第13話 最高の応援

―次の日の朝―


朝練に、現れた、礫。早速、昨日【黒魔術師】から預かった手紙を開いた。そこには、呪文が一つ、書かれていた。


礫は、大きく息を吸って、大きく吐くと、その呪文を唱えた。


身体自由リベラコーパス!!」


すると、体が、熱くなってきてるのが解った。


(よし!!絶対、優勝する!!)


それから、礫は、同じ部員も驚くほど練習し、筋トレもそれまでの3倍に増やした。体力をつける為に、毎朝、3時に起きて、2時間走った。


ただただ、蜜羽に言われた通り、血も滲むような努力を重ねた。そして、感じていた。自分の体が、今までとは比べ物にならないほど、パワーアップしていることを。手など抜けない。少しでも気を抜けば、一気にこの努力が水の泡だ。毎日、本当に、柚子に胸を張ってすきだと言いたい、それだけで、頑張れた。


「ねぇ、礫くん、無理、し過ぎてない?」


余りの頑張りすぎを、柚子が心配しだした。


「大丈夫。俺、今度の大会、かけてるから」


「………」


嬉しいけど、“2度あることは3度ある”という言葉が、柚子の頭の中を回る。





*****





―大会当日―


「あー!緊張する~!!!」


柚子は、礫よりも緊張していた。素直になればよかった…。今更、そう思う。どうして、3位以内に入ったら、なんて、約束をしてしまったんだろう?そんなことを言わなければ、きっと、3年間、デートもいっぱいできたし、勉強だって、部活を言い訳に、全然付き合ってはくれなかった。


今日は、どうしても、3位以内に、入って欲しい。…イヤ、もう贅沢は言わない。


どうか、失格に、ならないで―――…。






そして、とうとう、礫の番が来た。


「1回目!ピッ!」



タタタタタタッ!!トンッ!ズシャーッ!!


「審議!!」


(え!?)


柚子の、心は、粉々になりそうだ。


「線を踏んでいるため、A高校清水君、1回目失格」


(…)


グラウンドで、膝に手を当て、うなだれている、礫がいる。


「大丈夫だよ!!礫くん!!もう一回ある!!」


柚子は、大声で叫んだ。


その声に、顔を上げ、落ち込んでるかと思いきや、思いっきりの笑顔で、グー!!と、親指を立てた。


コクン!と柚子が頷くと、ピースをして、控えに戻っていた。




「どうなるんだろうな、その礫とやら…」


「さぁ…、こればかりは、わたしにもあずかり知らぬこと…。彼の言う通り、見守るだけです…」


蜜羽も会場に来ていたのだ。依頼者、だから、放っては置けない。自分が授けたのが、必ずしも、依頼主の願いを叶えるとは限らない、この依頼。蜜羽にとっても、初の案件だ。




「2回目!ピッ!」


スッと息を吐くと、礫は走り出した。


(お願い!!)


柚子が祈る。


バッ!!!


と、高く高く、礫は飛んだ。



「8めーとる7!!」



「「「「ワ―――――――――――!!!!!」」」



高校生記録に迫る、凄いジャンプだった。




高々と、優勝カップを掲げる礫。



柚子は泣いて、今すぐにでも抱き付きたいくらいだった。




「……蜜羽、お前、何かしたのか?」


「イーグルズ、私は、そんなに優しい【黒魔術師】ではありませんよ」


そう言って、蜜羽は笑った。

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