第11話 見守って欲しいって、難しくない?

「これは…」


「どうした?蜜羽」


「イーグルズ、わたしは、この依頼をどうすべきか、解らないのです」


「お前らしくもないな。一体、どんな依頼だ?」



『【黒魔術師】様。

僕の名前は、清水礫しみずれきです。陸上部に所属しています。今年、7月に、最後のインターハイがあります。1年生の時も、2年生の時も、インターハイには、出ることが出来たのですが、必ず、走り幅跳びで線を踏んでしまい、失格になってしまいます。今年こそ、踏まず、飛び切りたいので、見守っていてください」



「「…………」」


「どう…思いますか?イーグルズ」


「見守る…のか…」


「はい…。見守るのです…」


「じゃあ、蜜羽は、何もしなくて良いのか?」


「…ということに…なるのでしょうか?」


「「……………」」


「兎に角、逢って、お話を聞いてみましょう」


「そうだな」




*****




「あ、ども。変な手紙出してしまってすみません」


そこに現れたのは、そんな、毎年転んでしまいそうなドジな少年には見えない、多分、モテるであろう、姿かたちの男子が屋上の手すりに寄りかかっていた。


「貴方が、礫さんですか?」


「はい」


「毎年、失格になっている…と言う…」


「はい」


淡々と答えていく礫に、なんだか、妙な感覚がする。


「…悩んで、おられるのですよね?」


「はい」


「ですが、礫さんのお手紙には、『見守っていてくれ』と書いておられました。これはどういった…」


「そのまんまです」


「…と、いいますと?」


「自分の力で、頑張りたいんで、誰かに、見守ってて欲しいな、って」


「はぁ…」


しかし、蜜羽を侮ってはいけない。蜜羽は、その、手紙の文字から、あることをすでに推察していた。


「礫さん、あなた、おすきな方がいらっしゃるんですね?」


「へ?」


これでも、今までで一番、動揺している。イーグルズにも解った。


「これは、貴方のお手紙から感じ取ったものですが、をしておられるのでは?」


「あ…へ?」


まただ。また、動揺している。


「インターハイで、良い成績を残せれば、どなたかに告白する…と心に決めておられるか…もしくは、付き合ってあげる…とでも言われているか…どちらかでしょう」


「…っか――――――!!マジか―――――!!【黒魔術師】ってマジ凄いんすね!」


「やはり、そうなのですね?」


「はい。幼馴染の、工藤柚子くどうゆずって奴と…その…まぁ、【黒魔術師】が言った通り、大会で3位以内に入ったら、付き合うってことになってるんですけど、1,2年、ダメで、今年しかなくて…。でも、【黒魔術師】の力借りるって、どうかなぁ…って思って、で、『見守って欲しい』って書いたんです」


「そうでしたか…。そう言うことなら、ピッタリの呪文がありますよ」


「え?だから、呪文使ったら、ズルいって言うか…」


「いいえ。ズルくはありません。きっと、柚子さんも許して下さるのではないか、と思われます」


「マジっすか!?」





⦅こいつ…今までで一番感情出てる…恋する男だなぁ…⦆




イーグルズは、ほくそ笑んだ。

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