第14話 【白魔術師】登場

「今日も雨ですね…」


「蜜羽、もう今日で1週間だよ?あ・め!!」


(忘れていると思うが、嘉虹弥だ)


「それを、今わたし呟いたのですが、それに付け加える必要が何かありましたか?」


「別に。そう言う訳じゃないけど、愚痴りたいじゃん!」


「そうですね。愚痴をこぼすことは、精神にとってもよろしいと思われます」


「でしょー!!じゃあ、もっと聴いてくれるー!?」


「それは遠慮させてたいただきます。聞いている方も、あまり多くの愚痴を聞かされるのは、ストレスがたまるものなのですので…」


「えー!聴いてよぉ!!」


「雨…に関することならば…多少、聞いておきたいかも知れません」


「…へ?なんで?」


「少々…気になることがありまして…」


「気に…なること…?」


「はい。嘉虹弥は、深く知らなくて良いことですが」


「んー…なんか、してる人がいるとか、いないとか?って噂が流れてるよ?」


…ですか…」


蜜羽は、少しだけ、険しい顔になる。



―1週間前―


「【黒魔術師】様。

わたしは【白魔術師】です。しかし、貴女の様に、この力を、良いことに使う気はさらさらありません。もはや、貴女が【白魔術師】で、わたしが【黒魔術師】なのかも知れませんね。ここで、闘いを申し込もうと思います。わたしが、1か月、雨を降らし続けることが出来たら、貴女には、このお仕事を辞めていただきます。なぜなら、わたしは、人が幸せになることが許せないのです。貴女が【黒魔術師】として、このままこの学校の生徒たちの悩みや、苦しみを癒してゆきたい、と言うのなら、わたしに勝ってみてください。では、1か月、お互い、頑張りましょう」




「…イーグルズ、この【白魔術師】とやらは、一体何を考えているのでしょう?本当ならば、白魔術とは、好ましい目的に使われる魔術や魔法のこと。しかし、この【白魔術師】は、どうやら、人を幸せにする気はないようです…」


「だな。こいつがもしも、蜜羽と同じだけの魔力を持っていたとしたら、大変なことだぞ」


「ですね。しかし、雨にはどんな意味があるのでしょう?…さすが…とは言いたくはありませんが、文字から、目的を読み取ることが出来ませんでしたから…」


「だが、まぁ、雨をやませるせることくらい、蜜羽にはどうってことない仕事だろう。今日早速、屋上で呪文を唱え、雨を止ませるのだな」


「はい。そうですね。イーグルズ」




太陽光ルーモスリレム!!」


土砂降りの雨の中、蜜羽とイーグルズは、放課後、屋上に出て、早速魔術を解くことにした。そして、呪文を唱えた。


「!!??」


雨が、止まない。


太陽光ルーモスリレム!!」


蜜羽が、もう一度、呪文を唱える。しかし、その雨は、激しさを増した。


「くっ!これは…なんと禍々しい…。これが本当に【白魔術師】のしたことでしょうか?」


雨に打たれ、必死で暴風雨に耐える蜜羽とイーグルズ。そこへ…。


「貴女が【黒魔術師】ですか…」


「!…では、貴女が、【白魔術師】…ということですね?」


「その通りです。初めまして」


「何故、【白魔術師】ともあろうものが、人に無益な術を…!!」


「それは簡単よ。わたしの力が、この家系で一番劣っているからです。見た所、貴女はまるで、【黒魔術師】の理想を詰め込んだような、魔力と、精神力、呪術を持ち合わせているいらっしゃるご様子。それなのに、何故、良いことをしようなどと…。それこそ、解りかねますが…」


「…高祖母が、とても、お優しい方で、ずっと人間を見守ってきていらっしゃいました。その意志を、わたしは継いでいるだけです」


「ほぉ…。まぁ、良いでしょう。勝負、受けていただけますね?」


「理由はよく解りませんが、貴女からは、手紙からは読み取れなかった邪悪さがプンプンしてきます。あなを、懲らしめねばならぬかも知れませんね…。この勝負、受けて立ちます!!」


「ですが、忘れないでいて欲しいものです。先ほどの、呪文が、効かなかったことを…。貴女に、出来ますか?この雨を、止めさせることが…。ふふふふふ…。では…」


そう言うと、【白魔術師】は、屋上から、姿を消した。


「…どう、思いますか?イーグルズ…」


「手強い…としか…」


「はい。そうでそうですね…。身辺を…あらってみましょうか…」


ずぶぬれになりながら、頭をフル回転させる、蜜羽だった。

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