第12話 約束。ズルなしで守りたいんだ

「柚子さんは、陸上部のマネージャーか何かをされていらっしゃるのですか?」


「あ、はい」


「では、今日の放課後、屋上へいらしてください。お二人で」


「…2人…で…ですか…」



「蜜羽、一体、なにを考えている?どんな方法があると言うのだ?黒魔術が使えないのだぞ?使ったら、ズルなんだぞ?どうやって、見守る以外の方法をとるんだ」


「良いですから。イーグルズ。いい考えが、あるのです」




―放課後、屋上―


「わぁ!本当にいたんだぁ!【黒魔術師】様!!」


蜜羽が屋上に現れると、礫はまだしも、柚子が大袈裟に驚いた。


「私、工藤柚子って言います!!礫くんの幼馴染です!!」


「ご丁寧なご紹介ありがとうございます。わたしはいわゆる、この学校の【黒魔術師】です」


「知ってます―!!そのウサギのお面と、ピンクのマント、噂通り――!!可愛い――!!」


「柚子、少し黙れ」


「なによー、いいじゃない!せっかく【黒魔術師】様に逢えたんだから、少しくらいはしゃいでもー!!」


「少しじゃない。だいぶうるさい。【黒魔術師】も多分引いてる…」


「は!そうですか!?すすすすみません!!」


柚子は、いきなり慌てだした。


「柚子さん、大丈夫です。わたしは今までたくさんの願いを叶えたい、と言うお手紙をいただき、そのどれもに、わたしが出来る、最善の策を投じて来たつもりです」


「はい」


「それで、礫さんには、もう許しは得ているので、お話を進めますが、貴女と礫さんは、をなさっている…と、お聞きしました」


「あ、はい。インターハイのことですよね?」


「そうです。しかし、礫さんは、ズルはしたくない。あくまでも、わたしに、見守って欲しい…と言う依頼のお手紙でした」


「それはそうです。【黒魔術師】様に頼み込んで、呪文で約束守ってもらっても、なんか、騙されてるって言うか、誤魔化されてるって言うか…。純粋じゃない!!」


「そこで、です。一つ、提案があります。運ではなく、実力で、呪文を使うのです」


「「へ?」」


二人は、よく解らない…と言った顔をした。イーグルズも、同じ顔をしている。


「この呪文は、唱えると、努力によって、実力がぐんぐん伸びて行くものです。しかし、努力しなければ、1年生の時の半分にも劣る力に半減します。呪文で実力をつけ、最後、失格になるかならないのかは、本当に、見守るだけです。これでどうですか?」


「「………」」


二人は、一瞬、顔を見合わせたが、一瞬で、意見は一致したらしかった。


「解りました。俺に、その呪文、教えてください」


「かなりの努力をしないと、実力は、墜ちて行くばかりですよ?覚悟は出来ていますか?」


「はい。大丈夫です」


柚子は、少し、不安そうにしている。


「では、この紙に呪文を書いておきます。明日、練習を開始する、一番最初に唱えてください。そこから、インターハイまで、魔力は続きます。努力次第では、優勝もあり得ることです。頑張ってください」


「はい!!」


そう言うと、礫は、柚子を置いて、屋上から出て行った。


「あ…の…」


「心配…ですか?」


「あ…はい…まぁ」


「つい、言ってしまったのですね?3位に入ったら、と。本当は、今すぐにでも付き合いたかったのに…」


「…【黒魔術師】様はなんでもお見通しなんですね…。私が、素直だったら…、こんなに礫くんが意地張ることもなかったのに…って、私もですね…へへ」


ちょっと悲しそうに、柚子は言った。



「わたしに出来るのは、努力によって強くなる呪文を与えるだけです。最後、失格にならないためには、貴女の、貴女でなければ、礫さんの背中を押すことは出来ません。ちゃんと、応援、してあげてくださいね」



「はい!!ありがとうございます!!【黒魔術師】様!!」



そう言うと、柚子も、屋上を出て行った。

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