募集と書き自分の目の前に大きくしておいて、酒場の前で立つ。


 「パーティー募集中です。リストルの森でMOB狩りをしませんか?」


 声を出して呼びかける。

 かなり内容も簡単なものだし、危険が少ないからライトな層が集まってくれるだろう。


 すると二人の女性のプレイヤーが近づいてくる。


 「あの、私たち【剣士】と【光魔法】なんですけど参加できますか?」


 すごく上目遣いで話しかけてくる剣士の女性。

 なんか変な思惑を感じるが、パーティーが組めるなら今のところ問題ない。


 「大丈夫ですよ」

 「ありがとうございます! キミかっこいいから、うれしいな」


 なんか、すごい距離感近いし、めっちゃ周りの目が気になる。


 「で、キミは魔法使いだよね? 何の魔法使うの?」

 「俺は【黒魔法】使うんですけど……」


 すると、その言葉に反射的に反応したかのように距離感が一気に遠のく。

 そして顔は険悪になる。


 「なんだ、見た目いいと思ったのに、不遇職とか流石にないわ」


 そう言い残し去っていく二人組。

 周りも冷ややかな目見てくる。

 なんかパーティー誘うとかの雰囲気じゃない。

 周りは俺が【黒魔法】使いということがわかってしまって話しかけてくる気配すらない。

 が、一つだけすごい熱い視線を感じる。


 「おい、貴様! 我が集いへの参加を認めてやろう」


 なんか後ろから話しかけられたけど、言葉遣いが変だ。

 振り返ると金髪の眼帯を付けた青眼のイケメンがいた。

 ただ、これわかるんだ。関わったら面倒なタイプの人だ!


 「いや、俺は別に……」

 「そのウインドウを出しているのに人が集まってないではないか。貴様は、同志といっても過言ではない」

 「違います。人違いです」


 これ俺が同志、もしかして厨二病仲間だと思われてるのか?

 それは違う。俺はなりたくてなったわけじゃない!


 「てか、我が集いってことは仲間いるんだろ? 俺なんて必要ないだろ」

 「仲間? いるわけないだろ? 我はここで誘われ待ちしてたが、なんか誰も近づいてこん」

 「どんな待ち方してたんだよ」


 顔はイケメンだ。正直、眼帯していてもなんかロールプレイなのかなと思うくらいでゲームの中ではさほど変ではない。

 それでも近寄ってこないんだ。


 「足組んで、目がうずく! と言ってただけだが」

 「──うずく前に、周りの視線で目をつむるわ!」

 「貴様も感じているだろう。同じ目を持つものよ」

 「恥ずかしいことだけは感じてるよ」


 やばい、話が通じない。

 なら、自分から断りを入れるために【黒魔法】使いであることを打ち明ければ離れてくれるんじゃないか?


 「俺は【黒魔法】がメインアビリティの不遇職だぞ」

 「それがどうした? 別にゲームなんだし好きなものやればいいではないか?」


 なんかまとものことも急に言われると狂うな。

 でも、悪い奴じゃないことだけわかる。


 「だから我も好きなようにやろう。一緒に行こうではないか吸血鬼!」

 「ま、他にあてもないし。あと、俺は固定のパーティーが持ちたいわけじゃなくて、たまに一緒に遊びたい程度だけどそれでもいいか?」

 「かまわん。我もどちらかというとソロ気質だ」


 俺らはフレンド交換する。

 彼はミッドナイトという名前らしいが、長いのでナイトと呼ぶことにした。


 森への移動中、俺の攻撃力0の事情を話した。

 それをうらやましいといってくる彼は語る途中に容易に想像ついた。


 森に到着する。


 「適当にモンスター見つけて狩るか。俺が後衛で、ナイトが前衛な」

 「攻撃は我に任せろ! アサヒはサポート」


 サポートといってもできること少ないけどね。


 二人で森を歩き回り、スライムを見つける。

 いつもこいつだな。


 「アサヒやるぞ!」

 「了解! ──≪ストップ≫」


 先制でストップを入れる、こうすれば初撃で【戦技】を入れることができる。

 すると、ナイトは眼帯を外して不敵な笑みを浮かべる。


 「われの真の力をくらえ! ──≪パワースラッシュ≫!!」


 スライムの前で【戦技】を放つ。HPは一瞬で亡くなる。

 一撃。意外と強いのか?


