🖋 R.B.ブッコローVS ワタル
「えっと、ちょっと待ってくださいね。もう少しでガラスペンになります!」
あゆみ怒れっちゃう。とっくにガラスペンになってると思ったらまだ
「ちょっと、何やってるのよ。早くガラスペンに変身しなさい」
「……嫌でやんす。わし、岡﨑さんタイプでやんす。ちょっと耳を貸すでやんす」
ワタルから耳を近づけるように言われるあゆみ。ワタルは妖精モードに切り替えてあゆみだけに聞こえる声で話し始めた。話を聞いて動揺するあゆみ。
「……そんなことお願いできない。あゆみが変態って思われちゃう」
「あゆみちゃん、大きな独り言ですね。どうしました?」
「な、なんでもないです……えっと、お二人にお願いがあるんですけど、アタッシュケースの中を見ないで触って欲しいのです」
「それはまた初めてのパターンですね……ザキさんどうしますか?」
ブッコローはダンディーである。自分の意見を押し付けるのではなく岡﨑さんにお伺いを立てた。岡﨑さんも寛大にいいですよと答えて、アタッシュケースに手を差し入れた。少女のようにきゃっきゃっしながら。
「わわっ、気持ちいい。なんか人差し指がハムハムされてます。もしかして癒しグッズですか?……あらやだ、手の甲がぬちゃってしました。もしかして先端は滑り止めかしら? お札数える時いい感じの粘り具合ですね……香りもいいです」
あゆみ、再びびっくりこきまろ。岡﨑さんはワタルにハムハムされた指と頭部を擦り付けられた手の甲の匂いを嗅いでいい香りだなんて言っている。
「ザキさん、マジですか? 僕も手を入れてみますね……なんか怖いな」
隣で見守っていた中の
「痛っ! ちょ、ちょ、ちょっと! ハムハムじゃなくて噛んでるじゃん。おい何だよ、これ、マジか。すっげーぬちゃってしたぞ……臭っ。ヤバい、ヤバい」
ブッコローは引き抜いた手を嗅いで卒倒しそう。加齢臭をいい香りって言った岡﨑さん、変わってる。あゆみ、岡﨑さんの天然ボケキャラに嫉妬しそう。
「ブッコローさん、臭いでしょ? あゆみも経験あります……あっ!」
ブッコローの指を見ると噛まれた痕があって痛々しい。あゆみ、早く治るおまじないしなきゃ。ブッコローを怒らせて負けちゃったら悔しいもの。
「ブッコローさん、痛いの痛いの飛んでけのおまじないです。あゆみの真似をして下さい」
「はっ? 何だか分からないけど……臭いのも取れる?」
「それは無理かな……じゃいきますよ───萌え萌えキュンキュンニャアニャア、はい!」
「萌え萌え、はっ? 腰も捻るの? 恥ずいっすよ!」
ブッコローは恥ずかしいを繰り返しながら見よう見まねで腰をくねらす。
「わぁー楽しそうです。私もやります。萌え萌えキュンキュンニャアニャア!」
岡﨑さんもあとに続く。萌え萌えキュンキュンにゃーにゃー、キキちゃん。
それに満足したのかワタルが恍惚とした表情でガラスペンに擬態化した。一時はどうなることかって思ったよ。ほっとするあゆみ。やっとお披露目よ!
「さあ、お待たせしました。あゆみがご紹介するのは、ここの
あゆみの合図で電気が消えると、見事に光った。あゆみ、安堵。
「何これ、すっげぇー。すごいよ、これ」
「……キャっ。私初めて見ました。こんなガラスペン」
羽根をばたつかせて騒ぐブッコローと興奮している岡﨑さん。
「どうしてまた生に戻ってるの? ってどこ光らせてるのよ?」
「わしの頭部だけ蓄光でやんす。しかも五本セット。マサル、ミツル、シゲル、サトルもいるでやんす」
みんな応援に来てくれたのね。シゲルさんがあゆみに向かって親指を立てる。もうあゆみ、泣けてきちゃう。感動だよ。嬉しいよう。
「小さいオジさんって本当にいるんだ。キモかわいいなぁー」
「五本セット素晴らしいです。みんなジャージの色が違うのね」
ブッコローと岡﨑さんが思いの外喜んでくれている。あゆみ満足だよ。
「で、幾らなんですか?」
ブッコローが質問するとチャットのコメント欄が動いた。
有隣堂ライブ配信。チャット コメント欄。
スモールG商事カケル部長「一本十万円です!」
「一本十万円は高くないっすか?」と驚くブッコロー。
カケル部長「持つ人に夢を与え、願いを叶えます!」
カケル部長「5000円。インクも買ってね」
カケル部長「5000円。馬券購入費にどうぞ」
カケル部長「30000円。スモールG 商事をよろしくね」
カケル部長「投稿のたびに五万円の投げ銭しちゃうよ!」
「投げ銭きたー! はい、満場一致であゆみちゃんの勝利!」
部長の
ワタルは相変わらずだけど、どこか憎めない小さいオジさんだ。
ライブ配信終了後、岡﨑さん、ブッコロー、ワタルとあゆみの四人で撮った写真がスモールG商事の食堂にデカデカと貼られている。
みんな素敵な笑顔だ。
完
【変な文房具対決】ブッコローVS ワタル 星都ハナス @hanasu-hosito
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