★2話 君がいない夜

 夜になっても彼は起きなかった。毎日彼が寝てから簡易的な寝床を作り寝させてあげている。いつ起きても良いように私はそばにいるつもりだ。本当は起きて欲しい。起きて昼に探した場所を一緒に喋りながら歩きたい。

 幸せそうな顔をしながら彼は寝ている。こういった一日中寝ていたということは過去何回かあった。彼に関してはよくわからないが、なんとなくこれじゃないかと思うことがある。

 この世界に伝わる伝承なのだけど、この世界の裏にもう一つ世界があるらしくどちらか片方の世界にしか一人一人存在するらしい。私がこの世界に生まれたのは偶然でもしかしたらこの世界の裏の世界に生まれていたかもしれないということ。しかし、例外的にどちらの世界にも存在した救世主と呼ばれた人がいたそうだ。この救世主が何をしたのかということは詳しく残っていないしどんな人物だったのかというのも性別すらわからない。

 きっと彼も救世主のような人なのかもしれない。けど同時にこんなに可愛らしく私と同じくらいの少年がそんな大層な称号を背負っているのだとしたら、背負わされているのだとしたら私は彼に寄り添っていたい。そう思う。それを彼が望んでいなくても。いや。彼は望んでいなくてもきっと寄り添っていることを拒みはしないだろう。そんな優しい人だってことを私は知っている。

 こんなことただひたすらに考えていても、長々と考えていても時間の進みは速くならない。彼と話している時はあんなにも時間の進みが速いのに。私はきっと彼に依存してしまっているのかもしれない。彼は毎回何も覚えていない、毎回初めてという顔を見せてくれる。そんな彼と過ごす時間や彼のために準備する時間はあんなにも速く進むのに。彼のいない夜はどうにも進みが遅い。この気持ちを説明する言葉を私は知らなかった。

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夢と現実の住人 ずんどこたろう @zundo

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