 「この調子でどんどん行くぞ! まだ力が有り余ってしょうがない」


 いちいちセリフは格好つけるな。

 だが、もう慣れつつある俺は変なのか。


 「今の感じで俺が動きを止めるから、【戦技】でサクッと片付けていくか」


 俺の意見に賛成するナイトだが、彼がこちらに顔を見せると気になるところがあった。

 眼帯の下の目が、赤色だった。

 細かいところまで作りこまれている。

 損ことを思ってると、彼は「目がうずく」と言っている。


 すると茂みの中から2匹のフォレストウルフが飛び出してくる。

 普通なら1体ずつ対応するのがいいんだろうけど、俺に1体は無理。


 「ナイトどうする? 2匹はきついんじゃないか?」

 「いや、やりあう! 1匹止めてくれ。そっちに集中攻撃だ!」

 「了解! 任せたぞ。──≪ストップ≫」


 だが、そのスキルは発動することはなかった。


 「おい! これどーなってる? MPがなくなってる!」


 俺はさっきの戦闘でMPを使ったが、それでも少しだ。

 そんなに俺のMPは少なくないはずだが。


 「しょうがない! 俺が一人でやる! アサヒは隠れてろ!」


 ナイトの指示に従い、俺は木の裏に隠れる。

 【隠密】のおかげでばれない。

 その間、ナイトが戦っている音が聞こえるが、俺が介入したところで足手まといでしかない。


 隠れているときに気になることもあった。

 ナイトが一度も【戦技】を使わないのだ。

 だが、それでもフォレストウルフ2匹に勝っているのだから、使わないでもいいと踏んだのか?


 「お疲れナイト。悪いな」

 「別にいい。このくらい一人でも余裕だ」


 余裕の表情で丁寧に眼帯をつけなおしている。

 そして、俺は気になっていることを尋ねる。


 「なんで俺のMP無くなってたんだ?」

 「それは、ほら?」


 ナイトは自身の眼帯を指さす。

 もしかして……


 「それ、【魔眼】か?」

 「おお! やはり貴様にはわかるか!!」

 「誰でもわかるわ! MP吸われて目の色変えてたらな! なんでそんな不遇アビリティ使ってんだ?」


 まあ、どうせ格好いいくらいの動機だとは思うが……

 別に俺も不遇なの使ってるから、別に否定はしないけど。


 「我は基本ソロだからな。隙のできやすい【戦技】はあまり使わない。それにMPを使わない前衛職ならステータスダウンと弱点発見の合わさる一撃は重いからな」


 なんともすごくまじめな回答が返ってくる。

 確かに最初のスライムとの戦闘は余裕をもって一撃で仕留めていたように見えた。

 利点もしっかりあるんだ。

 さっきの戦闘で【戦技】を使わなかった理由は自分のMPも切れてたし、ソロだったからか。


 「あと、我はリアルでも魔眼をもってるからな」

 「──あるわけねーだろ!! 俺とパーティー組むときは外していてくれ、流石に俺のレベル上げもできないし」

 「そうだな。弱者に合わせるのも強者の定め」


 なんかひどいこと言われてる気がするが、その通りだから言い返せません。

 ただ、意外と物分かりのいい人だな。


 「よし! もう少し狩りに行くぞアサヒ!」

 「お、おう。お前がリーダーなんだな」

 「我以外にだれがいる!」


 なんか見た目だけど悪の組織みたいなパーティーだが、それもそれで悪くないかもな。

 俺たちはそのあとも何度もモンスターとの戦闘を繰り返していった。

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Life Blood Online~攻撃力0で不遇職ののんびり攻略記~ やなぎ かいき @kaiki1414

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