第15話 【白魔術師】の本当の願い

次の日から、蜜羽は、【黒魔術師】の気配を一切消しながら、学校中を歩き回った。勿論、【白魔術師】を探し出す為だ。


昨日、あの【白魔術師】と対峙した時、微かに感じられたオーラを、蜜羽は感じ取ろうとしていた。そして、とある生徒が、蜜羽の横を横切った時、蜜羽は、驚きを隠せなかった。


(男!?)


そう、【白魔術師】のオーラの正体は、男子生徒だったのだ。


(何てこと!?このわたしが、女子か男子かすら解らなかったなんて…!)


しかし、向こうは気付いてはいないらしい。本人の言っていたように、魔力は強くないのだろう。


しかし、ならば、と疑問が湧く。なぜ、この【白魔術師】よりも魔力も精神力も魔術も格上のはずの蜜羽の呪文で、雨が止まなかったのか…、と言うことだ。


数秒、考えた後、蜜羽は、ハッとした。


(まさか、あの男、犠牲ザビーハを使っているのでは!?)


犠牲ザビーハ”とは、ある特定の人物を、呪うことで、自分の魔力を強くし、実力以上の力を発揮すると言う術だ。


(何のために、犠牲ザビーハまで使って、雨を…)


しかし、先ほどすれ違った時、その男子(【白魔術師】)のオーラは、とても穏やかで、誰かに、犠牲ザビーハを使っているとは、到底、蜜羽には思えなかった。


そして、雨が降り始めて、2週間が経った。


蜜羽は、【白魔術師】を特定してから、ありとあらゆる方法(勿論、魔術も)で、その男子生徒のことを調べた。


どうやら、その男子生徒には、恋人がいて、その恋人がXPにかかっているということを突き止めた。



「つまり、こういうことか?蜜羽。その男子は、恋人が太陽に当たらぬよう、雨を降らせている…と」


「はい。調べたところによりますと、その恋人の余命はあと1か月。恐らくは、窓の紫外線カバーを外し、外の景色を見せてあげたかったのだと思われます」



「じゃあ、犠牲ザビーハは、どの女に?」


「…イエ、恐らく、自分自身にかけたのではないかと…」


「何!?そんなことをすれば、魔力は落ちて行く一方だぞ!!」


「はい…。ですから、雨を降らし続けるのが、1か月で精一杯なのだと思われます。それほど、その恋人をすきなのでいらっしゃるのでしょう」


「…そうか…単なる敵だと思っていたが、話はそう簡単に進まんかも知れんな…」


「はい。わたしは、どちらも、、そう、思っております」


「む。蜜羽。お前は、【黒魔術師】の才はかなりのものだが、心は【白魔術師】だな…」


少し、呆れたように、イーグルズは言った。




*****




「なんだ。【黒魔術師】。わたしに用とは…まだ、2週間しかたっていないぞ?もう白旗を上げに来たのか?」


「…いいえ。貴方…広川睦さん、貴方に提案があって、ここに来てもらいました」


「な!何故、俺のことを…!!」


「わたしを舐めていただいては困ります。貴方程度の【白魔術師】、手玉に取るくらい、訳はありません」


「くっ…!」


「そう、怒らないでください。今日は、貴方にとっても、瑞樹香耶みずきかやさんにとっても、良い話をご用意いたして、お待ちしておりました」


「な!香耶のことまでどうやって!!??」


「わたしは、優秀な【黒魔術師】です。貴方とは、レベルが違います。どうですか?わたしがご用意した提案、受けて見られる気はございませんか?」


「…一体…何を…」


少し、睦が、提案を呑むようなそぶりをしたのが解った。


「大丈夫です。わたしを、信じてください」


そう、蜜羽は、自信たっぷりに言い放った。

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