🖋 岡﨑弘子さんVSあゆみちゃん
「あゆみちゃん、いい質問だね。これね、知の象徴の本だよ」
「そうなんですね。あゆみ、知的な人が好き。それにR.B.ブッコローさんって正直者で好奇心旺盛って聞きました。だからブッコローさんに気に入ってもらえる商品持ってきました」
あゆみちゃんは
「クウッかわいい。はい、あゆみちゃんの勝利」
鼻の下を伸ばすブッコロー。それを見逃さなかった伝説の有隣堂バイヤー岡﨑さん。十万円高額メガネの端を人差し指で上げちょっと待ったをかける。
「……私が先行なので……じゃーん! ブッコロー蓄光ガラスペンです。ここがですね、ブッコローの形になってるの。かわいいでしょ」
「おお、すっげぇ。嬉しいけど恥ずい……でも光るんですね」
「はい、これも蓄光文具ですから。電気消しまーす!」
ブッコローガラスペンを自慢げに見せた岡﨑さんの合図で電気が消された。
「え? いやいやいや、おーいガラスペン無くなっちゃた。僕の目が悪くなってます? 皆さん見えました? あゆみちゃん、暗闇で光ってるの見ました?」
慌てるブッコロー。あゆみちゃんは首を横に振ってから視聴者さんに確認したらどうですかと提案した。ブッコローは電気をつけ正面を向いて呼びかける。
「視聴者のみなさん、どうでしたか? コメントで教えてください」
ライブ配信 チャット。コメント欄。
アメロッシュ 「真っ暗闇のまま。爆笑!」
カリフラワー食べました 「蓄光ではないですね!」
月々菜 朝 「ウケるんですけど!」
大鷹 うみ 「ブッコロー慌ててるの面白いです」
小創 淳 「光りを蓄えてる時間が短いのでは?」
半チャーハン 「もう一度トライしてみたら?」
金鏡怜尚「不思議です。けど笑えます」
左野 真眼 「写真を見て一言。ホラーですか?」
小百合ママ 「丙。今北産業。ミミズクさん? 花m」
お米ゾウリムシ「おお! これはギャグですか!」
祝文堂 「蛍光かもしれませんね!」
翻訳家柊木「たぶん、蛍光ですね。電気をつけましょう」
青城あき「見えません! 電気つけて確認したいです!」
⭐︎涼星⭐︎ 「真っ暗闇です。けど少し光ってますね。蛍光?」
一気に流れるコメント欄を見てブッコローもそれが蓄光でないことを認めた。隣で一瞬青ざめる岡崎さん。
「あれ? ちょっと待ってくださいね。蓄光じゃなかったかな、それ。ブラックライトで光るんだったかな」
「───びっくりこきまろ! ザキさん勘弁してくださいよ……はい、あゆみちゃん優勝でーす。スモールG商事さんおめでとうございます」
何度も首を傾げて悔しそうな表情の岡﨑さん。心の中で手を叩くあゆみちゃん。プレゼンしなくても勝っちゃう感じ? やった。あゆみ嬉しい。
「けど、せっかくなんで宣伝していってくださいね。スモールG 商事さんの一推し文房具、しかも変な文房具は何でしょう?」
机の上のアタッシュケースの中身にブッコローは興味津々の様子で羽角を動かす。視聴者さんも期待しているのか、コメントが止まらない。そのほとんどがスモールG商事の同僚からだった。
「わぁ、ミナ先輩、仁美先輩、シンヤさん、課長、あゆみ感激です。コメントありがとうございます」
画面に手を振るあゆみちゃん。完全にゆうせかチャンネルを私物化している。
「ボヨッーキとトンゾラーも観てる? パパ、澄子さん、ジュンくん、お姉ちゃん頑張ってるからね」
「あゆみさん、早く変な文房具の紹介をお願いします。私、七時出社だから残業なんです。もし私の目に適ったら有隣堂で販売も考えてます」
さっきまで落ち込みモードだったバイヤー岡﨑さんも目を輝かせながら、アタッシュケースを見つめている。あゆみちゃんはドヤ顔でケースの蓋を開けて……閉めた。
───キャー。あゆみちゃんの悲鳴があがる。
「ごっ、ごめんなさい。まだ
「え? 生ってどういうこと? 文房具ですよ。
「ち、違います。少し待って下さいね」
あゆみもびっくりこきまろ。アタッシュケースに入っているワタル。ガラスペンの擬態化は足の部分だけで、バーコード頭もメタボ腹も下半身も生のままだった。
ワタル許すまじ。あゆみ大ピンチ。
つづく。
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